7月20日に発生したJR東日本山手線電車の発火事故において、そのバッテリーがティ・アール・エイの「cheero Flat 10000mAh」ということがわかった。事故後、同社が新宿消防署で発火したバッテリーの現物を確認したという(関連リリース)。
この製品は従来と異なる特定の製造委託先で製造したもので、その他の同社製品はその委託先とは異なる工場で製造されているため、安全性には問題ないとしている。
JR東の山手線でリコール未回収バッテリーが発火
このバッテリーは、2020年4月に発売され、2023年からリコール対象となっている製品だが、全数のリコールには届いていない。リコール原因は、バッテリー本体を充電中に発火する重大製品事故発生を受け止めてのことだ(関連リリース)。詳しい事故件数については消費者庁から公表されている。もし手元にこのバッテリーがあれば回収受付フォームで申し込み、回収用キットを送ってもらって返送するようにしてほしい。
今回は、たまたまこの製品だったが、日常的に使っているバッテリーが、どんなブランドでも安全とは限らない。これは深刻だ。加えて、毎日のように持ち歩き、時には、内部的な実装に影響を与えるような衝撃が加わる機会にも遭遇しているかもしれない。
手からスルリと滑り落ちて、コンクリートの上に落下したようなバッテリーは、本当に安全性が担保できるかどうかというと決してそうではないわけだ。見かけも機能も問題がないように感じても、見えない内部でトラブルが発生している可能性があり、それが発火事故を起こし、火災などにつながるかもしれない。
使用中の発熱・変形に注意、消防庁が教えるバッテリー火災の前兆
ちょっと前に、国土交通省の航空局安全部安全政策課航空安全推進室からモバイルバッテリーの航空機内での取扱いが変わる旨の協力要請が出た件について書いた(関連記事)。これは航空機内でモバイルバッテリーを座席上の収納棚に収納せず、使用時には常に状態が確認できるようにすることを求めるものだ。
ANAやJALといった航空会社は、その要請にしたがい乗客に対応を求めている。ただ、この対応以降に3度飛行機に乗ったが、機内できちんとアナウンスして注意喚起していたのは一度だけだった。また、空港の保安検査で注意喚起が行われることもなかった。
今回の事故では、山手線電車に乗っていた乗客がケガをしている。東京消防庁では、
- 熱のこもりやすい場所で使用している
- 膨らみ、変形している
- 過去に落下させたことがある
- 充電中や使用中に発熱することがある
- 充電できないなどの不具合がある
といった場合は火災の危険があるとしている。
目視できる場所で充電を。モバイルバッテリーを安全に使う心得
同庁によればモバイルバッテリーの事故発生状況は、他の機器に比べてダントツに多い。事故のうち約6割が充電中に発生しているという。
同庁は「最も多いのは『充電方法誤り(正規品以外で充電)』です。非充電中では、『分解・廃棄・バッテリー交換』により多く発生しています。また、『外部衝撃(落下)』によるものは、充電の有無にかかわらず発生しています」とアナウンス、注意を要するように訴えている。
われわれエンドユーザーができることとしては、衝撃を与えてしまったなと思ったモバイルバッテリーは使い続けないで正しい方法で破棄すること。
また、目の届く範囲において充電するといった配慮をしたほうがいい。少なくとも、充電したまま放置して外出するようなことはやめたほうがよさそうだ。布団の中で充電しながら寝落ちするといったことも避けたい。
モバイルバッテリーを愛用するなら、常にそこが航空機内だと思って配慮するといったくらいでちょうどいいのかもしれない。