前回、3月半ばにソニーの望遠ズームレンズ「SEL70200GM」(FE 70-200mm F2.8 GM OSS。以下、旧型)で早咲きの桜を撮影しましたが、今回は新しい「SEL70200GM2」(FE 70-200mm F2.8 GM OSS II。以下、新型)を借りて、都内の桜スポットを巡ってきました。
新70-200mmレンズはとにかく軽い!
「あれ、間違えてF4のGレンズ(SEL70200G)を送ってきたのかな?」
最初に試用機の入った荷物を受け取ったときの感想がこれでした。新型と旧型の本体重量の差は約435g(三脚座を除く)。頭では分かっていたのですが、体感でこれほど違うとは……。とにかく軽い、革命的な軽さです。
旧型の重さでも仕事で必要なときや、趣味でこれをメインで使うぞ、というのなら苦になりませんが、「持っていったほうがいいかな」くらいの感じだと、どうしても重さがネックで持ち出さないことも多かったのです。しかし、新型の重さならば常に持っていきたいと思わせてくれます。
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新旧70-200mm F2.8の比較(表:著者作成
※編注:一般的に、明るく高性能なレンズほど大口径で重いレンズとなることが多い。SEL70200G(FE 70-200mm F4 G OSS)はズーム全域でF4通しのやや暗いレンズで、重さは840g(三脚座を除く)。これに対して、旧型SEL70200GMはF2.8通しと明るいレンズだが、約1,480g(同)と重かった。新型SEL70200GM2では、明るさはそのままに性能強化と軽量化を両立させ、従来より435g軽い約1,045g(同)を実現している。
そして、試し撮りしてみてすぐに感じたのは、AFの静かさです。旧型は合焦時にレンズの移動が大きくなると「ゴッ」といったモーターの音がします。迷ったときは明らかに「ゴゴー、ゴゴー」という感じの音がします(筆者が3年半前に購入したものなので、経年の影響もあるかもしれません)。
一方、新型は合焦時はもちろん、AFが迷ってもまったくといっていいほど音がしません。動画撮影時にAFの駆動音が入ってしまうこともないと思われます。
AFの速さについては、うたい文句の「最大4倍」というほどの差は感じませんでしたが、静物でも動体でも明らかに速くなったと感じられました。
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鏡胴には物理スイッチが多数並ぶ。(中央上の)FULL TIME DMFは、AF有効時でもピントリングを動かすことでマニュアルでのフォーカス調整を可能にする機能だが、誤動作を防止するためにスイッチが付いている
咲き誇る桜——荒川沿い
さっそく桜撮影に持ち出してみます。軽いので仕事の帰りなどでカジュアルに、さまざまなところへ持ち出して撮影できました。まずは3月末に荒川沿いへ(新荒川大橋付近)。満開とはいかないまでも、川沿いの土手に桜が咲き誇っていました。軽く流す程度でしたが、良い感じに春らしい光景が撮れたのではないかと思います。
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花見を楽しむ人、遠景には橋を入れて。フォーカスは手前の地面に。桜を含む遠景をボカすことで柔らかい空気感を演出した
α7C/SEL70200GM2/75mm/絞り優先AE(F2.8・1/2,500秒)/ISO100
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同じく開放で手前側の地面にフォーカス。地面すれすれの位置からバリアングル液晶を見ながら片手のみで支えて撮っている。旧型ならば重くてプルプルしてしまうところだが、新型ならばさほど苦にならない
α7C/SEL70200GM2/200mm/絞り優先AE(F2.8・1/2,000秒)/ISO100
桜と都電——飛鳥山公園
荒川の後は飛鳥山公園へと行きました。ここの桜はあまり下まで垂れ下がっておらず、基本的に見上げる桜ですが、敷地内のアップダウンを利用して、ある程度前ボケなども入れられます。近くに路面電車(都電荒川線)が通っていて、風情ある写真が撮れるのもポイントです。
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望遠ならではの圧縮効果でボリュームアップ。丘の上の桜を前ボケに、下の広場の桜を後ボケに入れて、桜が時計台の周囲を囲んでいるような効果を演出した
α7C/SEL70200GM2/135mm/絞り優先AE(F2.8・1/320秒)/ISO100
散りゆく桜——目黒川
同じく3月末、東京最大の名所とも言われる目黒川にも行ってみました。こちらは川沿いにしなだれかかる桜が特徴です。訪問時はあいにくどんよりとしたくもり空でしたが、ほぼ満開の桜が楽しめました。
広角でパースを生かしたダイナミックな構図のイメージが強い場所ですが、望遠ズームがあれば、人が密集する場所に入っていかずに、景観を入れた構図を作ることもできます。
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電車と一緒のカットがうまく決まらなかったため、1週間後に再び訪れて撮った。だいぶ散ってしまったが、構図的には満足
α7C/SEL70200GM2/70mm/絞り優先AE(F8・1/250秒)/ISO640
GMレンズの描写に酔う——昭和記念公園
最後は、立川にある昭和記念公園です。進化した近接性能を生かしたファンシーな桜を撮りたいと思い、4月第一週の週末に出かけました。広大な敷地で桜の木が多く、天気にも恵まれ、狙いどおりにボケを生かしたフワッとした桜が撮れました。グッと寄れるようになった近接性能とともに、まさにとろけるような、ボケの美しい描写。これは最新のGMレンズならではでしょう。
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望遠端のAPS-Cクロップで撮影。とろけるような美しいボケはGMレンズならでは
α7C/SEL70200GM2/200mm/絞り優先AE(F4・1/2,000秒)/ISO200 APS-Cクロップ・300mm相当
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広角端のAPS-Cクロップで寄ると、ここまで大きく撮れる。ボケの滑らかな描写がたまらない
α7C/SEL70200GM2/70mm/絞り優先AE(F8・1/500秒)/ISO200 APS-Cクロップ・105mm相当
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広角端のAPS-Cクロップ。アウトフォーカス部、明暗差の大きな部分もうるささがまるで感じられない
α7C/SEL70200GM2/70mm/絞り優先AE(F2.8・1/4,000秒)/ISO200 APS-Cクロップ・105mm相当
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光条を出すため絞って太陽に向けてみた。カメラ側のダイナミックレンジの限界はあるが、シビアな条件にもかかわらず破綻のない描写、色収差の少なさに驚く
α7C/SEL70200GM2/70mm/絞り優先AE(F14・1/320秒)/ISO100 APS-Cクロップ・105mm相当
写真表現の幅が広がる新70-200mm
F2.8通しの望遠ズームレンズというと、遠くのものを大きく撮ったり、スポーツなどの動きものを撮ったりするイメージが強いと思いますが、それ以外でも写真表現の幅をグッと広げてくれます。新型のSEL70200GM2は、最短撮影距離が短くなったことでさらに用途が広がったといえるでしょう。
そして、SEL70200GM2の魅力はなんといっても軽さです。これだけあちこち持ち出せたのも約1,045gという軽さがあってこそ。旧型より約435g軽いというのは、数字だけ見るとさほど大きな差ではないように思うかもしれませんが、体感ではまるで違います。そして、実際の現場ではさらに何倍も効いてきます。
というのも、望遠の特性を生かした構図は足を使うことが多いのです。上から撮るために階段を上がったり、ローアングルから狙うためにかがんだり、這いつくばったり。被写体から思い切り離れて撮影することもありますし、離れたり近づいたりしながらフレーミングを調整することもしばしば。実際に持ち歩いてみて、旧型とは撮影後の(体への)ダメージがまったく違うことを実感できました。
また、画質、描写性能の良さも特筆したいと思います。今回は画質を追い込んで評価できていませんが、無意識に撮影していたのに、データを見てみるとその片鱗をまざまざと実感してしまいました。直販33万円と高価なレンズではありますが、価格に見合う価値があるのは疑いのないところでしょう。