文書で「数式」を表現したいとき、どうしていますか? 表計算ソフトやイラストソフトで作っている……キレイに作るのは至難のワザです。ワープロでフォントサイズを調整して書こうとしても、分数や行列あたりから手に負えなくなってきます。かといって専用の数式ソフトを買うのも……そんなあなたにお勧めが「iWork」です。
整然とした数式を表示可能
多くのMacユーザが愛用しているApple製のワープロソフト「Pages」は、バージョン6.1から「MathML」をサポートしています。MathMLとは、数式表現を目的としたマークアップ言語で、XML/XHTMLと組み合わせて利用されますが、直接書こうとするとかなり手強い存在です。Pagesでは、もう少しわかりやすい「LaTeX(ラテフ)」の数式表現をあわせてサポートすることにより、かんたんにキレイな数式を表現できるようになりました(参考)。
MathML/LaTeXサポートは、最新版Keynote(v8.1)とNumbers(v5.1)でも追加されています。iOS版Pages/Keynote/Numbersでもサポートされていますから、すべての最新版iWorkでMathML/LaTeXによる数式作成が可能になりました。
LaTeXとかいわれてもなんのことやら……という人は、メニューバーから[挿入]→[方程式...]を実行し、現れた画面に「\frac{2}{3}」と入力してみましょう(キーボードによってはOption+「¥」キーで「\」を入力します)。表示例に分数で「2/3」(分子が2、分母が3)と表示されたはずです。
そのまま「挿入」ボタンをクリックすれば、カーソル位置に「2/3」が挿入されます。数式は一種のテキストボックスとして作成されますから、両端の「■」をドラッグすれば自由に拡大/縮小できます。「2\frac{2}{3}」などと整数をくわえ、帯分数にすることもかんたんです。
この「\frac」はLaTeXの命令で、分数の表示に利用します。LaTeXには「モード」という概念があり、iWorkでサポートされるのはそのうち「数式モード」で、数式モード下で有効なコマンドを利用できます。なお、LaTeXの数式モードは「\begin{math} ~ \end{math}」や「$ ~ $」、「[ ~ ]」といった記号で囲むことにより明示しますが(LaTeXはHTMLに似たマークアップ言語の一種で、ファイルフォーマットとしてはプレインテキストです)、iWorkの場合必要ありません。
数式コマンドの命令といわれても何が何やら……という場合は、下の表のコマンド記述例をコピーし、iWorkの方程式編集画面へペーストしてみましょう。たったこれだけの記述でこれほど整然とした数式を表示できるのか! と驚くに違いありません。
数式モードで利用できるコマンドの例 | ||
種類 | 書式 | 記述例 |
上付きの添字 | x^a | X^2 |
下付きの添字 | a_{x} | a_{1n} |
絶対値 | |x| | |123| |
平方根 | \sqrt{x} | \sqrt{\frac{3}{2}} |
数式の上に線 | \overline{...} | \overline{a+b} |
数式の下に線 | \underline{...} | \underline{x-y} |
数式の上に括弧 | \overbrace{...} | \overbrace{A+B} |
数式の上に括弧と説明 | \overbrace{...}^{説明} | \overbrace{A+B}^{This}+C |
積分 | \int_{x}^{y} | I=\int_{b}^{a} f(x)dx |
総和記号 | \sum_{初期値}^{終値} | \sum_{i=-1}^5 |
ベクトル | \overrightarrow{...} | \overrightarrow{ABC} |
LaTeXを使えばこんな数式も
連立方程式
LaTeXには「環境」という概念があり、「\begin{...}」と「\end{...}」で挟まれた部分({...}には同じ環境名が入る)を共通の書式を適用する範囲とみなします。iWorkがサポートする環境の種類は、本家LaTeXにはおよびませんが、数学モードに関しては実用的なものをカバーしています。
たとえば、cases環境を利用すると、範囲内の数式を括る形で「場合分け」の記号を描くことができます。以下のように連立方程式を表示するときなどに利用するといいでしょう。なお、改行を意味する「\」など、LaTeXの命令の多くも正しく処理されます。
\begin{cases}
3x + 2y = 9 \\
4x + 3y = 13
\end{cases}
行列
行列を出力する場合には、「matrix」環境を利用します。使いかたはかんたん、表示したい要素間を「&」で区切り、改行が必要な部分には「\」を置き、前後を「\begin{matrix} ~ \end{matrix}」で囲めばOKです。
行列を作成する環境には、ほかにも「pmatrix」(プレーンな括弧)、「bmatrix」(角括弧)、「vmatrix」(縦線)、「Vmatrix」(二重縦線)が用意されています。状況に応じて使いわけましょう。
\begin{matrix}
a & b & c \\
e & f & g \\
\end{matrix}