1等星が2つあるゴージャスな星座「オリオン座」

オリオン座。冬の、いや、星座すべての代表でございます。そのポイントは2つの1等星を持つこと。ところが、そのうちの1つ、ベテルギウスがヤバイほど減光しているというお話を1月はじめにいたしました。で、その後どうなったのか、続報のご紹介でございます。えー、2月半ばでヤバイ状態は脱する傾向がハッキリしていますが、まだまだ特異なベテルギウスが観察できます。

星の明るさは、2000年もの昔から、1等星、2等星、という「等級」で表しています。

英語ではマグニチュード(magnitude)で、地震のそれと同じ言葉ですが、地震だとマグニチュードの数字が大→規模も大、つまり3と5だと、5の方が大きな地震になりますが、星の等級は、数字が大→明るさ小です。つまり3と5だと、5の方が暗い星となります。

そんななか星座を作る星で1等星になるのは、最も明るい21個の恒星でございます。それから、星座は88ありますので、1つの星座に1等星は1個あればいい方。しかし、そんな中で2つ1等星を独占する星座が3つあります。みなみじゅうじ座(南十字星)、ケンタウルス座、そしてオリオン座です。沖縄の一部などをのぞき、日本の大部分では南十字星とケンタウルス座の1等星は見えません。ようするに。

オリオン座は、日本の大部分で唯一見える、1等星が2つある、ゴージャスな星座。

なのでございます。ところが、そのオリオン座の1等星の1つ、ベテルギウスが1等星陥落ほどの「ヤバイことになっている」というのが1月はじめにお伝えしたことでございました。

ベテルギウスが1月、2等星に降格

で、その後どうなったかというと、えー、精密な観測ができるようになったここ70年ほどで初めて

ベテルギウスは、2等星になってしまいました!

グラフは、アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)の観測者(ベテラン観測者からかけだしまでいろいろの合算)のものでございます。

観測者による誤差があるので、これとは言いにくいのですが、おおむね、1月中旬~下旬に2等星に陥落していたようです。

  • ベテルギウス

はい、1等星の数が20個になり、ゴージャス星座のオリオン座が勲章を失ったのですね。

また2月にヨーロッパ南天文台(ESO)から発表されたのが次の画像です。昨年の1月と12月のベテルギウスの超高解像度撮影画像です。はるか500光年(太陽までの距離の3000万倍遠く)にあるベテルギウスの表面の濃淡がハッキリうつり、ベテルギウスの一部がガクッと暗くなっているようすがわかりますが、スゴイですな。

  • ベテルギウス

    ESOが公開したベテルギウスの変化。左が2019年1月、右が2019年の12月、世界最大クラスの望遠鏡VLTで撮影されたもの (C) ESO/M. Montargès et al.

ところで、なんでこんなことが起こるかというと、ベテルギウスが非常に巨大に膨らんだ星(重さが太陽の20倍なのに、体積は10億倍)で、非常にスカスカなので、変化が起きやすいからです。で、心臓のように星全体が膨らんだり縮んだりする「脈動星」です。膨らむと、光を出している星の表面が大きくなる分冷え、暗くなります。で、暗くなったのは膨らんだから、でそこまでは、まあ「いつものとおり」だったのです。また、画像でも一部が明るいようですが、こうした全体が膨らむのではない、波打つような変化も知られていました。これもまあ知られていました。さらに、これら複数の要因が重なって、冷えが(といっても3000度以上あるんですが)ひどく、表面に酸化チタンが生成され、それらがくっついて塵の雲をつくり、光をさらに遮って暗くしたんじゃないかという話も前にご紹介しましたな。実際酸化チタンの生成を裏付けるデータも出ています。

華麗に1等星へと復活を遂げたベテルギウス

ただまあ、これらの複数の変化の底が重なっただけであれば、過去の経験からいって2月には明るさが復活しはじめるはずだとなっていたんですね。

でどうなったの…

  • ベテルギウス

復活したーーーー!

ということで、ヤバイ状態は終了です。ただ、あいかわらずめったに見られないベテルギウスが、まあもう10日くらい続きますので要チェックですぜ!

所説あるベテルギウスの名前の由来

ところで、こっからはマニアックな、「ちなみに」話でございます。ベテルギウスという星の名前の由来についてです。プラネタリウムなどで、俗には「(オリオンの)脇の下」と紹介されることもあり、実際、星座の絵をはめるとオリオンの肩か脇あたりにあたります。が、どうもこれは根拠がないようなんですな。

オリオン座が成立していた2000年ほど前のギリシアでは特に名前はなく、2世紀にオリオン座も含む48星座を紹介した「アルマゲスト」という長らく標準教科書となった有名な本でも「右肩にある赤い星」と素っ気なく記されています。おおいぬ座のシリウス、さそり座のアンタレス、こいぬ座のプロシオン(プロキオン)はちゃんと名前があるので、ベテルギウスはこの本では名無しなんですね。

固有名としては、10世紀のペルシア(イラン)の当時世界トップの天文学者アル・スーフィーが、「星座の書」で「ヤド・アル・ジャウザー」(ジャウザーの手、ジャウザーはオリオンのことらしいか意味は不明、女性名としかわからない)と書いているんですが、これもベテルギウスと遠いですな。

早稲田大学の近藤二郎 教授(専門はエジプト考古学だが熱心な天文ファンでもあり、考古学の専門を活かした天文についての記事や書籍も書いている)は、「ヤド・アル・ジャウザー」をアラビア語で書き、さらに文字の点を1つ見落とすと「ベテルグーザ」と読めるので、読み間違ったままヨーロッパに伝わって広がったのではという見解を示しています。

ベテルギウス、ナゾな名前でございました。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。