Squareが開発を発表していたAndroidスマートフォンを決済端末として利用する「Tap to Pay on Android」の提供が開始されました。手持ちのAndroidスマートフォンだけでSquareの決済サービスを利用できるようになるため、より気軽にキャッシュレス決済が利用できます。
すでにこの連載の第21回でもご紹介しているサービスですが、このたび正式発表となりましたので、実際の現場で利用されているシーンをチェックしてきました。
気軽にサブ決済端末
「Tap to Pay on Android」は、SquareのmPOSアプリを導入したAndroidスマホのNFCリーダーを使って、クレジットカードのタッチ決済を利用できるようにするサービスです。単体でもSquareターミナルなどのmPOSのサブ端末として利用することもできます。
これが実際にリアルな現場で利用されたのが、女性事業主による実店舗出店などが行われたSquare主催イベント「Her Market」です。東京・渋谷のDAIKANYAMA T-SITE GARDEN GALLERYで開催されたこのイベントでは、女性事業主によるポップアップストア6店舗が出店され、Squareターミナルでの決済に加え、一部店舗で「Tap to Pay on Android」が利用できるようになっていました。
現場においてはSquareターミナルがメインで、あくまでTap to Payはオプションという位置づけでした。ただ、使っているショップの人に話を聞くと、Tap to Payも使い勝手には問題ない模様。実際に試してみても速度は問題なさそうでしたが、やはり「Androidの機種ごとにリーダーの位置が分かりづらい」問題はありそうでした。店舗のスタッフも、どの位置にカードを合わせればいいかで迷っていたようです。
とはいえ、初めてSquareターミナルを使ったという店舗もあって、SquareのmPOSの使い勝手自体は良好という感想だったようです。その意味では、同じUIで使える「Tap to Pay on Android」は、Squareターミナルなどとの組み合わせでも使いやすそうです。
例えば、母艦となるSquareターミナルなどがあって普段はそこで決済をしているけれど、並んでいる人が増えたので会計を増やすためにTap to Payを使う……というシチュエーションが考えられます。普段は使わなくても、いざという時に取り出せばレジを簡単に増やせるわけです。
飲食店で新たにテーブル会計を導入したいということになった場合も、端末を増やすことなく、手元の余っているAndroid端末を使えるわけです。とはいえ、私用の端末を使うのはよくないので、「店舗所有のAndroid端末が余っている」か、少なくとも「店主所有のAndroid端末がある」という状況が必要です。
日本の場合、2年間の分割払いを利用し、期間後に端末をキャリアに返却するという残価設定型の購入方法が増えているので、手元に古い端末が残っていない人もいるかもしれませんが、一般的には機種変更のタイミングが3~4年。それを返却せずに持ち続けている人も多いでしょうから、そうした余っているスマートフォンがあれば活用できそうです。
FeliCa対応端末である必要はないので、2~3万円程度で入手できるベーシッククラスのAndroidスマートフォンで十分なはずです。ただ、サブの決済端末にする場合はともかく、メインの決済端末とする場合は、導入するアプリは最小限にしてできるだけ決済に集中させた方がいいでしょう。なお、Tap to PayではクレジットカードだけでなくPayPayの決済も受け付けられます。
業務用のスマートフォンをスタッフに配布してデリバリーなどをしている店舗にもメリットは大きいでしょう。配達に使うスマートフォンがそのまま決済端末になり、配達時のキャッシュレス決済が可能になります。
6月からは「Tap to Pay on Android」の試用プログラムが開始されていて、参加店舗からは「設定が簡単で便利だ」という声が多かったそうです。Squareターミナルなどの母艦とTap to Payは、同じ店舗のアカウントでログインするはずなので、どの端末で決済してもデータは統合されます。端末がスマートフォンなので、そのままモバイルデータ通信を使った屋外での決済ができる点も強みです。もちろん、余った端末を店内だけで使うのであれば、SIMなしのWi-Fi運用でも問題ないでしょう。
フライトシステムコンサルティングの「Tapion」のように、交通系ICやiD/QUICPayにも対応するTap to Payサービスもあり、幅広い決済に対応したい場合は有効。すでにSquareを導入している店舗であれば、「Tap to Pay on Android」の導入はメリットがありそうです。
こうしたTap to Payも、複数のサービスが広がることで店舗ごとのニーズに応えられるようになってきました。日本の場合は、「余っているiPhone」の方が多そうなので、AppleのNFC開放によって、iPhone対応のTap to Payが登場すれば、さらに普及が進みそうです。Squareはすでに米国ではiPhone向けにもサービスを提供していて、日本でもAppleがNFCを開放すればすぐに展開できそうな点もポイントです。
もともと、こうした「スマホの決済端末化」というのは、新興国向けのソリューションとして考えられていましたが、日本のようにハンディの決済端末が普及していない国だと、サブ端末の追加やテーブル会計の追加に応えられるのでニーズがありそうです。
コロナ禍を経て、レジ会計で混み合うよりはテーブル会計で個別にしたいというニーズもあるでしょうし、レジで長時間並ばせるよりは決済端末を増やして会計をスピーディに進めたいというニーズも当然あるでしょう。アプリを起動していなければ決済端末としてではなくスマートフォンとして業務連絡などにも使えるので、デリバリーにも向いています。
「Tap to Pay on Android」で決済端末が増えたからといって店舗側のコストが変わるわけでもなく、これまでSquare POSレジアプリを使っていればそのままデータは共有化されますし、Square予約/Square請求書アプリとも連携するなど、Tap to Pay単体ではなく、トータルソリューションとして展開できる点は、Squareの強みといえそうです。