怖いものの代表として「地震、雷、火事、親父」なんてことをいう。なにも人間に限らず、飛行機にとっても雷は怖い。ということで、今回は雷に関連する話をいろいろと。

雨雲と雷雲を避けて飛ぶ

飛んでいる飛行機が雷雲の中に突入して、落雷に遭うことがある。この記事が載る直前にロシアで発生したスホーイ・スーパージェット100(SSJ100)の事故でも、事故機が落雷に遭っていたとの報道があった。また、飛行中に大気との摩擦で静電気が発生することもある。

  • 【写真】スホーイ・スーパージェット100 提供:アエロフロート・ロシア航空

    スホーイ・スーパージェット100 写真:アエロフロート・ロシア航空

そこで、機体にたまった電気を外部の大気中に逃がすための仕掛けがある。

この話は氷結への備えに関する話と併せて、詳細は第131回で書いた。

実はそれだけでなく、レーダーで雨雲・雷雲を探して、それを避けて飛ぶ手も使われる。成層圏ないしはそれに近いところまで上がれば、大抵は雲の上だが、ずっと雲の上を飛び続けるわけにもいかない。もっと高度を下げなければならないこともあるし、離着陸もしないといけない。

だから、雷雲を見つけて避けるための仕組みがあるのなら、それに越したことはない。では、どうやって見つけるか。

そこで、機首に気象レーダーを搭載する。雲というのは煎じ詰めると大気中の細かな水滴の集合体だから、そこにレーダー電波を当てれば反射波が返ってくる。

この気象レーダーについては、第53回でも取り上げたことがあるが、重複を避けつつ、もうちょっと詳しく書いてみよう。

気象レーダーで使用する電波の周波数は、Cバンド(5.3-5.4GHz)またはXバンド(9.3-9.5GHz)。ただし、現時点で日本国内で使用しているのは後者で、9.35GHzを中心として±25MHz程度の幅があるゾーンだという。なお、海外ではSバンド(2.8GHz)を使用している事例もあるそうだ。周波数が高い方が分解能が向上するが、電波が減衰しやすくなるため、捜索可能距離は短くなるかもしれない。

参考 : 気象レーダーの概要(総務省Webサイト)

もちろん、大気中の水滴が大きくなれば、その方が反射率が向上するので、スコープには明瞭に映る。普通の雲と雨雲では水滴の大きさが違うので、レーダー・スコープへの映り方も変わる。したがって、レーダー・スコープに映る内容を見ると、降雨の強度分布が分かる仕組みになっている。

「天気が悪くなったら飛ばなければいい」という考えもあるが、民航の定期便でそれをやると欠航が続発する。また、多少の悪天候下でも飛ばなければならない種類の機体もある。自衛隊や米軍の救難ヘリコプター、あるいは特殊作戦用のヘリコプターが一例だ。

だから、この手の機体は気象レーダーを駆使して、雲、ことに雷雲を避けながら飛ぶこともある。本番でそれをやるためには平素から訓練しておなかければならないから、雷雲が出たところで訓練に飛び立つこともあるらしい。

  • 航空自衛隊のUH-60J救難ヘリ。右側、機首前方に向けてポコンと突き出した黒い半球形のドームに気象レーダーが納まっていて、これを使って雷雲を探知しながら飛ぶことができる。なお、機首下面に突き出ているのは電子光学センサー 写真:井上孝司

そもそも落雷の何が怖いのか

人間の場合、落雷に遭うと感電死する、ということで怖さはわかりやすい。では、飛行機の場合は何が危ないのか。

実は、乗っている人が感電するとかいう問題ではなくて、別のところに危険がある。例えば、燃料タンク内に燃料が気化した状態で溜まっていると、落雷によって爆発する可能性が考えられる。そういう意味では、揮発性が高いワイドカットガソリン燃料のJET-B(軍用ならJP-4)燃料と比較すると、現時点で一般的に使われているケロシン系燃料のJET-A(軍用ならJP-5やJP-8)のほうが安全性が高そうではある。

また、近年の飛行機は電子機器の塊で、通信・航法どころか操縦やエンジンの制御も電子機器に依存しているから、その電子機器が落雷で壊されたら一大事である。

地上にいても雷は怖い

雷が怖い場面というと、(筆者はプレーしたことがないが)ゴルフがそれらしい。開けた屋外を動き回っていて、おまけにゴルフクラブだの樹木だのと、雷が落ちやすいものが手近なところにある。また、山に登っている時も落雷は怖そうだ。

そういう意味では、開けた飛行場に駐機している飛行機だって雷は怖い。ということで、地上にいる時の雷よけの話を1つ。

アメリカ海兵隊が、地上に駐機している飛行機に雷が落ちないようにするための避雷針を発注することになった。その一部は岩国基地に配備されるそうだ。

岩国基地といえば、最新鋭のF-35BライトニングIIがいる基地である。つまり「(F-35)ライトニング」を「落雷(ライトニング)」から護るために避雷針が必要、という駄洒落のような話になってしまった。LBAテクノロジーズ社という会社が14セットを受注している。

もっと安全・確実な方法としては、機体を格納庫にしまい込んでしまう方法もある。

なお、機体は避雷針(というか、静電気を外部に逃がすための針)を取り付けているので、まだマシだ。しかし、屋外で機体のハンドリングや燃料・貨物などの積み込みを担当する要員は話が違う。落雷の危険性があって退避の指令が出ると、地上での業務が止まってしまう。

そういえば。2018年7月22日に福岡空港で、誘導路の路面が縦横それぞれ40cmほど、深さ10cmほどにわたってはがれているのが見つかって一時閉鎖、という騒ぎがあった。この犯人が落雷だったという。落雷で舗装が壊される事例は、あまり聞かない。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。