トヨタ自動車「GRヤリス」は「モータスポーツ用の車両を市販化する」という逆転の発想で生まれたクルマだ。初代の「20式」発売から、すでに6年が経過している。最新の「26式」はどんな進化を果たしたのか。実車に乗って確かめてきた。
これまで取り上げてきた「GRヤリス」の写真を一気に見る
20式から25式までの進化をおさらい
前回の「25式後期GRカローラ」に続いて、今回は「26式GRヤリス」の試乗記となる。
2020年発売の20式GRヤリスは、トヨタがWRC(世界ラリー選手権)で勝つために開発した車両のホモロゲーション(競技モデルのベース車両)だった。3ドアの専用ボディに新開発の1.6LターボエンジンとGR-FOURスポーツ4WDシステムを搭載したワイルドなモデルだ。
2024年の「24式」では2ペダルの8速GR-DAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)搭載車を追加するとともに、最高出力を272PSから304PS、最大トルクを370Nmから400Nmにアップ。プロドライバーの意見を取り入れて、コックピットはドライバー側に15度傾けたGRヤリス専用のものとなった。
エクステリアもモータースポーツの現場からの声を採用し、迫力ある姿に。スポット溶接や構造用接着剤の使用量を拡大したほか、モータースポーツ参戦を考慮した、あの“縦引き“式パーキングブレーキを新設定したのもこの時からだ。
2025年の「25式」ではGR-DATのスポーツ走行時のギア制御を熟成させたほか、各部締結ボルトの変更や締結トルクアップを行なって再セッティングしたことで、応答性と直進安定性が向上した。ダクト付きの専用ボンネットや可変式のリアウイングなどを備えたエアロパフォーマンスパッケージが登場したのはこの世代から。インテリアではGR-DAT搭載モデルのフットレストの面積が大きくなり、左足がより安定して踏ん張れるようになった。
「26式」はどこが変わった?
最新型となる「26式」の話を聞いたのは、GRヤリスの山田寛之PGM(プロジェクトジェネラルマネージャー)と開発担当ドライバーの大嶋和也選手だ。
今回の改良では、モータースポーツ参戦で得た学びを反映。具体的には「ステアリング」「EPS」「タイヤ/足回り」「快適装備」で“4大進化“を果たしたという。パワートレインについては変更点なしだ。
実車に乗り込んでまず目につくのが、GRステアリングのデザイン変更だ。
従来型では操作中に手のひらがスイッチに触れたり、パドル操作時(プロドライバーは中指で操作するとのこと)の指挟みが起きたりする可能性があったので、26式ではそれを解消するため、ステアリングとパドルの形状を変更するとともに、サイズの小径化(365mm→360mm)を行なった。
さらに、センターパッド周囲に各スイッチを独立配置し、リング状イルミネーションを追加することで、誤操作抑制や夜間の視認性を向上させている。
ドライブしてみると握りはちょっと細身で、各部が操作しやすくなっている。常に手に触れる部分でもあるだけに、その恩恵はかなり大きいことに気がつく。
ただし、GR-FOURの切り替えやドライブモード選択など、(スーパーカーによくある)走行面に関係する操作系がステアリングに配されていない点には注意が必要だ。これらの操作系は従来通りの位置にある。この部分が次の「27式」あたりで進化するのかどうかについては「検討中」とのお返事だった。
タイヤはモータースポーツの現場でのテストから新開発した専用のブリヂストン「ポテンザRACE」を標準装着。前モデルまでのミシュランが「ドンピシャ専用」ではなかった、というのが変更の理由だ。
新タイヤの性能をいかすため、前後ショックアブソーバーの減衰力特性を最適化するとともに、高負荷がかかる強い旋回時でもEPS(電動パワーステアリング)のアシストがしっかり効くようチューニングを実施。構内路での右左折や緩いコーナリングでも、ハイグリップタイヤを履いているにも関わらず、違和感なくスイスイと向きを変えることができたことから、アシスト量が適切であることが想像できた。走行時のタイヤノイズもわずかに減少しているようだ。
4WDのGR-FOUR制御は、「TRACK」モードでは前後駆動力が60:40~30:70まで状況に応じて連続して変化する。例えば富士スピードウェイの100Rや300Rなど、高速度域でしばらく同じ横方向にGがかかったままになるようなコーナーを抜ける時には、上手に車体の向きを変えてくれるのだろう。「GRAVEL」モードにすると、前後駆動力は50:50に固定される。同じクルマでも駆動力の変化を感じつつ楽しめる点は、GRヤリスらしいところだ。
今回はメーカーオプションを見直し、縦弾きパーキングブレーキ選択時でも、シートヒーターとステアリングヒーターの装着が可能になったとのこと。総じて8速DATモデルを含めた26式では、トップレベルの走行性能をさらにアップしつつ、普段使いの快適性能にも気を配った点が評価できるポイントといえるだろう。
特別仕様の「MORIZO RR」がオススメ?
今回の試乗会では、「MORIZO RR」と「セバスチャン・オジエ 9x ワールドチャンピオンエディション」の2台の特別仕様車がお目見えした。
「GRヤリス MORIZO RR」はモリゾウ(豊田章男会長)とともに、2025年のニュルブルクリンク24時間レース参戦を通じて作り上げたGR-DAT搭載車。日本で100台限定(2026年春以降受付予定)、欧州一部でも100台限定となる特別仕様車だ。
エクステリアでは、ニュル24時間で開発したカーボン製専用リアウイングやカーボン製エンジンフード、フロントスポイラー、サイドスカートなどが専用品で、グラベルカーキのボディやマットブロンズホイール、イエロブレーキキャリパーも専用カラーとなる。フロントウインドウ左下に筆記体で「MORIZO」のサインが入るのも、スペシャル感を助長する。
インテリアではステアリングやシフトノブ(ブーツ含む)、パーキングレバーがスエード表皮&イエローステッチの専用品で、イエローステッチのシートも専用となる。ダッシュボードにはシリアルナンバープレートが取り付けられるほか、メーター表示をMORIZOモードに切り替えることが可能だ。
走りとしてのベース車との大きな違いは、カーボン製リアウイング装着による強力なダウンフォースを前提として、路面追従性を高める専用ショックアブソーバー設定を行ったこと。高速での沈み込み姿勢での旋回性と、モリゾウさんが日常の愛車として使用する際の中低速での乗り心地を両立したという大嶋選手提案の足回りだ。
短い時間ではあるが試乗した印象では、この日乗ったどのGRモデルに比べても、乗り心地が最もよかった。フラットな姿勢をキープしながら路面を舐めるように走るそのセッティングはすばらしく、手に入れることができる資金力とラッキーさを持ち合わせた御仁には、ぜひともオススメしたいモデルだ。
WRC2025で通算9回目のドライバーズチャンピオンを獲得したセバスチャン・オジエ選手の偉業を記念した「セバスチャン・オジエ 9x ワールドチャンピオンエディション」は、エアロパフォーマンスパッケージをベースに専用四輪制御の「SEB.」モードを搭載したMTモデル。内外装に専用カラーを施した日/欧各100台の限定モデルだ。

































