レノボが「ThinkPad X1 Nano」を発表、そのコンセプトとして「今、必要な機能を強く軽い筐体に」をアピールした。
「Beforeコロナ」から、「With、Afterコロナ」の時代に世の中が推移する中で、オフィスへの出勤前提は在宅やオフィス以外での勤務が当たり前となり、対面のコミュニケーションでなければ失礼という常識は社内外問わずにオンラインに移行、そして、時給ベースの評価は成果ベースの評価にとってかわられるとレノボはいう。働き方の常識は変化必至であるということだ。
重くて遅い、業務用ノートPCの不満を解消
この春、緊急事態宣言が発令された当時、人々の移動が制限され、ステイホーム、ワークフロムホームが求められた。とにもかくにも背に腹は代えられないかたちで、企業は自宅で仕事ができるように従業員にパソコンを配布した。
ところが、配布されたパソコンが欲しいパソコンではなかったという事実もあぶり出されたという。
従業員満足度の高い会社はパフォーマンスが高いのだが、テレワークの方が生産性が高いというのは19%にすぎなかったらしい(第3回レノボテレワーク調査結果)。
その背景のひとつとして、業務で使用しているノートパソコンへの不満があり、要望としては処理速度、バッテリー駆動時間、パソコンの軽さが続く。たとえばこの状況下で頻繁に使われるようになったTeamsやZoomといったアプリが、想像以上にパソコンの処理性能を求めるというのも不満を感じる原因のひとつになっているようだ。
会社のオフィスで、大きなモニタを使ってOfficeアプリだけを使っていた環境に比べて、モバイルノートパソコンの作業環境は貧弱だ。モバイルは常に何かをガマンしなければならないからだ。それをなんらかの方法でカバーする必要があるが、それができていなかったということになる。
そんなわけで、この春の需要不足のときに間に合わせで適当なノートパソコンを配布したシステム部門が、新たにまともなパソコンを調達することを考え始めているともいう。
さらに、テレワーク時の作業場所は、たとえそれが自宅での作業であっても、ダイニングテーブルやリビングの椅子、ソファといった場所で行われ、立派な書斎や独立した作業部屋を確保できる人よりもそっちの“間に合わせ”環境の方が多いともいう。だからこそ、最小構成時で907グラムという、ThinkPad史上最軽量のクラムシェルノートブックが必要だったというのがレノボの言い分だ。
実はみんな移動したがっているのではないか
モバイルパソコンをごく自然に受け入れてきたユーザー層は、かなり先進的なユーザー層としてパソコンシーンを牽引してきた。モバイルでなければ仕事にならないようなムードもあったように思う。
だが、実際にはパソコンを企業オフィスのデスクで使うというのが大多数の当たり前だった。会社からパソコンを持ち出すためには、何人もの関係筋のハンコが必要だったりもしたわけだ。それがついこのあいだまでの本当の当たり前だ。それを受け入れ、当然だという意識を持っていたユーザー層が、コロナによって初めてのモバイルにチャレンジする。そして、そこで、さまざまな問題や困りごとに直面するわけだ。
コロナ禍は、またもや猛威を振るい始めているが、多くの市民はその戦禍が終息することを心から願っている。だが、仮に、コロナの猛威が衰えたとしても、もう絶対に元の時代に戻らないとレノボはいう。
実はみんな移動したがっているのではないか、以前のように人と頻繁に会ってコミュニケーションしたがっているのではないかという予測もできるのだが、それよりもとにかく働き方は多様化する。だからこそ、それにあわせたツールが必要だ。もちろん、多少は移動が戻るかもしれないが、そういう新しい時代に向けたパソコンこそが必要だとレノボでは考える。
今こそ、モバイルが新しい当たり前になる
うがった見方をすれば、移動が制限され、ステイホームで仕事をする状況で、13型のコンパクトで軽量なパソコンが本当に役にたつのかという疑問もある。本当に必要なのは17型を超えるような大きなスクリーンなのに簡単に取り回しができる軽量パソコンだったりはしないか。
あるいは、自宅には普通にWi-Fiがあるのだから、5G LTEを内蔵する必要があるのかとか、いつでも自在に電源が確保できるような場所でしか仕事をしないのに、バッテリ駆動時間の確保はそれほど優先されるべきことなのだろうかといった疑問もある。
だが、レノボがいうには今こそ、モバイルが新しい当たり前になるという。宅内での移動でのモビリティ、そして、セキュリティや集合住宅における固定インターネットの帯域不足などを考慮しての5G LTEなどは、今こそ求められる装備だと……。
“新しい当たり前”としてのモビリティ。この先の未来を豊かなものにするために、じっくりと考える必要がありそうだ。