クルママニアの安東弘樹さんが人生で45台目となるクルマを購入した。選んだのはスズキの軽自動車「ジムニー」だ。国産車を買うのは25年ぶりだそうだが、なぜジムニーにしたのか。人気のクルマだが、納期はどうだったのか。車庫は空いていたのか。いろいろ聞いてみた。

※文と写真はマイナビニュース編集部の藤田が担当しました

  • スズキ「ジムニー」

    安東弘樹さんがスズキ「ジムニー」を購入! 選んだ理由は?

やっぱりオフロード車が好き

1970年に初代が登場した「ジムニー」は今や、スズキの顔ともいえる小さなSUVだ。“プロユーザー狙い”で2018年7月に発売となった現行型(4世代目)は大人気で、買ったとしても数カ月から1年は待たなければ家に届かないとも聞く。

そんなジムニーが先日、安東家にめでたく納車されたという。

  • スズキ「ジムニー」

    安東さんが購入したのはキネティックイエロー(写真、スズキ提供)の「ジムニー」だ

マイナビニュース編集部(以下、編):なぜジムニーを買おうと思ったんですか?

安東弘樹さん(以下、安):コロナ禍もあって、「林道熱」というのがまた、高まってきたんですよ。

人生初のクルマが「シティ ターボⅡ」(ホンダ)で、その次に買ったのが「テラノ」(日産自動車が1986年8月に生産を始めた四輪駆動のSUV。日産はRV車の先駆けと位置づける)でした。当時は日産のディーラーでアルバイトをしていたので、社員金利でローンを組めたんです。スキーに行くために四駆を買ったんですけど、元来のクルマ好きといいますか、スキーも楽しいんだけど、どうやら自分にとっては、スキーの行き帰りの雪道を運転することの方が楽しいのでは、と気づいたんです。

:(笑)

:それから、林道やオフロード、雪山などを走るのが好きになりました。とにかく楽しかったですね。それでオフロード車のことが好きになって、その後も「パジェロ」(三菱自動車工業)に乗ったり、「ディスカバリー」(ランドローバー)に乗ったりしました。

ディスカバリーで輸入車デビューしたんですけど、走破性やコンセプトは国産車とまるで違いました。例えば、パジェロには豪華なオーディオが付いていたんですけど、ディスカバリーは「ワンディン」(1DIN、オーディオのサイズを示す言葉らしい。要するに、パジェロに比べれば質素だったようだ)の飾り気のないものでした。その代わり、ディスカバリーはボディが全てアルミで、大きさの割に軽かったりする。「お金をかけているところが違うなー!」と感じたんです。

ディスカバリーはV8の4リッターという燃費の悪いエンジンを積んでいましたが、驚異的な低速トルクがありましたし、「デフロック」(4つあるタイヤの回点差を調整する機構。悪路走破には欠かせないものらしい)も備えていた。「輸入車とは、こういうものか」と唸りました。本質志向といいますか、そこから輸入車に偏っていったんですよね。もちろん、日本メーカーのクルマの性能が悪い、という意味ではないのですが、ディスカバリーの、「悪路走破性に関わるところにはコストを惜しまない」というメッセージに痺れました。

そんなわけで、もともとはオフロード車をメインで乗っていた時期があるんです。それを思い出して、今回はジムニーを購入しました。メルセデス(安東さんが所有している「E220d 4MATIC オールテレイン」というクルマのこと)でも道幅が広いオフロードには行けるんですけど、日本の多くの狭い林道を走るにはボディが大きすぎるし、デフロックもできませんし、すなわち、ハードなオフロードを走るクルマではありません。軽のジムニーであれば、オフロードをしっかり走れるのにお金の負担も比較的少なくて済みますし。

  • スズキ「ジムニー」

    スズキ「ジムニー」は「XG」「XL」「XC」の3グレード構成で、価格は148.5万円~187.55万円。4速AT(オートマチックトランスミッション)と5速MT(マニュアルトランスミッション)が選べるが、安東さんが選んだのはいうまでもなく後者だ

:ジムニーではすでに2回、長距離を走破しています。2件とも仕事ですけど、最初は滋賀県で往復1,000キロ、2回目は白川郷(岐阜県)で800キロでした。高速道路を走っていると時速100キロでエンジンが4,000回転弱くらい回るので、燃費が悪いのかなと思っていたんですけど、滋賀に行ったときはノーマルサスのまま細いノーマルタイヤを履いて走った結果、燃費はリッター17キロまでいきました。ただ、タイヤを太めのものに変えてリフトアップサスにしたら、リッター12キロに落ちちゃいましたけどね。そんなに影響があるのかとびっくりしました。もともと車高が高いクルマをリフトアップしたので、空気抵抗も相当、変わっていたのだとは思います。

:ジムニーはやっぱり、カスタムすることを前提に購入されたんですか?

:そうですね。ボディカラーはキネティックイエローなのですが、色のコントラストと軽量化をかねてボンネットをカーボンのものに変えようと思って、注文したところです。それと、ノーマルタイヤはオフロード用ではなかったので、変えました。

考えてみれば、クルマをカスタムするのは人生で初めてですね。タイヤを変えて、リフトアップして、コンピューター(ECUチューン)はできないのですが、“あの”HKSさんの「パワーエディター」というものでパワーも若干、上げました。5馬力くらいですかね。あとは、マフラーとサスペンションもスポーツカーのイメージが強いHKSさんのものにしようと思っています。HKSさん、これまではダウンサス専門でしたが、ジムニー用のサスペンションで初めてリフトアップキットを作ったそうです(笑)。

:ジムニーって大人気で、納車までに時間がかかると聞きますが?

:当初は1年待ちといわれました。2020年の6月に契約して、今年の6月に納車の予定だったので、ジムニー用の駐車場については春先から考えようなどと思っていました。それが、2020年1月にセールスの方からお電話をいただいて、「納車が1月下旬から2月になりました!」という話になりまして……。何の準備もしていなかったので、「いやいや、ちょっと待ってください!」という感じになったんですけど、セールスの方は嬉しそうな様子でしたね(笑)。

:納期が短縮できたことは、向こうにとってはいい知らせでしょうからね(笑)。

:ただ、いきなりだったんで、ちょっと慌てましたね。納期が短くなった背景には、コロナの影響があるみたいです。右ハンドルで輸出用の車両にキャンセルが出たり、国内でもキャンセルがあったりしたそうです。

:それで在庫が回ってくるようになったということですか。それで、駐車場はどうされたんですか? 今はメルセデスとロータス「エリーゼ」をお持ちで、ご自宅のガレージはいっぱいだったかと思うのですが……。

  • ロータス「エリーゼ」

    安東さんのロータス「エリーゼ」。「ロータス・エリーゼ ヘリテージ エディション」というモデルだ

:人生で一度はガレージを建てようと思いまして、自宅近くに自分のクルマより安い価格で土地を購入しました(笑)。千葉市に住んでいる特権ですね! 昨日、初めてガレージの図面を見たところで、予算が合えばこれから建てます。

:あれ、ということは、今はどこにジムニーを置いているんですか?

:ロータスを購入したディーラーさんが有料駐車場を持っていて、そこが鍵付きの車庫なので、借りています。ちょっと家からは離れますが、そこまでは自転車で行ってクルマに乗りかえます。

:建設予定のガレージは何台とめられるんですか?

:2台です。クルマより安い土地だと、それが限界ですね。ただ、ソーラーパネルを付けて、電気自動車(EV)の充電も可能なガレージにしようと考えています。私が生きている間に、EVに乗る時代が絶対に来ると思うので、できるだけ早く、環境を整えたいと思ったんです。

ただ、今の千葉市の家に、一生住むのかなという不安もあるんですけど……。

:どうしてですか?

:故郷でもあるので、将来は横浜市に住みたいとなんとなく思ってるんですよね。

:そもそもなぜ、千葉に住んでいるんですか?

:妻の実家に近いのと、あと、建売でビルトインガレージがあったんですよ! 結婚直後は新浦安に住んでいて、今の自宅を見に行ったときはそこまで真剣に購入を考えていたわけではなかったんですけど、1階がビルトインガレージと30畳くらいのリビングだけで、中途半端な和室(畳のスペース)もなくて、採光がよくて……。内覧のとき、そのころ2歳くらいだった長男が嬉しそうに部屋を走り回っているのを見たときに、「あれ、ちょっと待てよ。いいかも」という感じで、住んでいるイメージが浮かんでしまったんです。

「もう1組、ご検討中の方がいらっしゃいまして」と営業の方はおっしゃっていたんですけど、本当なのかな……。というのも、昨今、ビルトインガレージの需要があるとは思えませんし、それなら(ガレージの部分が)和室の方がいいという人も多いでしょうから。実際、周りの家は結構売れていて、そこは残っていたわけです(笑)。ただ、そういう言葉もあって結局、その1軒しか見ないで決めてしまったんです。

  • マツダ「MX-30 EVモデル」を運転する安東弘樹さん

    将来的には横浜に住みたいらしい安東さん。今回のインタビューはマツダの電気自動車「MX-30 EVモデル」の試乗中に行った

:ジムニー、買ってよかったですか?

:もう、大満足です。ただ、まだオフロードを走れていないんです。白川郷では雪道を走れると思っていたんですけど、私は本当に雪道に縁が薄くて……。去年、雪道を思う存分走るために青森の酸ヶ湯温泉に行ったときも、道路には1ミリも積雪がなかったですから。日本一の積雪記録を保持する酸ヶ湯温泉の1月下旬ですよ? ホテルの方も「こんなに雪が少ないのは人生で初めて」とおっしゃっていたくらいです。最も雪が多い時期なのに、買ったばかりのスタッドレスタイヤで、1ミリも雪道を運転しないうちに八甲田山のホテルに着いてしまいました。「天は我を見放したか!」という感じですよ(映画『八甲田山』より、北大路欣也さん演ずる神田大尉のセリフ「天は我々を見放した……」の引用)。

:(笑)

:極論をいえば、ノーマルタイヤのまま行っても問題はなかったという道路状況でした。道路のわきには2mくらいの雪の壁があるのに、道路自体には全く積もっていませんでしたから。

:でも、この冬は豪雪と聞きましたし、白川郷はさすがに積もっていたのでは?

:これが今回も、路面には全く雪がなかったんです。神様っているんだなって思いましたよ。こんなに雪道を運転したい人間に、ここまでの試練を与えるのかって。

:普通であれば、雪がないことを神様に感謝するところですけどね(笑)。

:すみません、今冬の大雪で被害にあわれた方や雪かきでご苦労されている方も多いので不謹慎ですよね。でも、どうしても私は雪道を走りたいんです。