編集部注: 本稿は、2012年4月3日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。

スマートフォンが流行る理由の1つとして、携帯電話と同じように利用者の身近にあって、従来パソコンを必要としていたようなメールやWeb閲覧が可能になる、というものがあります。たしかに周りを見回すと多くの人、いや大半の人が携帯電話を持ち歩いています。

身近なところにある電子機器という点で、筆者は、「腕時計」にもちょっと注目しています。腕時計は、マニアな人が多くて、そのまま語ることは難しいのですが、スマートフォンやタブレットなどの身近な電子機器と連携するようになるのではないかと考えています。

そういうわけで、気になった製品があったので海外で購入して使ってみました。購入したのは、InPulse Smartwatchという製品です。これは、書き換え可能なファームウェアを持ち、Bluetooth経由でAndroidやBlackBerryと通信が可能な腕時計です。ただし、Bluetoothの制御の関係で、すべてのAndroidで動くとは限らないようです。また、特定のBluetooth USBアダプタを使うことで、PCから通知を送信することも可能です。

InPulse Smartwatch。時計としてはちょっと大きい。操作するのは、側面にあるボタン1つのみ。バイブレータを内蔵しており、振動で通知することも可能

機能としては大きく2つになります。1つは、標準のファームウェアを使い、Androidなどからのメッセージを表示する腕時計としての用途です。標準で、Androidのメール、電話着信、カレンダーの通知、twitter/Facebookの通知を表示させることができます。ただし、海外製でもあり、日本語の表示ができません、というか英数字、記号などいわゆるASCIIコードの表示しか行うことができません。

もう1つは、このInPulseのファームウェアを書き換えて、フェース(文字盤)の違う時計にしたり、ゲームなどさまざまなアプリケーションを実行させることです。また、Android側からInPulseへ通知を送るアプリケーションを開発することも可能です。このためのSDKが用意されていて、無償で利用できます。どちらかというと、InPulseの楽しみ方の1つは、こっちのソフト開発という感じがあります。

さて、通知デバイスとしての腕時計ですが、たしかに、Twitterでダイレクトメッセージが来たときなどにAndroid側で音を出したり振動させたりするよりも便利です。英数字であれば、表示できるので、少なくともTwitterのユーザー名程度は確認できます。また、アラームや着信なども英文であれば、ちゃんと表示が可能です。

InPulse Smartwatchの概要

InPulse Smartwatchには、ベゼル部分が銀と黒の2種類あり、黒のほうが若干高く199ドルで、銀は149ドルです。直販もしているし、海外の通販サイトなどでも扱っているようです。

本体はダイバーウオッチ並に厚く、それほど小さなものではありません。1.26インチのOLEDパネルを持ち、解像度は96ドット×128ドットです。入力は、本体側面にボタンが1つあるのみ。ディスプレイもタッチパネルではありません。この点では、ソニーエリクソンのLiveViewよりは、制限が大きくなっています。

しかし、逆に操作は簡単で、ボタンを短く押す、長く押すの2種類だけしかありません。操作は、インストールされているファームウェアによって違ってきますが、標準ファームウェアの場合、消費電力を抑えるため、普段は、スタンバイモードになっており、時刻表示だけが1分に一回更新されます。ボタンを押すと日付などの表示が行われ、さらにもう一回押すと通知が時間順に何で表示されます。

この状態でボタンを短く押していくと、通知が順々に選択され、長押しで、通知の内容が表示されます。あとはしばらく操作しないで放置しておけば、勝手に時計表示、スタンバイモードへと戻ります。また、時計表示の状態で長押しすると、下にアイコンが表示され、選択した種類の通知のみを表示させることができます。

側面のボタンを長押しすると、下にメニューを表示する。これで表示させるメッセージの種類を限定できる。OLEDなので、発色はよく、画面は見やすい

メールの通知。通知の先頭には通知の種類を表すアイコンがあり、その後に差出人が表示される。長押しで選択すると、メッセージのタイトルや本文の一部を表示。ただし、ダイジェストなのでメールを読むというよりは、メールを見るべきかどうかが判断できる程度

簡単にいうと、標準のファームウェアで利用すると、通知機能付き腕時計です。便利なことは便利なのですが、バッテリ寿命がそれほど長くなく、通知が多ければ多いほど利用時間が短くなります。だいたい7~10時間ぐらいというところでしょうか。充電はマイクロUSBコネクタ経由で行い、充電時間は45分と比較的短時間で充電が終了します。これもメリットのように思えますが、おそらく、バッテリがかなり小さいのではないかと思われます。

ホストとなるAndroid側が常に通信可能な状態だとすると、メールやSNSの通知などで、数時間程度になってしまうこともあります。

そういう状態なので、どちらかというと、自作のアプリケーションと組み合わせたり、ファームウェアを作って遊ぶ機器という感じのほうが強くなります。なので、プログラミングに興味の無い人には、ちょっと無駄な商品かもしれません。

ですが、設定により、Bluetoothの通信が切れたときに振動する(Androidスマートフォンの置き忘れ、盗難防止)にもなり、Android側のサウンド設定にかかわらず、腕時計の振動で通知を知ることができます。会議中やコンサートなど音を出せない環境でも通知がすぐにわかり、文字でメッセージを受けとることができるというのはメリットといえます。

なお、Androidで使うには、専用アプリケーションが必要です。これは、Androidマーケット(Google Play)からダウンロードが可能です。このアプリケーションには、通知をBluetooth経由で送信する機能があるほか、InPulse用アプリケーションマーケットへのアクセス機能があり、InPulse上で動作するアプリケーションなどをダウンロードして、InPulseにインストールすることができます。ただし、InPulseは現状では複数のアプリケーションを同時にインストールすることはできず、アプリケーションは、標準のファームウェアを置き換えることになります。ここがちょっと不便で、フェースアプリケーションで、文字盤を切り替えると、アプリケーションによっては通知が単純な表示になってしまいます。いまのところ、プログラミングの好きな人がソフトを入れて楽しむという感じです。

Android側で動作するInPulseアプリケーション。ここから標準ファームウェアの表示設定を切り替えることができるほか、アプリケーションストアから、ファームウェアやフェースアプリケーションなどをダウンロードしInPulseへ転送することができる

inPulse App Storeにある、フェース(文字盤)アプリケーションをインストールするとさまざまな表示の時計を楽しむことができる。このほか、ゲームなどもある

似たような製品には、カシオのBluetooth時計があるようですが、こちらは時計側のファームウェアを変更することができません。ですが、Bluetoothの消費電力が小さいBluetooth 4.0 LE(Low Energy)を採用しており、時計側の電池寿命が2年と普通の時計並です。

このほか、腕時計にAndroidを入れてしまったものに米国モトローラのMotoActiveやi'm Watchなどがあります。

実際には、腕時計型で、腕時計ではないものもの含まれますが、腕に装着する通知装置で時計も兼ねるものは、今後も増えそうな気がします。