シャークニンジャが最上位モデルとして6月に発売したスティッククリーナー「Shark CleanSense iQ/iQ+」(以下CleanSense iQ)シリーズ。同社は全米ナンバーワン掃除機ブランドとして、2018年に日本市場に本格参入し、同年にハンディ掃除機の「EVOPOWER」を発売。以来、スティッククリーナーのカテゴリーでは、同製品を祖とする「EVOPOWER SYSTEM」を中心に展開し、「軽さや使い勝手のよさ」で同ブランドにおいて"顔"とも言える人気商品となった。
一方、CleanSense iQは、「パワフルコードレス」として吸引力の高さでも訴求する新たなラインナップとして登場した。振り返ると、同社が日本初上陸時に第1弾として発売したのは、「EVOFLEX(エヴォフレックス)」という吸引力を謳った知る人ぞ知る製品だった。「EVOPOWER」シリーズ以外の大型のコードレスクリーナーを日本で発売するのはそれ以来のことだ。Sharkのシンボル的存在である「EVOPOWER SYSTEM」シリーズとは路線の異なる新製品を改めて発売した経緯と狙いについて、シャークニンジャ プロダクトマーケティング シニアマネージャー 日本製品開発担当のジャッキー・チャン氏は次のように説明した。
「EVOFLEXで日本市場に参入した当時、"パワフルコードレス"という形で戦いに挑みました。しかし、過去5年の間にトレンドはどんどん変わっていきました。もちろん消費者のニーズに基づいて変わった面もあれば、我々メーカー側の主導によって新たなニーズを作り出してきたところもあると思います。EVOPOWER SYSTEMという商品は、日本市場への参入時に投入したEVOFLEXでの学びから生まれました。それ以前には、使い勝手の良さと軽さ、吸引力という相反する要素を1台の掃除機でまとめた掃除機はおそらくなかったと思います。初めてそれを実現したのがEVOPOWER SYSTEMで、これを契機に軽さを追求するトレンドが切り開かれ、以降市場における大きなマジョリティの流れが形成されていきました。ただ、一方でコードレス掃除機にもとにかく吸引力を求める消費者も存在します。我々の調査ではコードレススティックにもパワーを求める層が約3割存在していました。過去4年の間にEVOFLEXがなくなり、Sharkではそうした消費者を置き去りにしてきてしまいました。市場においてもこのカテゴリーの製品にはあまり変化が起きておらず、空白の時代でした。しかし、Sharkとしては一度立ち止まってそうしたニーズにも再度しっかりと応える製品を提供していくべきだと判断し、パワフルな掃除機に対して消費者が持っている不満や充足できていないニーズにSharkならではの答えを出すというかたちで再度参入するに至りました。その結果、EVOFLEXの後継ではなく、今までとはまったく違った製品が生まれました」
「CleanSense iQ」は日本オリジナルモデル
CleanSense iQは本国アメリカでは未発売の完全日本オリジナル商品とのこと。ジャッキー氏によると、強いて言うなら米国で販売されている「Cordless DetectPro(以下DetectPro)」という製品が類似しており、これをベースに日本向けに仕様や機能の開発やカスタマイズが行われているという。
「"パワフルコードレス"のカテゴリーの中でSharkとして改めて製品を出そうとなって、米国で発売されている製品を見渡した際に、コンセプトが近いのがDetectProでした。この製品を元に日本向けに開発するにあたり、我々が出したリクエストは、吸引力をそのままに、軽くて小さいものを作ってほしいという単純明快なものでした。CleanSence iQに搭載されている4つのセンサーはDetectProと同じ技術を採用しています。本体を大型化して吸引力を高めることは簡単ですが、パワフルさを保ったままで減量することを目指しました。その結果、DetectProとは似ているけれども中身はまったく違うと言っていいほど別の製品になりました」
CleanSense iQの総重量は約2.2kg。約1.5~2.0㎏程度のEVOPOWER SYSTEMに比べると、もちろんサイズアップはしているものの、吸引力の高さと多彩な機能を搭載している割には意外に軽いと感じる人も多いだろう。その理由は重量バランスにある。
「CleanSenceiQの1つの特徴として、重量バランスに非常にこだわって設計していることも挙げられます。小型軽量化を図るために、ハンディ単体の手元の部分とノズルの部分の重さのバランスでも、ヘッドブラシやパイプを装着したスティックの状態の全体の上と下のバランスを見ても、非常に計算し尽くされています。EVOPOWER SYSTEMと比べて手に持った時の重さがCleanSence iQのほうが軽く感じたりします。絶対的な重さはありますが、軽く感じさせる設計がこの製品の一番の特徴です」
具体的には「わかりやすいのが、ハンディの部分だけを持った時に、持ち手が真ん中にあって、上側に少々重量のあるモーターとダストカップ、下側にバッテリーを配備しています。ハンディ時は1㎏ちょっとの重量ですが分配を上と下でほぼ1対1にすることで、手に持った時にちょうどいい落ち着きになるんです。スティック時も手元のバランスが約1.1kgで、ノズル+パイプで約1.1kgと、どちらかに偏ることなく同じように上下のバランスが一対一。車の例で言うと、走行性や快適さで定評のある自動車メーカーの車体の前後の重量配分が50対50なのですが、完全なるバランスを可能な限り求めて開発して実現できたのがCleanSence iQです」
4つのセンサーで日本の住宅に最適化
CleanSence iQに搭載されている「Smart iQ PRO」と呼ぶセンシング技術は4つのセンサーで構成されている。このうちの床の種類によってブラシの回転速度を自動調整する"フロアセンサー"はSharkで初めて搭載されたもの。また、壁を検知すると吸引力を最大2.5倍高めて(エコモード比)取り残しを防ぐ"エッジセンサー"は日本向け製品で今回初めて搭載された技術だが、いずれも日本の住宅事情に合わせた調整が行われているそうだ。
「日本の住宅にはフローリング、畳、カーペット、ラグ、タイルなどさまざまな床の種類がありますので、フロアセンサーはいずれに対してもしっかり反応できるようにキャリブレーションを行ったりしています。日本向けに開発すればアジアやその他のほとんどの国においても通用しますので、横展開でアジアパシフィック地域に適用できるような形で手直しをしています。エッジセンサーは、アメリカと日本とではかなり違うスペックになっています。アメリカでは壁から5センチぐらいでエッジセンサーが反応しますが、そのままだと、狭くて物が多い日本の住宅環境ではずっと稼働しっぱなしになってしまい、使用感を損なう恐れがありましたので、約2~2.5センチぐらいで反応するようにキャリブレーションをしています。これにより、意図的に近づけた時に初めて作動するようになって使い勝手が向上します」
ゴミの量に応じて吸引力を自動調整する「iQセンサー」は、EVOPOWER SYSTEMでも既に採用されていたものだが、CleanSense iQ用に調整が行われているという。
「EVOPOWER SYSTEM iQシリーズのiQセンサーは、ゴミの量に応じて吸引力とブラシローラーの回転を同時に上げ下げしています。しかし、それでは必要のないところでもブラシローラーの回転が上がってしまうので効率が悪く、あまり賢くありませんでした。音も大きくなってしまって消費者にとっては優しいものではなかったため、今回はiQセンサーとフロアセンサーに分けて個別制御することにしました。さらに賢くするためにエッジセンサーとライトセンサーも加えて、あわせて4つのセンサーで構成されることになりました」
日本市場で好評を得ているEVOPOWER SYSTEMとは異なるラインナップとして、日本向けに新たに開発されたCleanSense iQ。続く後編では、EVOPOWER SYSTEMで人気の自動ゴミ収集ドックやヘッドブラシの新シリーズならではのこだわり、外観デザインやカラバリについての秘話を紹介したい。
(後編に続く)