IT化を実現させるためには、IT化の目的を明確にし、顧客目線を持っていて熱量のある社員をIT化担当者に指名することが必要不可欠です。その次に、実際にIT化に向けての作業を行っていきます。IT化を進めていくにあたって具体的にどのようにやるのかというと、やることはいたってシンプルです。
IT化を実現させるためには、IT化の目的を明確にし、顧客目線を持っていて熱量のある社員をIT化担当者に指名することが必要不可欠です。その次に、実際にIT化に向けての作業を行っていきます。IT化を進めていくにあたって具体的にどのようにやるのかというと、やることはいたってシンプルです。
1.業務の流れを把握し、分解する
2.IT化で解決する課題を見つける
3.IT化の予算を確保する
この3点をしっかりと押させておけば、不要なシステムが作られたり、ムダな費用がかかったりということは起こりません。今回は、この3つのステップについて解説をしていきます。
業務の流れを把握し、分解する
IT化を実現するためには、まず既存の業務がどのように流れているのか、つまり業務フローを把握しなければいけません。IT化は業務課題を解決するための「手段」ですので、その手段を使う所を見極める材料として業務フローを把握することが必要になります。
営業部であれば、誰がどのような顧客に対して、どういった方法で見積書を作って提出し、受注後は社内にどのような手続きで処理されているのかというのを把握します。
そして、次に把握した業務フローを細かく分解していきます。細かく分解をしないと個々の業務に対する問題点を見つけづらくなってしまうからです。
1つの受注業務の中で「見積書を作成する」という業務を「お客様からの問い合わせを受ける」、「見積書を作成する」と2つに分解をすることによって「お客様からの問い合わせ」から「メールやFAXなど多岐に渡っていることで問い合わせの見落としが発生している」という課題を見つけることができ、そこに対してITを活用した解決を図ることができるようになります。
業務を把握して分解するためには、IT化担当者が直接現場にいき、現場担当者に直接ヒアリングをしましょう。業務マニュアルがあったとしても現場ではかならずマニュアルには載っていない現場ルールでの作業が存在しており、それは現場担当者に聞かなければ把握することができません。
忙しい日々の業務の中でヒアリングをするので、現場担当者からは嫌がられるかもしれませんが、IT化をすることで現場にどのようなメリットあるのかを細かく伝え、働きかけていきます。熱量を持って働きかければ、現場も協力をしてくれるはずです。
IT化で解決する課題をみつける
業務フローを把握し、業務を細かく分解すると課題を見つけるための材料が揃ったことになります。分解した業務に対してどのような課題があるのかを、業務を分解したときと同様に現場からしっかりヒアリングをしていきます。
この時のヒアリング方法にもポイントがあります。「なにか作業で困っていることありませんか?」と聞くのではなく、「今行っている作業の中で“時間がかかりすぎている”と感じる作業はどこですか?」、「2つのシステムに同じデータを転記しているような作業はありませんか?」と具体的な業務についての話がでてくるような聞き方をしていきます。
ひとつ具体的な課題がでてきて、ヒアリングされている現場担当者もそこが課題だと認識をすると、「そういえば、あの業務もこんなところに困ってるな」と課題を見つけるマインドになり、他の業務課題についても話してくれるようになります。
さらに、現場から出た課題にだけ目を向けず、IT化担当者自身が客観的な視点で現場をみて、課題を探すことも重要です。「手間」や「面倒」というのは作業をしている人の主観なので、客観的に見たら改善の余地がある業務でも現場からすると改善点として認識していないケースがあります。そういった課題を見つけるのもIT化担当者の役割になるのです。
課題の抽出ができたら、その中からIT化で解决できる課題を選び出していきます。すべての課題をITで解決するのではなく、ITで解决できる課題は何かを考えるのです。
「FAXで受け付けた注文書を販売管理システムに登録するのに時間がかかり、登録ミスも発生する」という課題があった場合、すべてをIT化で解決しようとすると「FAXを自動で受信するシステムを作り、FAX内容をOCRで読み取り、それを販売管理システムに入れられるようデータ連携するプログラムを開発する」といった発想になります。しかし、その前に「そもそもFAXによる注文受付が必要なのか」という点を考えることが重要です。調べていくとFAXによる注文は月に10件以下で、しかも発注元は2~3社のみだとしたら、FAX注文をやめてもらい、他の発注元も使っているインターネット注文に誘導するという選択肢をとることができます。
IT化ありきで課題の解決策を考えていくと結果、ムダな費用をかけて、投資対効果のないシステムが生まれてしまいます。
IT化の予算を確保する
課題に対してIT化で解決する手段が決まったら、次にIT化の予算を確保しますが、これは経営者の役割になります。予算を決める際に経営者はシステム導入を「費用」ではなく「投資」の視点で考える必要があります。
システム導入には「会計システム」や「労務システム」など業務を回す上で入れなければいけない「守りのシステム」と、業務改善を進め会社の業績アップや就業体制の改善を実現するために導入する「攻めのシステム」があります。
どうしても入れなければいけない「守りのシステム」に対しては、極力費用を抑えて導入するという考えは分かりますが、業務改善のための「攻めのシステム」の導入の際に費用を最重要で考えてしまうと本当に必要なシステムが作れず、解決すべき課題が解決できなかったという結果になりかねません。もちろん、ムダな出費を避けるに越したことはありませんが、経営者は「会社の未来を良くするためにお金を使う」投資の視点で予算を確保することが重要です。
さらに予算を決める際にシステム導入時の予算だけでなく、システム導入後の運用についての予算も確保しましょう。システム導入は完成して終わりではなく、完成し、使い始めてからがスタートになります。システム導入後に現場から導入時には予想していなかった新たな課題は必ずでてきます。その時にシステムを改修する予算を確保していなければ、せっかく導入したシステムが結果、使われないシステムへのなっていってしまいます。また、事業拡大や事業内容自体の変更があった際に、システムへの機能追加が必要になることも十分考えられます。そうした変化にも対応できるよう「導入後の予算」を確保してくことが大切になります。
社内の業務改善を実現させるためにはやらなければいけないことがたくさんあることは間違いありません。しかし、今回説明した3つのポイントをIT化担当者、経営者がしっかりと認識しておけば、業務改善に失敗する可能性を限りなく低くすることができるでしょう。
著者・四宮 靖隆(しのみや・やすたか)
株式会社 ジョイゾー 代表取締役社長
1976年生まれ。1999年、新卒でシステム開発会社に入社。社内インフラ業務に従事し、基礎知識を得た後、2003年に独立系SIerに転職。インフラの知識を活かしてサイボウズ社『ガルーン』の構築や移行の案件に多く携わる。その後、個人事業主を経て2010年に株式会社ジョイゾーを設立。『kintone』がリリースされた2011年以降は、『kintone』案件をメインビジネスに据え、今日まで成長を続けてきた。『kintone』元エバンジェリスト。著書に「御社にそのシステムは不要です」(あさ出版)がある。