スウェーデンの家電メーカー・エレクトロラックスが新発売した空気清浄機「Pure A9」。本国スウェーデンをはじめ、韓国、台湾、タイ、中国などに続き、2019年末に日本にも初上陸した。同社の空気清浄機が日本で発売されるのは2014年の「Oxygen」以来の2度目だが、スタンダードな姿だったOxygenと比べると、新製品はかなりユニークに生まれ変わって登場した。

今回はそんな「Pure A9」について、インテリアとの調和を最優先に生まれたという本製品のデザイン、仕様・設計上のこだわりを、エレクトロラックス・ジャパン カテゴリー&マーケティング・マネージャーの鈴木永子氏に語ってもらった。

  • エレクトロラックスの空気清浄機「Pure A9」。インテリア性を強く意識して開発されたデザインは、本体の形状から素材選びまで何もかもユニークだ

個性的、でも実は機能的な五角形

Pure A9の一番の特徴は、五角形の本体だ。いまや縦長の円筒形の空気清浄機は珍しくないが、本製品はこれまでに類を見ない5つの面を持つ多面体。この形を採用した理由は、デザイン面と機能面での2つの理由があるという。

「五角形であることで、空気をすべての方向から吸い込みやすいことがひとつ。さらに、部屋のさまざまな場所でPure A9をシームレスに配置しやすくなるというのも狙いです。円形よりも五角形であることで、その場所に落ち着いてくれるのではないかと思います」

確かに実物を目の前にすると、立方体の居室空間において、円筒状よりも五角形のほうが唐突さがなく、しっくりと溶け込む。それなりのサイズ感のある空気清浄機では、実は結構重要な要素かもしれない。とはいえ、五角形という形状を実現するにあたっては、同時に機構・設計上、何より空気清浄機としてのパフォーマンスを保持するために、もちろん課題がなかったわけではなかった。

「開発担当者からは、五角形の形状で、ノイズレベルと気流をベストバランスにすることが困難だったと聞いています。双方の最適なポイントを見つけ出すためには、多くのプロセスを費やす必要がありました」

  • 空気清浄機の形状で円筒形や四角いタワー型は珍しくないが、五角形は新しい。単なる斬新さだけでなく、空間と調和させるために実は計算された形だった

Pure A9のデザインにおいて、もうひとつユニークなポイントは、本体の上半分が布貼りになっていることだ。さらに、本体にはキャスターに加えて、"持ち手"が用意されているのだが、この部分の素材はレザー。まるでハンドバッグのようなデザインだが、このように家電製品ではあまり見られない素材を採用した理由は何だったのだろうか。

「既に市場にある空気清浄機とは違った、ホーム・インテリア・デザインに調和する美しい空気清浄機を目指しました。製品が自然と部屋に溶け込むように、インテリアで使われている素材に注目し、ファブリック素材やレザーを採用するに至ったということです」

「結果、室内の家具やインテリアに自然と溶け込み、お部屋に馴染みやすいデザインになったと思います。ハンドルやキャスターを設けることで、通常は部屋の隅に固定しがちな空気清浄機を室内の好きな場所に自由に持っていくことができるようになり、ここでも五角形というデザインが生きてきます。五角形の形状をしているPure A9なら、移動させてもその場所で落ち着いた印象をもたらしてくれます」

  • 本体上部に採用されたファブリック素材は、確かに壁紙や寝具のテキスタイルのようでもあり、違和感なく部屋に溶け込む

  • 部屋の中を移動させやすいようにと取り付けられたハンドル部分はレザー素材。電化製品ではごく一般的なプラスチックや金属素材の無機質な印象を打ち消すことで、家具のような親しみやすさをもたらしている

ちなみに、五角形の本体の内側には、空気清浄機で肝となるフィルターが内蔵されているが、性能的には、粒径0.3μmの粒子を99.97%捕集する基準を満たしたHEPAフィルターを含む、多層の円筒型の一般的なものである。しかし、各フィルターには"スマートタグ"が付けられているのがPure A9のこだわりだ。

また本製品は無線LANにも対応し、専用のスマホアプリ上で、電源やモードの切り替えや、風量の変更といったリモート操作に加えて、Pure A9が設置されている部屋の温度、湿度、PM2.5、CO2、TVOCの数値なども確認できる。空気清浄機のスマホアプリ機能としてはいずれも一般的なものだが、Pure A9ではフィルターの使用状況を確認できるのが特長だ。「フィルターにはスマートタグがついているので、一度使用を停止して、次のシーズンから使い始めても残りのフィルター寿命を再認識することができます」と鈴木氏。

  • フィルターは一般的な円筒形。外側のカバー部分を着脱しやすいように内側に磁石が仕込まれている

  • 本体には無線LANを内蔵し、スマホアプリと連携する。シンプルにまとめられた本体側の操作インターフェースの機能をスマホアプリで拡張・カバーする仕様だ

ユーザーのタッチポイントとして重要な本体側の操作部や表示部には、タッチ式のアクリルディスプレーを採用している。この部分は、操作は電源のオン・オフとモード、風量の切り替えに限られた、極めてシンプルな仕様だ。演出としては中心部がライトで光る仕組みで、室内の空気の状態に合わせて4段階で色が変化するようデザインされている。鈴木氏はそのこだわりと意図について次のように話した。

「家電では、一般的に本体操作や運転モードの表示は、ボタンや表示部などがそれぞれ別に配置されている製品が多くあります。これをPure A9では、ボタンや操作部、運転モード、空気の状態の表示をすべて上部パネルにまとめています。これにより、見た目をスッキリとさせるのはもちろん、すべてが1カ所に集約されているので操作性も向上します。上からアクセスができることで、屈んで表示を確認する必要もありません」

  • 操作・表示部は本体上面にあることで、外側からは家電っぽさを感じさせず、屈まず操作ができるといったメリットもある

  • ディスプレーはタッチ式。ボタンは電源とモード選択のみだが、マニュアルモードでは円の弧をなぞって風量を調整できる

日本でも2010年代に家庭への普及が一気に進んだ空気清浄機。以来、空気清浄機にデザイン性が求められるのは当たり前になり、優れたデザインの製品を目にする機会はどんどん増えている。その中でも、"空間との調和"を徹底的に追求した本製品のデザインは、見た目の親しみやすさとは裏腹に異色だ。Pure A9は空気清浄機に限らず、今後の家電製品のデザインの在り方や方向性を考える上で、なんらかのヒントとなる製品なのかもしれない。