設置サイズは30センチ四方、高さがおよそ32センチという圧倒的なコンパクトさが目を惹く、シャープの衣類乾燥除湿機「CV-P60」(2022年春発売)。今回は、CV-P60のデザイン性を中心に、担当者に話を伺った。

  • シャープ 衣類乾燥除湿機 CV-P60 内部構造や設計を一から見直した、シャープの衣類乾燥除湿機「CV-P60」

    内部構造や設計を一から見直した、シャープの衣類乾燥除湿機「CV-P60」

だれでも一目で機能がわかるデザイン

CV-P60は、ひとり暮らしなど限られたスペースで使うことを想定して開発された。。収納せず出しっぱなしで使うことを前提に、設計や機構を一から見直して小型化を実現しただけでなく、外観のデザインにも強いこだわりが込められている。

実は、初期段階の製品コンセプトは「ズボラ干し」。デザインを担当した、シャープ Smart Appliances & Solutions 事業本部 国内デザインスタジオの松山なほ氏は、次のように話した。

「『片付けるのがめんどう』というニーズにも応えるものとして、置くだけで簡単に使えて、出しっぱなしにしておくことを前提としました。デザイン上で意識したのは、誰でも簡単に使い方がわかること。CV-P60の機能はシンプルですが、衣類乾燥除湿機としては設置方法がユニークです。そのため、風が天面から真上に出ることをわかりやすくするデザインを考えました」(松山氏)

具体的には、「天面の放射状にルーバーが広がっているデザイン」が挙げられる。松山氏は、「下から上に風が出ることをイメージしやすいように、側面はホワイトにして、天面はライトグレーに色を分けることで、天面がより強調して見えるようにしています」とも付け加えた。

  • 初期段階で検討したデザイン案の一例

    初期段階で検討したデザイン案の一例

天面の中央にある操作部は、3つのボタンに集約されている。松山氏は、「最初はボタンがもう少し多かったのですが、その上に洗濯物を吊るすのなら、要素はできるだけ少ないほうがいいと極力減らしました。LEDの表示色も操作部の色と同化させ、スッキリとした見た目にしています」と明かす。

  • 操作部の検討の変遷

    操作部の変遷。だんだんとシンプルになっていったのがわかる

  • 「要素はできるだけ少ない方がいい」と、LEDの表示色は操作部と同化させた配色を採用

    「要素はできるだけ少ない方がいい」と、LEDの表示色は操作部と同化させた配色を採用

カラーバリエーションはホワイト1色のみ。松山氏は「弊社のプラズマクラスター製品は清潔さを大事にしているため、空調製品をはじめ白が基本色となっています」と説明。

そして、「デザイン案には、タンク部分のみ色を変えたツートンカラーの案もありました。ですが、弊社としてはデシカント式の衣類乾燥除湿機は数十年ぶりの発売です。形状でオリジナリティを出しているので、カラーは万人受けするものを選びました」と補足した。

細やかな工夫を積み上げ、インテリアになじむ外観に

清潔さを表現するため、質感やディティールの加工にも力を入れた。

「表面にキレイなシボを入れ、側面とルーバーはなめらかな曲線形状として、清潔感のある印象に仕上げています。また、吹き出し口が真っ黒な穴になっていては清潔感を損なうと考え、内部パーツの色にもこだわりました。ファンの色や周囲のパーツの色は、同じグレーでもトーンを変えて、自然な影色に見えるように調整しています」(松山氏)

  • 吹き出し口の内部パーツは、同じグレーでも自然なグラデーションになるようにトーンを変えた色になっている

    吹き出し口の内部パーツは、同じグレーでも自然なグラデーションになるようにトーンを変えた色になっている

リビングなどに置きっぱなしにすることを想定しているため、空間への調和は重要になる。

「コンパクトに見えるよう側面パネル全体に緩やかな丸みをつけ、土台部分は軽やかに見せるために逆台形にするなどして圧迫感のない設計・デザインを目指しました」(松山氏)

空調家電のひとつとして、お手入れのしやすさにも注力した。製品企画担当のシャープ Smart Appliances & Solutions 事業本部 PCI事業部 商品企画部 主任の松村勇樹氏は、排水タンクの設計について、次のように明かした。

「高さを抑えた製品のため、排水タンクがどうしても浅くなります。中の水がこぼれやすいという難点を、タンクにフタをして、端の部分に排水口を設けて解消しました。また、タンク内には満水を知らせるための水位検知センサーも搭載しているのですが、センサーが機能するギリギリのラインを狙って設定しています」(松村氏)

  • 本体の高さを抑えたため水タンクが浅型になる弱点も。これは「技アリ」な工夫で解消

    本体の高さを抑えたため水タンクが浅型になる弱点も。これは「技アリ」な工夫で解消

松山氏は、デザインによって構造上の課題を解決した部分もあると語った。

「タンク内の水量を外側から確認する窓も設けたのですが、両サイドに吸気口があるCV-P60は、構造上、従来の位置(タンクの側面)に窓を設けることができません。かつ、タンク自体も小さいので相対的に窓が小さくなり、視認性がよくありませんでした。

これらの問題を解決するため、窓の内側に細かい凹凸のシボが入った板を使用して、できるだけしっかり水位が見えるよう工夫しました。ほかにも、ホコリなどの侵入を防ぐ左右2カ所のプレフィルターは、実は左右関係なくどちら側にもはまる形状です。プレフィルターをお手入れしたあと、左右を気にせず本体に装着できるので、ユーザーの手間を減らしています」(松山氏)

ひと昔前まで、衣類乾燥除湿機といえば、大型で無骨な製品がほとんどだった。近年のライフスタイルの変化に伴う需要増により、消費者の選択肢が広がりつつあるのはうれしい限り。中でもCV-P60には、衣類乾燥除湿機の設置スタイルや使い方をも変える、市場の風雲児となることを期待したい。