ロンドンに拠点を置くデジタル機器メーカーのNothingが、Headphone (a)を発表した。

同社のオーバーイヤーヘッドホンのラインアップには、既存製品としてハイエンドのHeadphone (1)とローエンドのCMF Headphone Proがあるが、今回の製品は、その間に割って入るポジションだ。価格は27,800円となっている。

  • Headphone (1)とNothingのスマートフォン「Phone(3)」

    Headphone (1)とNothingのスマートフォン「Phone(3)」

Nothingが自力で作り上げた音を奏でるヘッドホン

一般販売は3月13日で、すでに事前予約受付が始まっている。Headphone (1)との価格差は6,000円なので(編注:Headphone (1)の価格は通常39,800円だが、ここでは3月14日までのホワイトデーセール価格となる33,800円との差額で算出)、性能的に大きく劣るようなイメージは皆無だ。操作ボタンの数も機能も(1)を踏襲している。

そのポップなデザインと、ピンク、イエロー、ホワイト、ブラックのカラバリ4色展開は、遊び心をくすぐる面持ちだ。特に、イエローは日本での限定版で、この色だけが4月中に追加で発売される。

ハイエンドのHeadphone (1)はイギリスの老舗オーディオブランドKEFとの共同設計だった。だが、今回は、Nothingだけでつくり上げている。チタンコーティングされた40ミリの振動板を採用し、表現力の豊かなサウンドを奏でる。特に、次世代型のマグネットとボイスコイルシステムを持つドライバーが低音域を強力にサポートする。

実際に、発売前の製品をしばらく楽しませてもらった。音の印象としてはある種のまとまり感がある。全部のサウンドが面として耳に届くイメージで、低域、中域、高域がバラバラで奏でられるような尖った印象がない。緊張感がないともいえるが、それだけ安心して聞いていられるし疲れない。

  • 一目でNothingとわかる独特のデザインは健在。カラーはピンク、イエロー、ホワイト、ブラックの4色だ

    一目でNothingとわかる独特のデザインは健在。カラーはピンク、イエロー、ホワイト、ブラックの4色だ

(1)より(a)こそ本命? フラグシップへの布石か

Nothingが2021年の創業後、最初に世に出した製品は完全ワイヤレスイヤホンのEar(1)だった。つまり、同社の最初の製品はオーディオ製品だったのだ。今はPhoneシリーズとしてPhone(3)、Phone(4a)、(4a Pro)などのスマホも製品ラインアップにある。これらの製品の特徴的なデザインは、一目でNothingだとわかるくらいに統一感がある。

そんなNothingのヘッドホンだが、今回の音作りの方向性を体験してみて思うのは、Nothingのオーディオ製品の関係者が、Nothingとしてやりたかったのは、もしかしたらKEFとのコラボで仕上げた(1)の路線ではなく、今回の(a)の路線だったのではないかと思ったりもする。そういう意味では、この方向性は、ずっと先にあるフラグシップ更新への布石のようにも感じる。

コーデックも、AAC、SBCに加えてLDACが使える。申し分ない。まあ、音作りの方針については人それぞれの好みもあるのでなんともいえない。でも期待を裏切るようなことはないと思う。一般的なオーバーイヤー密閉型ヘッドホンとしてはやや重めの310gなのだが、締め付けや頭頂部のクッションがうまく機能しているのか、数字から感じるほどは重くない。そのあたりも計算し尽くされている。

  • いやパッド付近には機械式のボタン、ローラー、パドルなどを装備し一通りの操作が直感的にできるようになっている

    いやパッド付近には機械式のボタン、ローラー、パドルなどを装備し一通りの操作が直感的にできるようになっている

1回の充電で135時間、規格外のスタミナにも注目

バッテリも大容量で、135時間という驚異的な再生時間だ。アクティブノイズキャンセルを使っても一回の充電で75時間使える。また、5分間の高速充電で最大8時間再生ができるというのも心強い。

135時間も聴き続けることはないと思うかもしれない。単純計算でも1日2時間使って約70日だ。それだけの期間充電しないでいられるのだ。

しかも電子機器のバッテリは消耗品だ。1回の充電で135時間使えたヘッドホンも、数年使っていれば駆動時間は半分になってしまう可能性もある。でも、半分になったところで、70時間近く使えることになる。それなら十分に実用範囲ではないだろうか。

消耗品としてのバッテリが内蔵されたガジェット類が、機器としての寿命より先に内蔵されたバッテリが寿命を迎えて使えなくなるというのは残念だ。だが、このくらい長時間使えるなら、劣化していったとしても、バッテリが本当に使いものにならないくらいになるまでは、相当の猶予がある。それこそ外装の劣化などの方が先に気になってくるにちがいない。

ワイヤレスイヤホンの機動性も捨てがたいものがあるが、オーバーイヤーヘッドホンで推しの音楽をしっかりと楽しむのもいい。最近は、電車の中などでオーバーイヤーヘッドホンを装着している若い人たちを多く見かけるようになった。ヘッドホンをつけていることをあえて主張したいという意志の現れのようにも思う。