ペットとして1万年以上前から人と暮らしていた記録があり、現在でも人気の愛玩動物、といえば「犬」だ。日本では5世帯に1世帯、2人以上の複数人で構成される世帯に限定すれば、実に4世帯に1世帯が犬を飼っている、という統計があったりもする。そんな犬の飼い主が、飼い犬の状態を知るための重要な情報の1つが「鳴き声」。飼い主からすれば、まるで犬語を解するかのように飼い犬とコミュニケーションをとっているつもりでも、本当に飼い犬の気持ちを汲んでいる、とは限らない。この人と犬のコミュニケーションの隙間を埋めるアイテムとして、大ヒットが記憶に新しいのがタカラトミーより2002年に発売された犬語翻訳機「バウリンガル」だ。

今回は、バウリンガルの後継機で、8月27日に発売された犬語を日本語ボイスに置き換える音声による同時通訳機能を新搭載した「バウリンガルボイス」をレビューする。

親機のボタンが肉球っぽく配置された「バウリンガルボイス」。本体カラーは3色が用意されている

愛犬の鳴き声を「6つの感情」に分析

犬の首輪に子機をセットして、親機で鳴き声データを「受信」「通訳する」、という基本スタイルは初代バウリンガルと同じ。親機と子機間のデータ転送がデジタル化されることで、同時に5台のバウリンガルボイスを使用できるようになり、2頭以上の犬が同居するような環境でも、それぞれにバウリンガルボイスを装着して同時に使用可能になったのも嬉しい点だ。

まずはメインの通訳機能をテストしてみた。付属のベルトを使って、普段つけている犬の首輪にマイク兼送信機となる子機を装着。中型犬以上のサイズなら、気にならない大きさといえそうだ。一度、電源を入れて、親機とのマッチングが終われば、基本的に子機に触る機会はない。子機前面の上部にマイクがついているので、ちゃんと鳴き声を拾うように着けよう。

撮影に協力してもらったのは中型のミックス犬。バウリンガルボイスの犬種設定では「MIX(中鼻長)」を適用した

子機のセットが終わったら、親機を「つうやくモード」にすれば、あとは犬が鳴くのを待つだけ。犬が鳴くと自動的に犬の気持ちを日本語ボイスにしてくれる。鳴くたびに「受信中」「解析中」で多少の待ち時間があるが、同時通訳の名に恥じない程度のスピードで日本語ボイスが発声された。

音声の同時通訳とあわせて、液晶画面に文字が表示される。約200パターンの言葉に置き換えられる

飼い主の感覚からいって、「一緒に遊ぼうよ」「ぼくのこと好き?」など通訳された内容も、犬の気持ちを汲んだ結果になっているように思われる。なお、子機のマイクは犬の鳴き声以外の音は拾いづらく調整されているようで、人の呼びかけに反応しない一方、鳴き声にならない吐息のような声にも反応しないことがあった。また、子機と親機の通信は、直線の道路上で30m以上離れても成立していたので、カタログ値の「10m」は、かなり余裕のある数値になっているようだ。

通訳モードとしては、同時通訳のほかに「るすばんモード」もあり、指定した時間内の鳴き声を順次解析して、通訳結果を蓄積していき、帰ってきた飼い主が留守中の犬の気持ちを参照できるようになっている。贅沢を言えば、留守中はネットワークや携帯電話を通じて外出先から通訳結果を見られるようにして欲しかった。留守番モード時は親機の電源が入れっぱなしになるので、電池駆動よりもACアダプターで動作させた方が安心だろう。

犬の感情は鳴き声だけじゃなく、動作でも表現されるので「アクション辞典」でフォローする

忘れがちな予定もスケジュールモードで管理できる

通訳モード以外にも犬に関するコンテンツが充実しているのもバウリンガルボイスの特徴で、耳や尻尾などの動作が表す犬の感情を解説する「アクション辞典」、人間を犬種別にタイプ分析する「ワンコロジー」、予防接種や定期検診の日程を管理できる「スケジュール」、犬に関する知識を試される「Dr.野村の犬検」と「Dr.野村の犬ドリル」などのゲーム系から情報系まで幅広く網羅した多彩なモードが搭載されている。アクション辞典やDr.野村の犬検は、犬に関する知識が深まる、犬の飼い主にとってありがたい機能だ。また、同時通訳モードや留守番モードで蓄積された通訳結果から、「おねがい(要求)」、「ふまん」、「いかく」、「かなしい」、「たのしい」、「アピール(自己表現)」といった犬の感情の分布を解析できる「データ分析モード」もある。犬の感情の分布から、体調の変化を汲み取るノウハウなどが確立されれば、新しい活用の仕方もありそうだ。

「はい」と「いいえ」を選択していくと、「ドーベルマンタイプ」などの診断を下してくれるワンコロジー

犬ドリルで好成績を収めると犬検に挑戦できるようになる

コンパニオンアニマル、また家族の一員として人間生活に於ける犬の占める比重が大きくなり、介護や精神疾患の治療にも犬の活用が期待されている。バウリンガルのような商品が生まれるほどデータの収集と解析が進んでいる事自体、犬の存在が重視されている証左とも言えるだろう。老人介護にドッグセラピーを導入する研究が自治体の認可を受けるなど、改めて人と犬の関係が見直されている昨今。バウリンガルボイスが人と犬の距離を縮めて、よりよい関係を築くきっかけとなる可能性もあるだろう。人と犬との架け橋として、バウリンガルボイスは非常に優れたアイテムだと感じた。

対応犬種は50種類で、ミックス(雑種)犬もサイズと鼻の長さから選択できる。さらに犬の性別の設定によってボイスの語尾やイントネーションが変わる演出も