GoogleがNexus 7と同時に発表した新しいデバイス「Chromecast」を入手しました。これは、メディア再生デバイスの1種で、アンドロイドなどと併用するものですが、自身もアンドロイドで動作しており、無線LAN経由でインターネット側からストリームを直接受け付けて再生を行います。このため、制御する側のデバイスは、Chromecastに表示を行わせたら、メディアのダウンロードや表示などには関わりません。このあたりが、デバイスのHDMI出力やリモートディスプレイとはちょっと違う点です。
パッケージ内容や外観など
Chromecastは、一見USBメモリのように見える形をしています。ただし、片側に付いているのはUSBコネクタではなく、HDMIコネクタです。ここを直接テレビのHDMI端子に接続します。反対側にマイクロUSBコネクタがあり、付属のUSBケーブル、ACアダプタを介して電源を供給します。なお、テレビにUSB端子があるならこれを使って電力供給を行うことも可能とのことですが、電力不足になる可能性があり、付属のACアダプタを使うことが推奨されているようです。また、テレビ側のHDMIコネクタの周囲と干渉して装着が難しい場合に供えて、短いHDMI延長ケーブルも付属しています。パッケージの中にあるのは、USBケーブル、ACアダプタ、HDMI延長ケーブルと小さな説明書程度しか入っていません。
Chromecastは、USBメモリのような形状をしており、丸い側にマイクロUSBコネクタ(電源供給用)、リセットボタン、LEDなどが配置されている |
片側はHDMIコネクタになっていて直接テレビにさすことができる |
接続して、テレビの入力を装着したHDMIポートに切り替えると、画面にURLが表示されます。そこに設定用のアプリ(アンドロイド、iOS、マッキントッシュ、PC用)があります。設定用アプリは、Chromecastをアクセスポイントに接続させるためのもので、一回設定が終われば、あとは、Chromecast対応アプリ(たとえばアンドロイドのYouTubeアプリやPlayムービーなど)から、再生を制御できるようになり、設定アプリは必ずしも必要ありません。なお、Chromecastを使うには、無線LANのアクセスポイントが必要で、かつ、セットアップする機器は同じネットワークに接続していなければなりません。また、設定時には、Chromecastと直接無線LANで通信できる範囲にいなければなりません。
Webブラウザで「http://www.google.com/chromecast/setup」を開くと、開いたデバイスに応じて対応するセットアッププログラムへのリンクが表示されます。PCから利用する場合、クロームブラウザをインストールしてさらにChromecast用エクステンションを入れておく必要があります。おそらくマックでも同じと思われますが、筆者宅にはないのでわかりません。iOSの場合、ブラウザに操作手順が表示され、手順に従いChromecastXXXというアクセスポイントを探して手動で接続する必要があります。
アンドロイドやPC用のChromecast設定アプリでは、設定画面に受信可能なネットワークのSSIDが表示され、指定したSSIDに対して暗号化キーを設定、最後にChromecastデバイス同士を区別するための名前を設定する。Chromecastは、ネットワーク内に複数存在可能で、それぞれを区別するのがここで設定する名前です。たとえば「リビングのテレビ」などとして接続先のテレビを区別できるようなものにしておくといいでしょう。Chromecastは前述したようにネットワーク内のアンドロイドやPCなどから自由に再生を指定できます。特に特定のデバイスからのみ制御を受け付けるようにはなっていません。このため、一人でこっそり楽しもうとして、他の人が使っているChromecastに再生を指示してしまう可能性もあります。複数利用する場合には、十分注意したほうがよく、そのためには名前をちゃんと付ける必要があります。
Chromecast設定アプリ(アンドロイド版)。無線LANを使い、Chromecastを探して設定を行う。設定後は、ここからChromecastのリセットや工場出荷状態への復帰、名前の変更などが可能になる |
Chromecastを試す
Chromecastが初期設定され、アクセスポイントと通信できるようになると、Chromecast対応アプリは自動的にChromecastを見つけることができるようになります。Chromecast対応アプリはアンドロイドでは、
- YouTube
- Netflix
- Google Play Movies&TV(Playムービー)
が対応しています(原稿執筆時)。iOSは、YouTubeアプリが対応しているようです。
まずはアンドロイドから試してみることにしましょう。アンドロイド上で、対応アプリ、たとえばGoogle Playムービーを起動し、コンテンツを選択すると、画面上方にChromecastアイコンが表示されます。これをタップすれば、ネットワーク内のChromecastが表示され、これを選択して再生を指示すれば、テレビ側で再生が開始されます。このように画像をChromecastで表示させることを「キャストする」と呼んでいるようです。
このとき、再生を指示したアンドロイド側の再生画面は、ポーズやタイムゲージなどが表示されており、これらを使って再生を制御することができます。逆にいえば、テレビ側では音量ぐらいしか制御することはできません。なお、音量も制御する機器側から行うことも可能です。Playムービーでは、Chromecastアイコンをタップするとボリューム設定と切断用ボタンが表示されるので、ここでChromecast側のボリュームを調整可能です(制御機器本体のボリュームキーでも調整可能)。
このような場合、音質を落とさないようにするには、制御機器側でChromecastのボリュームを最大に設定しておき、それでも音が小さいようならテレビ側で調整するようにします。Chromecast側のボリュームを小さくして、テレビ側のボリュームを大きくすると、ノイズが乗りやすくなり、これをテレビ側で大きく増幅してしまうため、無音状態でのノイズなどが気になるようになりやすいので注意してください。
Playムービーでコンテンツを開くと、画面上にChromecastアイコン(時刻表示の下)があり、これをタップすると、ネットワーク内のChromecastデバイスが表示される |
PlayムービーのコンテンツをChromecastで再生中。ここからポーズや音量の調整、キャプションのオンオフなどが設定でき、形式上は、アンドロイド側がビデオ再生中となる |
iOSでは、AppStoreからYouTube再生アプリをインストールしてみましたが、操作は基本的に一緒です。ただし、Chromecast側のボリュームの調整は、本体側のボリュームキーを使います。
PCから利用する場合、あらかじめクロームブラウザにChromeウェブストアからChromecast拡張をインストールしておきます。PCの場合、クロームブラウザで再生しているYouTube画像などのみを表示する機能のほかに、表示しているタブ全体をChromecastで表示するモードの2つがあります。前者は、GoogleなどChromecast側にストリーミングを委譲可能な場合に使い、後者は、これができない場合に利用します。この場合、画面は両方に表示されることから、一旦クロームブラウザ側でストリーミングなどを受けたあとこれをChromecastへ転送しているようです。
また、PC側では、クロームブラウザのタブを表示させるため、表示解像度など設定が可能です。最高解像度にすると、文字などもクリアに見え、ブラウザで表示できるものはなんでもChromecastを介してテレビ側に表示可能です。
クロームブラウザにChromecast拡張(ウィンドウ右上)を入れ、アイコンをクリックするとネットワーク内のChromecastデバイスを表示する。ここでデバイスをクリックすると、タブ自体がキャストされる |
アプリ側は、ローカルネットワークを介してChromecastを見つけるため、特に設定は不要のようです。このためか、利用する場合、必ずしも設定したときと同じグーグルアカウントを使う必要がありません。別のアカウントでも、同じネットワーク内に設定されたChromecastがあれば、再生先として指定できます。家族の誰かが導入すれば、ネットワークにアクセスできる家族全員が利用可能になるのです。一見、危ない仕様のようにも思えますが、一般的には、Chromecastにアクセスする前段階としてアクセスポイントの暗号化キーを正しく設定する必要があるため、たとえ、隣家に電波が届いていても、暗号化キーを知られない限り問題はないでしょう。
Chromecastは簡易なデバイスですが、テレビを簡単にスマートフォンやタブレット、PC用の動画再生用デバイスに変えてくれます。Windows、マック、アンドロイド、iOSと幅広いプラットフォームに対応していて、HDMI入力があるテレビやモニタがそのまま使えます。会議室のような共有スペースにある機器に接続して使うといった使い方も可能かもしれません。
画像も比較的高品質で、HDの動画もきれいに見えます。筆者としては家中のテレビ、モニターにつけておきたいぐらいです。
本稿は、2013年8月23日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。