編集部注: 本稿は、2012年4月16日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。
ときどき、1円携帯というのがあります。たいていは新規契約のみなので、すでに携帯電話を持っている人にはあまり関係ない(なぜかいくつも携帯電話を持ちあるいている人もいますが)のですが、ときどき、機種変更向けに非常に安いスマートフォンが売られていることがあります。発売したての頃は数万円した機種が最後には数千円で販売されます。それも、新規契約ではなく、機種変更用としてです。特に、年度が終わる3月末までは、携帯電話が安くなる時期。ちょっと注意すると、掘り出し物に巡り会うことができます。数万円が数千円です、これを驚異のテクノロジーと言わずして何をテクノロジーというべきでしょうか? 筆者は、これを個人的に「ドコモテクノロジー」と呼んでいます。以前からドコモは、端末などを破格の値段で「処分」、いや「販売」することがあったのです。カシオのWindows CEマシンや、PHSでビデオ送信できる卵形のエッギー、コンパクトみたいなメール端末、筆者は、みんなドコモテクノロジーのおかけでで手に入れることができました。
さて、今年手に入れたのは、SO-03Cこと、Xperia Rayです。細かいことは省きますが、五千円ちょっとで手に入れました。もちろん新品です。
この機種、発売したときにちょっと気になっていたのですが、いくつかの理由で購入しませんでした。そのうちの1つは、カラーバリエーションに「黒」がなかったことです。カラーバリエーションは、3色用意するのがセオリーです。1つは、男性向けの色、これは「黒」となるのが普通です。もう1つは女性向けの色で最近では「白」でしょうか。もう1つは、カタログ用に見栄えのする色です。赤やピンク、鮮やかなグリーンなどです。ただ、機種によっては登場タイミングやメーカーとしても他にイチオシしたい機種があるなどのため、男性色、女性色の2色で済ませることもあります。
ドコモの機種ページを見れば、赤とか緑などの派手な色が機種写真として使われているモデルには、たいていグレーや黒などの男性向けの無難な色が用意されています。
しかし、ときどき、男性向けの無難な黒などがない機種があります。これは、あきらかに女性向けの機種です。ですが、こういうエレクトロニクスもので色だけを女性ターゲットにした機器は、めったにヒットしません。かつて、ソニーが女性向けに白いステレオを商品化したことがあるのですが、さんざんな売れ行きだったといいます。
で、Xperia Rayは、そんな機種の1つでした。結果的に数万円のものが数千円という状態になったのには、やはり見込み違いだったのでしょう。当時は、黒がないのでイヤでしたが、なにせ、五千円です。色に文句を言ってる場合ではありません。しかしさすがにピンクは目立ちすぎるし、白は汚れが目立ちそうなので、ゴールドにしました。よく考えればカバーつけてしまえばどの色も一緒です。
その利用目的は?
さて、安いからといっていまさら、Android 2.2のスマートフォン買ってどうするんだと言われたら、答えは、「通話だけで使う」です。通話だけで使うのにスマートフォンである必要があるのか? というといくつかメリットがあります。
まず、Xperia Rayは、小さく、普通の携帯電話とさほど変わりません。むしろコンパクトといってもいいぐらいです(写真01)。ストラップで首からかけたり、シャツのポケットに入れても負担になりません。毎日持ち歩く電話機は、小さいほうが、取り回しが楽なのです。ところが最近のスマートフォンは大型化する一方。ブラウザなどを使うならそれでもいいのですが、電話機としては扱いづらくなっています。
写真01: 普通の折りたたみ式の携帯電話との比較。小さな液晶を使うXperia Rayはコンパクトでたたんだ状態の携帯よりも薄く、開いた状態よりも小さい。なので、取り回しがラクで、シャツのポケットに入れても負担にならない |
また、Androidが持つデータの同期機能を使うことで、常に電話帳を他の機種やGmailのアプリケーション、あるいはThunderbirdといったPC上のメールソフトと同期させることが可能です。これには、何も作業する必要がないという点が重要です。かつてのように電話帳編集ソフトも必要なければ、電話機をPCとUSBで接続する必要さえありません。同様にカレンダーなども同期できます。
もう1つは、比較的カスタマイズが容易という点です。最近の携帯電話は、待ち受け画面がFlashになっているなどでカスタマイズがある程度できますが、基本はナビゲーションキーやテンキーによる操作。カスタマイズにも限界があります。
これに対して、Androidは、いわゆる待ち受け画面は、ホーム画面で、アプリケーションのアイコンやウィジェットなどを配置可能です(写真02)。
写真02: ホーム画面はこんな感じ。情報表示と機能オンオフのウィジェットが中心。Xperia Rayにはカメラボタンがないので、下の固定領域において素早く起動できるようにした。写真左下の丸いウィジェットがBattery Solo Widgetsで、その上にあるのがWiFi Widgets。この右隣は、アプリケーションのショートカット中心、左隣は、着信履歴ウィジェット(Xperia付属)を配置 |
そういうメリットはわかったが、通話でだけ使うとはどういうことか? という疑問もあるでしょう。簡単にいえば、携帯電話のネットワークではデータ通信を一切しないということです。具体的にいえば、Androidの「設定」⇒「無線とネットワーク」⇒「モバイルネットワーク」で、「モバイル通信を有効にする」をオフにします(写真03)。あるいは、登録されているアクセスポイント名を書き換えて接続できないようにします。こちらのほうが通知領域に「データ通信が無効です」という表示が出なくなってすっきりします。無効なアクセスポイントを登録してもいいかもしれません。
写真03: 設定にある「無線とネットワーク」⇒「モバイルネットワーク」で「データ通信を有効にする」をオフにする。また、国内では「ネットワークモード」は「WCDMAのみ」としたほうが消費電力が小さくなる。GSMに対応させるのは、外国についてからでも遅くない。逆に海外では、GSMのみとしたほうが消費電力を小さくできることがある |
ただし、筆者宅には、無線LANがあるので、無線LANはオンにしておき、自宅内での通信は行わせます。アドレス帳や予定の同期は、一日一回程度で十分で、予定なども、その日一日の予定がはいっていれば十分でしょう。なにせ、別にスマートフォンがあるのです、無理する必要はありません。
とにかくデータ通信をさせない
モバイル通信を止めても、音声電話の着信は可能です。この状態では、無線LANに接続していない環境では、データ通信をまったく行わないため、バッテリ動作時間が延びます。無線LANはオンのままでも消費電力は、携帯電話のネットワークよりも大きくなりません。また、ヘッドセットを使うためBluetoothも常にオン(ただしヘッドセット側はオフ)にしていますが、これもそれほど大きな消費電力にはならないようです。
ただし、通信しなくてもアプリケーションが動きっぱなしになってしまうと、それで電力を消費してしまいます。なので、インストールするアプリケーションには、注意します。外出中にはデータ通信ができないとすると、インターネットアクセスするようなアプリケーションを入れる必要はありません。Xperiaシリーズには、SNSなどをアクセスするためのTimeScapeなどがありますが、これらも登録をやめます。アカウントを登録しなければ、ネットワークアクセスには行かず、無駄な電力も消費しません。
SNSは、TwitterとGoogle+を入れてあります。どちらも「アカウントと同期」でそれぞれの同期処理をオフにしてあります。これで、スタンバイ中に勝手にアップデートを行うことはないはずです。無線LANが使えるときにそれぞれのアプリケーションを開けば、最新状態までの読み込みはおこなわれ、ちょっとした投稿をする程度ならこれで十分でしょう。Twitterは主に投稿用、Google+はカメラで撮影した画像のバックアップ用です。Xperiaシリーズは、海外メーカーのスマートフォンに比べるとカメラ画像の品質が比較的高いので、カメラとしての用途も想定しています。
入れたアプリケーションは、以下のようなものです。
- Evernote
- Droid48
- 世界時計
ちなみにDroid48は、HP社の逆ポーランド式の関数電卓、世界時計はいわゆるワールドクロックです。なんで電卓を入れてあるのかというと、他のスマートフォンでWebなどを見ているときにちょっとした計算をするためです。1つのスマートフォンでアプリを切り替えるよりも、2つのスマートフォンを同時に使うほうが便利です。
また、ウィジェットは、以下の2つを入れてあります。
- Battery Solo Widget
- WiFi Widgets
最初のBattery Solo Widgetは、バッテリ残量を示すだけのウィジェットで円グラフと数字で表示を行います。またWiFi Widgetsは、無線LANのオンオフと接続先のSSIDなどを表示でき、タップでWiFiの設定ページを開くことができます。
こうした通話専用の設定で、バッテリは満充電からバッテリ低下の通知が出るまで4日以上持ちました。筆者宅とその近辺が主な場所でしたが、うち1日は都内に出かけ、地下鉄を使っています。音声の通話は4日間のうち着信9回、発信4回でした。どちらも通話時間は1分以内です。人によって環境が違うので、結果が大きく異なることもあるでしょうが、この感じなら、多くの環境で、一回ぐらい充電を忘れても翌日一日ぐらいなら大丈夫そうです。
電話として持ち歩くことを考えると、コンパクトなXperia Rayはうってつけという感じです。こんなにいい電話機をあんなに安くしてくれるなんて、ドコモは、なんて親切な会社なんでしょう。足を向けて寝られません(どっちの方向にあるのかよく知らないんですが)。できれば、また、電話機を安く売ってください、お願いします。