「はやぶさ2」話題になっております。大塚実さんほか、詳しい記事もたくさんでておりますが、ちと難しいかも。ということで、とりあえず、サブタイトルだけでも「これだけ知ってれば、おけ」。という5つのポイントをご紹介いたします。ご活用くださいませー。

「はやぶさ2」のミッションイメージ (C)JAXA/池下章裕氏

1. 調べるのは「黒い」小惑星1999JU3。生命の原料がありそう。

「はやぶさ2」は小惑星探査機です。で、調べるのは小惑星「1999JU3」、正式な名はまだない、です。小惑星は、太陽をまわる岩や金属塊でございますな。最大で…え、1000kmなんてのもあるの?(さすがに分類があって、準惑星というそうです)。60万個以上も発見されているんですな。

で、なんでその中の1999JU3に行くか、2つ理由があります。1つは近くて行きやすいから。そして、もう1つは、この小惑星が黒く、生命の原料になる水とアミノ酸がありそうだからです。生命は、小惑星がふってきて地球に発生したという説がございまして、その検証もねらっているのですな。あ、キーワードは「C型小惑星」でございます。

2.行きに4年、帰りに1年、現場での探査は1年、合計6年のプロジェクト

宇宙探査は、ほとんどが「行ったきり」です。データを通信してきておしまいってわけですな。はやぶさ2は、先代のはやぶさが実証した「行って、小惑星のあたりをウロウロして、地面からモノとって、帰ってくる」という、4段がまえです。シングルのスピンジャンプでも素人には大変なのに、四回転ルッツしちゃうってわけですな-。

で、行くだけなら、行きが最短になるタイミングで行くのですが、今回は現場での探査や帰りがベストになるようにタイミングを見計らっていくのでございます。それで、こんなスケジュールになるんですな。探査は2018年の夏~1年くらい。帰ってくるのは2020年の12月ごろになる予定だそうです。打ち上げは2014年11月30日~12月9日の間です。予定では一番早い日でございます。

3.先代「はやぶさ」とほぼ同じ。1m四方の箱に、両翼6mの太陽電池パネル。600kg

はやぶさ2は、先代のはやぶさの問題点を改良した探査機でございます。100kg弱重くなっているほかはあまり変わりません。先代が打ち上げられたのは2003年。10年たって同じサイズってどうよ? という気がしますが、そうじゃないんですな。

先代は、テスト機で、四回転ルッツやれるんかいなー、あ、やれた。というものでした(←小惑星サンプル・リターンに世界で最初に成功といえよ)。ただ、まあやってみたら、けがはするわ、四回転目のスピンがたりないわ(←事故・故障で帰還があやぶまれたといえよ)。帰還そのものが奇蹟だといわれました。でも、科学探査で「奇蹟で成功しました」といってもそりゃあかんわ。ということで、予備部品や予備燃料を多くしたのですね。ということで、ちょっと重いけど、基本的な設計や考えは同じ。うまくいったところは崩さない、成功確率をあげるための改良を加えたってなわけでございます。

4.大砲を積んでいる

先代のはやぶさと、今回のはやぶさ2の大きな違いは、大砲を積んでいることです。先代もピストルは積んでいましたが、今回はピストル+大砲でございます。いったいそんな物騒なもの、そうするん? という感じですが、これは小惑星の石をひろうためのものなのですな。

ひろう方法はいろいろあって、スコップですくうとか、粘着テープを使うとか、ゼリーみたいなものもっていって、突き刺さるのを待つとか、マジでいろいろ考えられたようです。結局は、着陸する際にヤブ蚊の吸い口のような筒をつけ、筒の中でピストルを撃って、砕かれて飛び散った石が口に入ってくるという方法をとったのでございます。

じゃあ、大砲は? というと砕くのはそうなんですが、これは穴を掘るためですね。太陽からの放射線が降り注ぐ小惑星の表面と内部では違うじゃろうという予想があるため、大砲を撃って、穴をほっくり返すんです。どうやるかは、以下のリンク先のJAXA提供の映像を見てもらうのが一番ですなー。35秒目くらいからドゾ!

「はやぶさ2」タッチダウン想像図CG/"Hayabusa2" CG Animation

5.リーダーは1人→3人、顔は國中、吉川、渡邊の3人

5つ目はちょっとマニアックです。先代のはやぶさプロジェクトのリーダー、プロジェクトマネージャー(PM)は、川口淳一朗さんでした。元々は「ロボットすげー」と思って工学を志した方で、宇宙に関わってからは様々な革新的な探査計画を推進してきました。ちょっとしたカリスマですな。

ただ、はやぶさ2は1人のカリスマがプロジェクトを進めるようにはなっておりません。3人のリーダーがいるという感じになっています。筆頭のリーダーのプロジェクトマネジャーは工学者の國中(くになか)均さん、はやぶさのイオンエンジンの開発を担当した人です。ミッションマネージャーは吉川真さん、小惑星やロケットの運動を研究してきた理学者ですね。この2人は、はやぶさ2を運用するJAXAの研究者です。そして、はやぶさ2を使って小惑星の研究のとりまとめをするプロジェクトサイエンティストが名古屋大学の渡邊誠一郎さんです。國中、吉川、渡邊の3人が今後6年のプロジェクトを引っ張っていきます。

なんだか書き切らないなあ。うむ、打ち上げ直前にもう一本書きますよ。はい。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。