2015年7月14日午後8時49分。人類は、未踏の天体、冥王星に9年半! かけて宇宙探査機ニューホライズンズを到達させました。いやーめでたい! 今回は、第51回に続いて、冥王星第2弾でございます。写真マシマシでお送りしますー。

まずは、こちらの一連の写真にアクセスしてくださいませ。ぜーんぶ、冥王星の写真です。1930年の発見のときから、今回の宇宙探査機ニューホライズンズまで、人類がとらえてきた冥王星の姿です。いやー、ドンドン詳しくわかるようになっていますね。行ってみないとわからんですね! 宇宙探査の必要性をムチャ感じるわけでございます。

そう、宇宙探査機ニューホライズンズが、太陽系最果ての寒ーい天体、冥王星の接近に成功しました。2015年7月14日午後8時49分のことでございます。ただいま、絶賛最新情報が送られてきている最中で、ドヒャーっというようなことをジャンジャン教えてくれております。今回は、そんななかから、第一報をご紹介いたしましょー。

まずは、冥王星の全景。星のやや北極側から見たものです。お腹のハート型、が印象的ですなー。今後は、お腹にハート型が冥王星のシンボルになりそうですよ。

距離78万km(地球~月の2倍弱)から撮影した冥王星。白黒写真に着色。(c)NASA/APL/SwRI

このハートは氷の平原とわかりました。で、成分を調べてみたら、その中心部分は、一酸化炭素なのだとわかりました。二酸化炭素(ドライアイス)でも、もちろん、水でもなく、「中毒」が後ろにつくような一酸化炭素でございます。一酸化炭素はマイナス192度でも、気体になっちゃいます。それが液体どころか、氷になっている(マイナス205度以下ってこと)のですから、どんだけ寒いんやという感じですな。実際冥王星の表面温度は、マイナス210~230度とされています。まあ、氷をつくっている一酸化炭素がギリギリ溶けない温度ともいえますな。

さらに、このハート型の氷原のクローズアップ写真も発表されています。全体としては、ペタットした感じで、メロンの皮の模様みたいですな。

距離7万7000kmキロから撮影した。冥王星のハート型のクローズアップ写真。一酸化炭素の氷原。左下の20milesの棒は、32kmにあたる。(c)NASA/JHUAPL/SwRI

氷原を作る一酸化炭素は、ギリギリとけないくらいですので、ちょっとしたことでとけて流れたり、またかたまったりしているんでしょうかね? となると冥王星の地面は、冷え切っていないみたいですねー。こういう最新データは科学者と同じ気持ちで見られるのがいいところです。なにしろ、人類はだれもが初めて見る姿なのですから。

さらに、ハート型からちょっとずれたあたりでは、山の写真のクローズアップがとどいております。

距離7万7000kmから撮影した、冥王星の赤道ふきん。異常にゴツゴツしていて、クレーターが見あたらない。(c)NASA/JHUAPL/SwRI

今度は、うってかわってゴツゴツ。真ん中編の1つのゴツが、富士山なみの3500mもあるんだそうですよー。冥王星は重力が小さく。地球の17分の1。そのぶん高いものはできやすいんですが、そもそもこれを持ち上げるのはなにや? 火山活動があるんか? 星が小さいぶん、冷えやすい、死んだはずなので、ナゾなのだそうです。この写真の説明には、giant surprise、ドデカイビックリや! と書かれています。クレーターがないのも、この辺が最近の活動でできた証拠なのだそうで。ふーん。

サクッと3D化された、アニメもあります。さっきの、氷原と比較したものです。NASA仕事はや!

Animated Flyover of Pluto's Icy Mountain and Plains

続きまして、冥王星の衛星カロンでございます。1978年にクリスティーさんが発見した天体です。

距離47万kmから撮影した冥王星の衛星カロンと、7万9000kmから撮影したクローズアップ(右側)。大きさは冥王星の半分。色合いが冥王星と違う。(c)NASA/JHUAPL/SwRI

冥王星の半分ほどの大きさがある巨大な「弟分」で、冥王星と常に向き合って、6日9時間18分でまわりあっています。衛星(家来)というよりも、ペアという感じですね。実際仲がよくて、冥王星にはいつも同じガワがむいています。冥王星も同じで、自転が6日9時間18分。いつも同じガワがカロンに向いています。おたがいに同じ場所しか見えないという、シンクロした関係なんですねー。

そんなメチャ仲良しな2つの天体ですが、表面の暗さがだいぶ違います。これは表面の様相がだいぶちがっています。色というか暗さが違う。表面のクレーターの量もぜんぜんちがう。クレーターについては、小さいゆえ冥王星ほど活動してないからかなーともいえますが。シワみたいなのも見えますからね。さてはて。

となると、生まれが同じか疑わしい。兄弟といいましたが、別々に生まれて出会った夫婦って感じでしょうか。冥王星のハートの向きがカロンにむかっていれば完璧なんですが、発表されている、比較合成写真(だいたい向き、大きさ、色合いもあわせたよん)では、反対ガワみたいですね。カロンからは冥王星のハートは見えない。秘めた思いーって感じですかね?

冥王星と衛星カロンの合成写真。別々にとったものを、大きさ、距離、暗さぐあい、向きなどをだいたいそろえて合成したもの。ハートは反対ガワにあるみたいです。(c)NASA/JHUAPL/SwRI

さて、こちらのちょっと地味―な、写真もごらんいただきましょう。これは、冥王星の衛星ニクスでございます。2005年に発見されております。

距離59万kmから撮影した冥王星の衛星ニクス。はばは40km…といわれても、ピンときませんな。(c)NASA/JHUAPL/SwRI

同じ衛星でも、1208kmあるカロンとちがって、はばが40kmしかありません。40kmっていうと、山手線の南北の2倍くらいです。富士山麓全体っていってもいいかなー。富士山だけで星になっているようなもんですな。

また、同じくヒドラという衛星も撮影されています。

距離64万kmから撮影した冥王星の衛星ヒドラ。ぼけぼけですな。43km×32kmだそうでございます。ニクスと同じくらいですな。(c)NASA/JHUAPL/SwRI

真ん中の暗い部分と明るい部分、気になりますねー。なんじゃろね。

さて、取り急ぎ、最新の画像をご紹介しましたが、これは、まだほーんの一部。残りは、まだ届いていません。 写真などのデータは8ギガバイト(64ギガビット)のメモリに蓄積され、順次地球に送られています。ただ、全部送信に1年半かかるのです。遠いので、通信速度がでないんですね。たったの毎秒800ビットです。1キロバイトだと10秒ですな。この原稿は文字だけだと20キロバイトくらいですが、それですら3分。まして、今回みたいに、写真マシマシにして3メガバイトくらいにしちゃうと、3万秒。送信に8時間かかります。

8ギガバイト全部だと、さらに2000倍以上ですから。2万時間。日になおすと、800日です。まあ、2年あまりですな。そこを、8ギガつかいきらないよとか、で1年半ってところなんですかねー。

受信の方も「切れ目なく」24時間でやるために、世界の3カ所に巨大アンテナをおいて、やっています。その様子は、WEBからアニメで見られますよー

NHPCとあったら、それが、ニューホライズンズ探査機に向けられたアンテナです。

今後も続々、冥王星のことがわかるんですねー。いやー楽しみでございます。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。