天文学は予想の科学からスタートしました。一方で「彗星のように現れる」突発事項も天文・宇宙の世界です。ということで、予測が秒単位でできることから、どーなるかわからんことまで「素人でも手軽に観察または参加できる」宇宙に関わるあれこれを、サクっと紹介しちゃいます。今回は、直近の12月26日に起こる日食から、2020年1~2月分をば。

なお、天文現象を一年分紹介している年鑑の類が、毎年刊行されています。ネットやアプリでもないことはないのですが紙の本は情報量が圧倒的で、ここでは書き切れない内容がいっぱい。手帳タイプの1000円くらいから月替わりのカレンダータイプ、そしてDVD・ソフトつきムックで3000円くらいまでですね。それぞれの特徴は、この記事の最後にまとめておきましたので、参考にしてくださいませー。

12月26日午後2時すぎ〜日の入り、日食が見られるよ! 下手すりゃ向こう10年、日本では見られないよ!

ということで、12月26日の午後2時すぎから日本全国で太陽が欠けちゃう日食が起こります。黒い日食メガネとか「しゃ光板」が必要なやつですな。

  • 部分日食

    2012年、日本で見られた金環日食に伴う部分日食

日本では、那覇が14時2分18秒~16時40分22秒、京都が14時23分5秒~16時32分13秒、東京(14時28分11秒~)や札幌(14時31分31秒~)では、欠けたまま太陽が沈んでいくのが見られます。全国の予報は、国立天文台のWebサイトでチェックしてくださいませ。

日食の安全な見方は、どこでもサイエンスの71回目の後ろの方を見ていただくとして…あ、双眼鏡や望遠鏡で直接見ちゃダメですよ。目に一生残る損傷が起こりますよ。

それから、日食が終わったら、日が暮れていく様子もプラス1時間見てほしんですよ。太陽のあとを追いかけて、夕空に「宵の明星」になっている金星が燦然と輝きます。これは南西の空が開けていれば、大都会でもバッチリ見られます。日食の日に限りませんのでぜひ! そうそう、12月29日には、金星と三日月が並んで、見応えがありますよー!

あと、ちょっと日食について蘊蓄を語っておきますねー。

今回の日食は、インド洋からアジア太平洋の広範囲で見られますが、南の方ほど大きく欠けます。中でも最大に欠ける金環日食になるのが、サウジアラビア、カタール(ドーハ)、インド南部、シンガポール、ボルネオ、フィリピン南部、グアム島ですな。こちらのエリア図参照

しかし、シンガポールグアム! チャンスがある方もいるんじゃないですか? ネット中継も期待できますな。

ところで、日食ですが、地球全体では年に2回は起こり、時には年5回の時もあるのですが(今年は3回だった)、これが特定地点に限ると、10年見られないなんてことが起こります。巡り合わせとしか言いようがないのですが、その不幸な循環が日本で起こります。NASAの日食ページには、地点を選ぶと将来の日食が計算できるものがあるんですが、試みに東京でみると向こう10回の日食は、

  • 2019年12月26日
  • 2020年6月21日
  • 2030年1月1日
  • 2032年11月3日
  • 2035年9月2日
  • 2041年10月25日
  • 2042年4月20日
  • 2046年2月6日
  • 2047年1月26日
  • 2049年11月25日

となっておりまして、2020年代の10年間、東京で見られる日食は、来年6月の1回こっきりなんでございます。今年は2回もあるというのに、10年ないんですな。

しかも、6月21日といえば、梅雨! 今回を逃すと本当に10年間日食が見られないかもなんですな。ということで、ぜひチェックして欲しいのでございますよ!

ということで、年末最後の大仕事、日食はこれくらいにいたしまして、来年への展望もしておきましょう。

1−2月 冬の空は明るい星が多く、すごく見ごたえします

例年書いていますな~、しかも金星がしばらく夕空にキレイこれは毎年同じなのです。冬は星がきれい。テッパンでございます。加えて、金星も見事でございます。なお、金星は夕方に見えて、夜中には見えなくなっています。夜9時とか10時はダメですよ。日が沈んだらすぐにさがしてみてくださいませ。

なお、1月28日と2月27日には、金星と四日月が接近して、なかなかの見物でございます。

ちな、5月になると急速に太陽に接近して、見えにくくなるのですよ。「2019年の金星は、大型連休すぎまでがみごろ!」これが基本です。

1月4日には、しぶんぎ座流星群

流れ星が集中して見られる流星群。その中で見応えがある「三大流星群」の1つがこの、しぶんぎ座流星群です。ただ、この流星群は、見頃が真夜中すぎから早朝なんでございます。クッソ寒い時期の明け方ですから、なかなかですよね。しかも、北に行くほど見やすくなるので、南国から狙う手も使えず。防寒対策ガチガチで狙う、素人を寄せ付けない流星群なのでございます。

なお、しぶんぎ座という星座は、1795年にフランスの天文学者ラランドが提唱した星座ですが、1928年に国際天文連合が星座を整理した時に採用されず、りゅう座とうしかい座、ヘルクレス座にその領域を占領されています。ただ、慣例的にしぶんぎ座流星群という名前が使われ続け、星座はないのに、流星群の名称として2009年から正式なものと認められることになっています。

話題になるか? ブランパン彗星の接近

1819年にフランスのブランパンが発見した彗星が、この1月11日ごろに地球に接近します。現在のところ、マニアが探しても見つからないくらい暗い状態なのですが、過去に猛烈に明るくなったことがあります。彗星は氷と泥や砂が混じった塊ですが、太陽に接近すると、氷が気化してジェット噴射をして、身体の一部が剥がれて周囲に撒き散らします。それが太陽光を反射して明るくなることがあるんですな。5年少しごとに太陽に近づくのですが、この2019年~2020年は明るくなる条件が揃っているそうです。ただ、今のところはその予兆はないのですが、もしかしたらということで書いておきますねー。

なお、彗星が撒き散らしたチリが地球に衝突すると流れ星になります。1956年に南半球で、それが大量に観測されたことがあったのですな。近年では2014年にわずかな活動が確認されています

2月10日前後、水星が夕空に見やすい

太陽に一番近いところを回っている惑星、水星。いつも太陽のそばにあるので、非常に見にくいのですが、2月10日ごろは、精一杯太陽から遠ざかります。金星のほぼ真下、高さは高度10度以下の低空に見えます。空が澄んだ山などでは、驚くほど明るく見えますが、都会ではなかなか。でも、覚えてやってください。

ロケット&宇宙機関係

一方、宇宙開発関係はどんなもんでしょうか。ここでは宇宙や地球の研究に関係しそうなものをSPACE FLIGHT NOWからひろってみます。

1月?日 スターリンク衛星の第3回打ち上げ

スターリンク衛星は電気自動車のテスラモータースの代表でもあるイーロン・マスクの米スペースX社が、数万機の人工衛星群(コンステレーション)で、世界中でのブロードバンドインターネットを構築するプロジェクトです。えー、鳥嶋真也さんのレポートがわかりやすいです。1回の打ち上げで60個の人工衛星を打ち上げていますが、これがまた空で目立ったりするんですよ。天文学者は天体観測の邪魔になると声明を出しています。何しろ、鳥嶋さんが書かれているように 「配備する衛星の数は最終的に約1万2000機にもなる予定で、これは「スプートニク」以来、これまで人類が打ち上げてきた人工衛星の総数よりも多い」のですからね。

2月 スペースX社の有人宇宙船Crew Dragonのテスト飛行

現在、事実上ロシアのソユーズしかない有人宇宙船ですが、米スペースX社がCrew Dragonという宇宙船のテストを行います。2人の宇宙飛行士が乗り込み、打ち上げ~着水のテストを行うのだそうですよ。ゆくゆくは、ソユーズと共に、宇宙ステーションへの往復旅行に使われる計画です。

2月 インドの地球観測衛星「RISAT 2BR2」打ち上げ

レーダーでリモートセンシングをする(まあ、スパイ衛星にも使えますが)衛星RISATシリーズの4機目の打ち上げです。12月11日にRISAT 2BR1を打ち上げたばかり(しかもPSLVロケットの50回目の打ち上げだった)で追っかけですな。ちな、同じ打ち上げで、日本のベンチャーQPS研究所のレーダー地球観測衛星「イザナギ」も打ち上げられてます。

2月5日 ヨーロッパESAの太陽観測衛星「SolO」が打ち上げ

ヨーロッパの太陽観測衛星「Solar Orbiter(SolO)」が打ち上げられます。水星よりも太陽に接近し、太陽を周回しながら、地球からは見えにくい、太陽の極地方を調べる予定になっていますよ。

打ち上げは、アメリカのATLAS Vロケットが担当。ヨーロッパのアリアンじゃないんだー。

2月かな? 中国の月探査機嫦娥5号が打ち上げ

嫦娥4号で、史上初の月の裏側への着陸を成功させている中国が、今度は、月から岩石を採取し、地球に持ち帰るサンプルリターンミッションに挑戦します。成功すれば旧ソ連のルナ24号が1976年に行って以来になります。

ということで、来年も宇宙を楽しんでいきましょー。

天文情報に特化した、年鑑類

書名 特徴 価格
天文手帳 手のひらサイズの手帳に、小さな字で毎日の月の出入り時刻や見所など星空情報がぎっしり。ミニ星座早見もついています 1040円+税
天文年鑑 天文年鑑のスタンダード。星空情報のほか、各種のデータが豊富。天体観測を趣味とする人向けの編集。ハンディサイズ。電子書籍も出ています 1320円(税込)
藤井旭の天文年鑑 天文年鑑の初心者向けバージョン。毎月の星空情報を中心に、観測のしかたなども紹介。ハンディサイズ 900円(税込)
ASTROGUIDE星空年鑑 DVDビデオ・PC&マック用ソフト付きのムック、大判かつカラー版。登録をするとタブレットなどで見られる毎月の星空紹介ページももらえる 2750円税込
天体観測手帳 基本は手帳で、それに天体観測のためのデータとガイドが載っている。カラー図をたくさんという体裁。小型望遠鏡までで見やすい現象、トピックが紹介されている 1280円+税
太陽・月・星のこよみ 大判の月めくりのカレンダー。毎日の月の形や、天体現象などが記載。大手書店のカレンダーコーナーや科学博物館のショップなどにもあることあり 1400円(税込、直接通販)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。