ケータイ電話事業者各社のテザリング有料化が話題になっている。
たとえばauは、auピタットプラン、auフラットプラン20/30、データ定額20/30について、2018年3月末までのテザリングオプション無料キャンペーンを終了し、500円が徴収されるようになる。また、ソフトバンクはギガモンスター データ定額20GB/30GBについて、2018年5月31日以降500円を徴収する。ドコモについては当面有料化の予定がないともいう。
auとソフトバンクで不可思議なのはauのデータ定額20/30、ソフトバンクのギガモンスター データ定額20GB/30GBと、比較的大容量のプランが有料化の対象となっている点だ。
買った「ギガ」は誰のもの?
そもそもテザリングが有料というのはおかしい、という論調もある。
卑近な例で考えてみる。個人的によく訪れる釜飯屋がある。釜飯1人前を注文すると、1人で食べるにはちょっと多すぎる。かといって2人で食べるとちょっと物足りない。どうしたものかといつも思っていたが、ある日、店の女将が教えてくれたのだ。2人の場合は大盛りを頼んで2人で分ければよいと。もちろん2人前を頼むよりも安上がりであり、それは店の売上げを下げてしまう。でも、それを許すというのだ。こういうのがおもてなしというもんじゃないだろうか。
テザリングってそういうもんじゃないかと思う。メインで使っているデバイスで思う存分データ通信をしたいのはもちろん、複数のデバイスで使いたいから念のためにデータ容量が多めのプランを選んでおくわけだ。もちろん使わないで余ってもそれはそれで自己責任だ。
個人的にはドコモの20GBのプランを契約しているが、好きなときにテザリングしていても、通常月の消費量は3GB程度しかない。毎月、17GBを捨てていることになる。余った分は翌月に繰り越せるが、翌月に使うのは当月分からなので、ほぼ確実に余った分を捨てることになる。本当はここも解せないが、当月分を先につかい、繰り越し分はそのあとという建て付けは、大手各社の場合同じだ。
自分が買ったデータ容量なのだから、それをどんな方法で使おうと関係ないじゃないかとユーザーが思うのは当たり前のことだと思う。
「見かけの価格」は安くなるけれど
キャリア各社の肩をもつように聞こえるかもしれないが、こうした事業に付随するキャンペーンは日付を明確に定めずに、ズルズルと延長していると関係省庁からの注意を受けることもあるのだという。
しかし、そもそも"無料キャンペーン"という時点でおかしいことを、もっと追求しておくべきだったと後悔しきりだ。ちなみにドコモは2017年7月31日付けで、大容量データプランであるウルトラパックのテザリング定額料が1,000円のところ、2018年3月末までの無料キャンペーンを4月以降も終了期限を定めずに延長することを、早々に表明している。
いずれにしても大容量プランの場合のみテザリングが有料化されるというのは、見かけの価格を安く見せるために大容量プランを用意してみたものの、そんなに使うユーザーはそれほど多くはないだろうという読みがあったと取られても仕方がない。契約したすべてのユーザーが契約データ容量を使い切ることはありえないという前提の上で価格を設定しサービスを提供していると考えているのかもしれない。
仮に、すべてのユーザーがデータ容量を使い切ることを前提に冗長な設備を用意した場合、とても、現行料金ではサービスを提供できないだろう。キャンペーン期間中に、ユーザーの消費量動向を検討し、テザリング料金を徴収するしかないという判断となったのか、それともキャンペーンをズルズルと延長し続けるわけにはいかないという判断からなのか、その実状について各社ともになかなか事情を教えてもらえない。
料金プランの値上げではダメなのか
今、PCなどを購入しようとしても、SIMを装着して単独で通信ができる製品はまだまだ少ない。あったとしても数万円の追加投資が必要だ。あらゆるデバイスが単独で通信できるようになるまでは、まだちょっと時間がかかるだろう。それまでは、テザリングは必要悪としてないと困る。
こうした世論があることは、各社ともにわかっているにちがいない。ただ、テザリングをオプションとして提供することの正当性を証明するのは難しいだろう。しかも大容量プランが狙い撃ちされているのだ。
ならばテザリングオプションは無料にする代わりに、データ定額料を同額値上げするという方法はとれなかったのか。そのほうがずっとリーズナブルだ。企業がユーザーを騙すというと聞こえが悪いかもしれないが、今回の件については、その舞台裏が見え隠れしていて気分が悪い。今回の施策だけは許すべきではないと思う。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)