Azureで利用可能なさまざまなサービスは、Azureのポータルを利用して作成、構成、および管理することができますが。今回はポータル以外に準備しておきたいAzure関連のツールについて説明します。

クラウドアプリ開発ツール

アプリを開発してAzureのPaaS(Platform as a Service)にデプロイすることを予定している場合は、アプリ開発のための統合開発環境を準備しましょう。この連載の第3回第4回で触れたように、Azureではマイクロソフトの技術に限定されないオープンな技術を利用できます。

また、Visual Studioだけでなく、Eclipse、IntelliJ、Mavenなど使い慣れた統合開発環境(Integrated Development Environment:IDE)を利用して、.NETはもちろん、Java、Node、Python、Ruby、PHPのアプリを開発してAzureのPaaSにデプロイすることができます。

Visual Studioには現在、WindowsまたはMac用のVisual Studio製品、WindowsまたはMac用のVisual Studio Community(無料)があります。また、クロスプラットフォーム対応でオープンソースのVisual Studio Code(無料)も利用可能です。Visual Studioやその他のプラットフォーム向けのAzure SDKの入手、および開発言語のサポートについては、以下のサイトで確認してください。

  • Azure“超”入門 第7回

    Visual Studio 2015/2017とAzure SDKでクラウドアプリを開発する。そのほかのプラットフォームや統合開発環境にも対応

MSDNサブスクリプションを契約している場合は、Azure MarketplaceからVisual Studio Enterprise 2017とAzure SDKがインストール済みのWindows 10 Enterprise N(x64)(7月現在はバージョン1709)テンプレートを利用して、開発およびテスト用にWindows 10 Enterprise NのAzure仮想マシンをAzureのIaaS(Infrastructure as a Service)上にデプロイすることができます。

  • Azure“超”入門 第7回

    MSDNサブスクリプション付きのVisual Studioを利用できる場合、Visual Studio 2017とAzure SDKが構成済みのWindows 10 Enterprise N(x64)テンプレートを利用して、開発およびテスト環境をAzure仮想マシンとしてデプロイして利用できる

WindowsとVisual Studioは英語版の環境ですが、Windowsの表示言語およびシステムロケールについては日本語(ja-jp)言語パックを追加することで切り替えることができます(日本語化の方法については別の回に説明します)。

Visual Studioを含まないWindows 10 Enterprise Nテンプレートを使ってデプロイして、MSDNサブスクリプションで提供される日本語版のVisual Studio製品をインストールすることも可能です。

Azure PowerShellとAzure CLI

手元のコンピューター環境にインストールして利用するAzureのコマンドラインツールとして、Windows PowerShell用の「Azure PowerShell」モジュールおよび「Azure CLI 2.0」(CLIはCommand Line Interfaceの略)があります。これらは、Windowsはもちろん、LinuxやmacOSにインストールして利用することが可能です。

Windowsの場合、Azure PowerShellとAzure CLI 2.0のどちらも、Windowsインストーラーパッケージ(.msi)のインストールで簡単に導入できますが、Azure PowerShellについてはの場合はPowerShell 5.0(Windows 10初期リリースの標準、現在のWindows 10の標準は5.1)から利用可能になったPowerShellGet機能を利用したインストールや更新が簡単です(画面3)。各プラットフォームへのインストール方法や更新方法については、以下のドキュメントで詳しく説明されています。

なお、LinuxおよびmacOSでのAzure PowerShellは、オープンソースのPowerShell Core 6(正式リリース済み)のインストールされた環境に、Azure PowerShell for .NET Core(現在、ベータ版)をインストールして使用する形態になります。そのため、現状はWindowsで利用可能なすべての管理機能に対応しているわけではないことに注意してください。

  • Azure“超”入門 第7回

    PowerShellGetでインストールされたAzure PowerShellは、更新も簡単

Azure Cloud Shell

最新のAzure PowerShellやAzure CLI 2.0を手元のコンピューターにインストールすることなく、Webブラウザだけで利用する方法があります。

それは、Azureポータルが備える「Azure Cloud Shell」機能です。Azure Cloud Shellには、「Bash」(正式版、画面4)と「PowerShell」(プレビュー版)があり、前者ではAzure CLI 2.0を、後者ではAzure PowerShellを利用できます。

Azure Cloud ShellではAzure CLI 2.0またはAzure PowerShellが利用できるほか、ファイルのアップロードやダウンロード、永続的なストレージの有効化、クリップボード経由のテキストのコピーと貼り付け(Windowsの場合はCtrl+CによるコピーとShift+Insertによる貼り付け、macOSの場合はCmd-C、Cmd-V)、および各コンソールセッションで利用可能なOS標準コマンド(例えば、Bashではsshなど)を利用可能です。

Azure Cloud Shellは、Azureでも利用できるDockerコンテナ技術に基づいて提供されるコンテナとして、利用者ごと(接続ごと)に専用のセッションが作成され、BashまたはWindows PowerShellへのコンソールアクセスが提供されます。

BashはUbuntu 16.04 LTSベースのコンテナにLinux用のAzure CLI 2.0がインストールされた環境、後者は当初、Windows Server 2016のServer Coreベースのコンテナ(microsoft/windowsservercore)にAzure PowerShellがインストールされた環境でしたが、2018年7月にUbuntu 16.04 LTSベースのコンテナに変更されました。

こちらは、PowerShell Core 6(2018年7月末時点では6.1.0-preview.4)上のAzure PowerShell for .NET Coreと、どちらもプレビュー版の環境であるため、すべてのコマンドレットが利用できるわけではないことに注意してください。Azure PowerShellのすべての機能を利用するためには、現状、手元のコンピューター環境のWindows PowerShell 5.1上に最新のAzure PowerShellをインストールする必要があります。

  • Azure“超”入門 第7回

    Azure Cloud ShellはAzureポータルの上部のアイコンからすばやく開始でき、BashでAzure CLIやLinuxで標準的なコマンドを利用できる(PowerShellはプレビュー提供)


山市良
Web媒体、IT系雑誌、書籍を中心に執筆活動を行っているテクニカルフリーライター。主にマイクロソフトの製品やサービスの情報、新しいテクノロジを分かりやすく、正確に読者に伝えるとともに、利用現場で役立つ管理テクニックやトラブルシューティングを得意とする。2008年10月よりMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(旧カテゴリ: Hyper-V)を連続受賞。ブログはこちら。

主な著書・訳書
「インサイドWindows 第7版 上」(訳書、日経BP社、2018年)、「Windows Sysinternals徹底解説 改定新版」(訳書、日経BP社、2017年)、「Windows Server 2016テクノロジ入門 完全版」(日経BP社、2016年)、「Windows Server 2012 R2テクノロジ入門」(日経BP社、2014年)などがある。