2023年11月25日、26日に「燃ゆる感動かごしま国体」の文化プログラムであるeスポーツイベント「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2023 KAGOSHIMA」が開催されました。
かごしま国体は、2020年に開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により2023年へ延期。全国都道府県対抗eスポーツ選手権はオンラインで開催できましたが、今回、国体が鹿児島で実施されることを受け、再度、鹿児島で全国都道府県対抗eスポーツ選手権を行うことになりました。
今回は『IdentityV 第五人格(第五人格)』『eFootball』『グランツーリスモ7』『Shadowverse』『パズドラ』『ぷよぷよeスポーツ』の6タイトル。「2020 KAGOSHIMA」と比較すると『パワフルプロ野球』がなくなり、『Shadowverse』と『第五人格』が増えています。ちなみに『第五人格』は今回が初参加のタイトルです。
『第五人格』は12歳以上の一般の部のみで、唯一のチーム戦。『eFootball』は年齢制限なしのオープンの部、『グランツーリスモ7』は6歳以上18歳未満のU-18の部、18歳以上の一般の部、『Shadowverse』は中学生~大学生の学生の部、『パズドラ』は小学生以上の一般の部、『ぷよぷよeスポーツ』は小学生対象の小学生の部、12歳以上の一般の部で行われました。
それぞれのタイトル、部門で順位ポイントが各都道府県に付与され、総合ポイントがもっとも高い都道府県が優勝です。「2020 KAGOSHIMA」では大阪府が優勝を飾りましたが、「2023 KAGOSHIMA」では東京都がぶっちぎりのポイントを稼ぎ、2連覇を果たしました。
まず、最初に行われたのは『グランツーリスモ7』のU-18の部です。U-18の部は使用車種が『グランツーリスモ』オリジナル車種であるグランツーリスモ レッドブル X2014 Juniorのワンメイク。コースは『グランツーリスモ』オリジナルコースの「トライアルマウンテン」10周。使用タイヤはレーシング・ソフトでタイヤ消耗率は5倍、燃料消費倍率は1倍です。
レースは、4番手スタートの森山綜太選手が終盤まで順位をキープし、9周目にトップに立つとそのままゴール。これまで決勝レースに出場がなかった愛媛県代表が初挑戦にて優勝を飾りました。
一般の部は、使用車種がGr.3。ニュルブルクリンク 24hを3周します。使用タイヤはレーシング・ハード/ソフトでタイヤ消耗倍率は4倍、燃料消費倍率は1倍。タイヤはハードとソフトの両方を使わなくてはならないので、ピットインが必要です。
基本的にソフトタイヤ2周、ハードタイヤ1周での展開となりますが、どちらを先に使用するかのタイヤマネジメント戦略が重要。予選1~3位、11位の選手は最初にソフトタイヤを選び、1~3位は好順位から後続に差を付ける作戦、11位の鍋谷選手は序盤で一気に順位を上げようとの作戦です。
思惑通り、1周目が終了した時点で鍋谷選手は4位まで順位を上げ、上位3選手は4位に約12秒の大差を付けることに成功します。最終ラップではピットインにより上位4選手とそれ以下の選手のタイムが大幅に縮まりますが、最後はポールポジションスタートの鈴木聖弥選手がそのまま逃げ切り、優勝を果たしました。
次に開催されたのは『Shadowverse』です。『Shadowverse』は、中学校、高校、大学または準ずる学校に在籍中の人が対象の「学生の部」のみ。大会の配信前に準決勝まで行われており、北海道代表のおいたく選手と神奈川県代表の空白選手による決勝戦が行われました。
試合はローテーションのBO5(3翔勝ち抜け)で行われます。3つあるデッキは勝利すると使用できなくなり、用意したすべてのデッキで勝利した選手が優勝。おいたく選手はマガチヨエルフ、財宝ロイヤル、進化ネメシスの3デッキを、空白選手はマガチヨエルフ、財宝ロイヤル、秘術ウィッチの3デッキを用意します。
1戦目は、おいたく選手が財宝ロイヤル、空白選手がマガチヨエルフの対戦で、おいたく選手が勝利。2戦目はおいたく選手がマガチヨエルフ、空白選手が秘術ウィッチの対戦となりました。秘術ウィッチが有利とみられており、定評通りに空白選手が勝利。1対1となった3戦目は、おいたく選手がマガチヨエルフを続投、それに対して空白選手1戦目に引き続きマガチヨエルフを出し、マガチヨエルフミラーとなりました。どちらも1回負けているデッキなので、ミラーでどちらかが勝利すると大きなアドバンテージとなります。
そのミラーマッチを制したのはおいたく選手でした。そして、マッチポイントを迎えた4試合目はおいたく選手が最後のデッキ進化ネメシスで、空白選手がマガチヨエルフ続投です。結果は、おいたく選手が勝利。すべてのデッキで空白選手のマガチヨエルフを倒したことになります。展開次第によって結果は違った可能性はあるとは言え、どのデッキ順でもおいたく選手が勝利する道筋となっていたと言えます。
次のタイトルは『第五人格』です。全国都道府県対抗eスポーツ選手権としては初参加のタイトル。しかもチーム戦です。大人数のチーム戦は「2019 IBARAKI」の『ウイニングイレブン2020』以来です。
『第五人格』は、10月14日にオンライン予選Day1を行い、ベスト8を決定。10月28日にオンライン予選Day2を行い、上位2チームを選出します。全国都道府県対抗eスポーツ選手権のオフライン会場で、その上位2チームによる決勝戦が行われました。決勝に進出したのは東京都代表の「Cross Fire」と愛知県代表の「愛知以外の美味い店ある?」です。
『第五人格』は狩る側のハンターと逃げる側のサバイバーに分かれ対戦します。ハンターはできるだけ多くのサバイバーを捕獲し、サバイバーはハンターから逃げ回り、マップに点在する5つの暗号機を解読し、脱出することを目的とします。
試合はBO2で行われ、前後半で攻守が入れ替わります。まずハンター側となったのは東京都代表。影を使った高速移動ができるオペラ歌手(サングリア)を選択します。結果は3人のサバイバーを捕獲し、3ポイント獲得。攻守が入れ替わります。ハンター側になった愛知代表は破輪(ウィル三兄弟)を選択。車輪形態となって高速移動ができる能力を持っているハンターです。こちらも3人を捕獲し、3ポイント獲得。1ラウンド目は引き分けとなりました。
2回戦目は、相手に使用キャラクターを制限させるBANが行われます。サバイバー側の愛知代表は、先ほど東京代表が選んだオペラ歌手をBANしました。そこで選んだハンターは夢の魔女(イドーラ)。愛知県代表が選んだサバイバーとの相性はあまり良くないものの、プレイヤー練度で選んだのでしょう。サバイバーの教授の鱗硬化により長期戦の様相を見せますが、夢の魔女がしっかり倒しきり、4吊り(全員捕獲)を達成。5ポイントを獲得しました。
愛知県代表は、同じく4人吊りをしないと敗北が確定。東京代表は1人の生き残りを狙う作戦がとれるようになります。東京代表は愛知県代表と同じくオペラ歌手をBAN。サバイバー側はハンターが夢の魔女のピックを想定した編成を組みますが、ハンター側はそれでも夢の魔女を選びます。あくまでも4吊りを狙う選択です。しかし、1人脱出で勝ち確する東京都代表の優位性が生き、サバイバーの1人バーメイドが脱出して勝利を決めました。これでDay1の試合はすべて終了です。
Day2の1試合目は『ぷよぷよeスポーツ』です。『ぷよぷよeスポーツ』は小学生の部と一般の部の2部門で行われます。
小学生の部は4人で構成されるグループリーグを勝ち抜いた4人でトーナメントを行い、準決勝を勝ち抜いた東京都代表のゆうき選手(小2)と大阪府代表のおのぴー選手(小6)による決勝戦が行われました。
決勝戦は5勝勝ち抜けを1セットとし、2セット先取で勝利。かなり年齢差のある対戦でしたが、さすがに全国大会の決勝戦ということもあり、実力は拮抗しています。大連鎖、速攻、セカンドと、どれをとってもハイレベル。それどころか一般の部でも活躍できるのではないかと思うほどです。結果は、ゆうき選手が1セット目を3-5で、2セット目を1-5で勝利し、優勝となりました。
一般の部もグループリーグを勝ち抜いた4人によるトーナメントを開催。そのトーナメントを勝ち抜いた東京都代表のともくん選手と新潟県代表のひからいと選手が優勝をかけて争いました。
ともくん選手はトッププロとして活躍するプレイヤーで、数々のタイトルを保持しています。全国都道府県対抗eスポーツ選手権では2連覇しており、3連覇がかかっています。かたや、ひからいと選手はプロライセンスを保持していない16歳の新鋭です。準決勝でプロゲーマーのリッキー選手を打ち破っての決勝に進出してきました。
全国都道府県対抗eスポーツ選手権はプロライセンス認定大会なので、優勝すればプロゲーマーへの道が開けます。1セット目は高い対応力をみせたともくん選手が5-2で勝利。続く2セット目も盤石の体勢をみせ5-2で連取し、全国都道府県対抗eスポーツ選手権の3連覇を達成です。ひからいと選手も良い動きをみせていましたが、相手が悪いとしか言えない内容でした。
次のタイトルは『バズドラ』です。ルールは4人でガチ対戦。4人同時にリアルタイムでダンジョンに挑戦します。3試合の合計スコアで順位を決めます。このタイトルも『ぷよぷよeスポーツ』と同様でプロライセンス認定大会で、優勝すればプロライセンス獲得の権利が得られます。
準決勝Aブロックにはゆわ選手、Bブロックには海斗選手の2名のプロゲーマーが残っているので、この2人が新たなプロゲーマーの誕生を阻止するのかも見どころです。さらに、ゆわ選手は前年の優勝選手であり、2連覇がかかった試合にもなります。このあたりは『ぷよぷよeスポーツ』とかなり似ている展開でした。
決勝進出したのは東京代表のゆわ選手、岡山代表のゆうちゃん選手、大分県代表の椛選手、長野県代表のひろNa選手です。
決勝は、1試合目こそ3位となったひろNa選手ですが、2試合目ですべてのボーナスを獲得し、一気に1位に躍り出ます。3試合目は唯一クリアができなかったひろNa選手ですが、時間いっぱいまで得点を稼ぎまくり、結果的には2試合目終了時よりも2位との得点差を広げて優勝しました。これでひろNa選手はプロラインセンスの取得が確定しました。
大会の最後を飾るのは『eFootball』です。都道府県予選と本大会1~3回戦はオンラインで行われ、そこを勝ち抜いた8名の選手が鹿児島で激突します。鹿児島県代表は主催地枠として準々決勝のオフライン大会からの出場となります。
都道府県予選は、クラブチームや国を超えて好きな選手を選べるドリームチームモードでの対戦となりましたが、本大会からは既存のクラブチームから選択するオーセンティックモードを使用します。配信は準決勝から行われました。
準決勝1試合目は地元鹿児島県代表のりっきー選手対神奈川県代表のTakaki選手。どちらもバイエルンミュンヘンを選択し、ミラーマッチとなりました。前半戦を0-0で折り返すと、後半早々に2点を連取するTakaki選手。りっきー選手も終了間際に1点を返すも反撃はここまで。Takaki選手が決勝に進出しました。
もう1つの準決勝は前日に行われており、愛知県代表のおしゅし選手が勝ち上がっています。決勝戦はTakaki選手がバイエルンミュンヘンを選択し、おしゅし選手がマンチェスターユナイテッドをチョイス。準決勝と同様に前半戦はスコアレスで折り返すと、Takaki選手が先制点を奪取します。さらに2点の追加点をあげ3-0に。なんとか反撃をしたいおしゅし選手ですが、Takaki選手の固い守りに阻まれ、このまま試合終了となりました。
すべてのプログラムが終了し、都道府県別順位も確定しました。優勝したのは540ポイントの高得点を稼いだ東京都。「2022 TOCHIGI」での優勝に続き、2連覇を達成しました。東京都は『第五人格』『ぷよぷよeスポーツ』の小学生の部、一般の部の3部門で優勝し、『eFootball』と『バズドラ』が3位、『グランツーリスモ7』はU-18部門が12位、一般の部が2位とコンスタントに好順位をつけており、総合2位の神奈川県に220ポイントの大差を付けての完勝となりました。
今回は残念ながら現地での取材が叶いませんでしたが、配信を観ている限りだと盛り上がった印象を受けます。さすがに2回目ともなると慣れた感じです。
また、試合会場となったセンテラス天文館は「ぷよぷよファイナルズ SEASON5 鹿児島」で取材しており、繁華街のど真ん中にある商業施設です。その施設のオープンスペースで試合が行われていたので、全国都道府県対抗eスポーツ選手権を知らない人やeスポーツに興味のない人も多く、目にしたのではないでしょうか。
ほかの目的で訪れた人に観て貰える機会は裾野を拡げるためには重要で、地方都市でそれができたのは大きな意義があったかと思われます。
『ぷよぷよeスポーツ』と『パズドラ』はプロライセンス認定大会でもありました。どちらのタイトルもプロライセンスを取得する機会は少ないので、全国都道府県対抗eスポーツ選手権がその機会の1つとなっていることで、多くのプレイヤーが目標にもなります。
今回は『ぷよぷよeスポーツ』では現役プロ選手が新たなプロの誕生を阻み、『パズドラ』では現役プロ選手を倒してプロライセンスの取得を決めるという、劇的な展開もみせてくれました。
次回は同じ九州の佐賀県での開催です。佐賀県は「ロマンシング佐賀」など、ゲームとのコラボを行っている県なので、どんな大会を開いてくれるか楽しみです。