ダッソー・システムズは6月18日~21日の4日間、アメリカ・ボストンにて”サイエンス”をテーマとした年次グローバルイベント「SCIENCE IN THE AGE OF EXPERIENCE 2018」を開催した。本連載では、同イベントで行われたセッションや、現地でのインタビュー取材の様子をお届けする。

第3回となる今回は、同イベントのセッションにて語られたダッソー・システムズの最新の「3DEXPERIENCE」プラットフォームがユーザーにもたらす価値、および同社が現在注力している戦略について紹介する。

「SCIENCE IN THE AGE OF EXPERIENCE 2018」
ダッソーが”サイエンス”をテーマとして開催する年次グローバルイベント。
ダッソー・システムズが提供する、シミュレーションソフトウェアの「SIMULIA」ブランド、ライフおよびマテリアルサイエンスの「BIOVIA」ブランドのユーザーを中心とし、エンジニアや研究者、企業関係者、学術関係者などが集い、現代社会において科学が果たすべき役割についての最先端の知見や事例を共有する会で、2018年で3回目の開催となる。

  • ダッソー・システムズが提供する「3DEXPERIENCE」プラットフォーム。マーケティングから販売、エンジニアリングに至るまでの領域をカバーするソフトウェアが各種組み込まれており、多くの産業分野で活用されている

既存データを最大限に活用し、開発サイクルを加速

「Accelarating Innovation with 3DEXPERIENCE Platform」と題されたセッションに登壇したダッソー・システムズのSrinivas Tadepalli氏(クラウド戦略開発ディレクター)は、「サイエンスを発展させる上で重要となる『仮説を立て検証し知見・ノウハウを得る』というサイクルは、近年のシミュレーション技術の向上によって加速している。そのサイクルを加速されるために重要となることの1つが、データの有効活用だ」と語る。

  • サイエンスの発展に必要なサイクル。ダッソーは3DEXPERIENCEプラットフォームによってこのサイクルの高速回転に貢献する

続けて同氏は、3DEXPERIENCEプラットフォームを用いることで、企業や研究機関が保有しているデータを1つのプラットフォーム上で蓄積できる点、およびその蓄積されたデータを活用し、同一プラットフォーム上で使用可能な各種ソフトウェア(SIMULIAやCATIA、SOLIDWORKSなど)を用い、設計から検証、製造に至るまでの各工程をシミュレーションすることができる様子を紹介。蓄積データを有効に活用することが製品のライフサイクルの加速につながる点を強調した。

さらに、実際に作業している際の動画を会場に見せながら、3DEXPERIENCEプラットフォームに搭載されている複数の検索機能を用いることによって、任意のデータを容易に得られることを示した。例えば、3Dコンテンツの検索ができる「3Dサーチ機能」では、設計図上の3Dパーツを選択し検索をすることで、蓄積されたデータベース上に存在する、同様の形をした部品の情報を得る様子が見られた。

そのほか、同プラットフォームを用いることで、社外と共有したいデータをセキュリティレベルを設定したうえで共有することも可能であることから「社内だけではなく、社外との製品開発におけるコラボレーションにも貢献する」と続ける。

既存システムを活かす、「POWER'BY戦略」

続けて同氏は、3DEXPERIENCEの利便性を高めるために現在ダッソー・システムズでは、「POWER’BY戦略」に注力していることを説明した。では、その戦略とはどのようなものか?

現状、企業や研究機関は各自の得たデータをそれぞれスタンドアローンのシステムで保管しており、かつ特有のGUIを用いていることが少なくない。そのため、そのスタンドアローンのシステムに慣れている人にとっては、新たに3DEXPERIENCEの独自GUIで作業を行うことは作業の非効率化に結び付きかねない。

そこでダッソーは、顧客が使っているシステムのGUIはそのままに、データの保管場所を3DEXPERIENCE上のデータベースと結びつけることによって、”3DEXPERIENCEプラットフォームの恩恵を受けながら”使えるようにしているとのこと。

つまり、顧客のデータは3DEXPERIENCEプラットフォーム上で管理し、かつシステムも同一プラットフォーム上で(なおかつネイティブのGUIで)使用できるようにすることによって、顧客の資産を最大限に活用しながら製品のライフサイクルの加速化を目指している。これが同社の「POWER'BY戦略」となる。

  • ダッソー・システムズの「POWER'BY 戦略」(資料は2018年4月13日に行われた記者説明会で用いられたもの)

同社の説明員は「現在、買収した企業のシステムや既存顧客のシステムが徐々に3DEXPERIENCEプラットフォームとつながってきている。そのため、もともとの3DEXPERIENCEのGUIとPOWER’BYによって3DEXPERIENCEと結びついたシステムのGUIが混ざり合っている状況にあるが、将来的にはこれらをすべて統合して1つの3DEXPERIENCEネイティブのGUIに変えていきたい」と今後の展望を語る。

なお同社では、この戦略のほかにもクラウド上でのサービス提供にも力を入れているとのこと。それによってユーザーにはどのような恩恵をもたらすのか?同社のクラウド化への取り組みについては、本連載第5回にて紹介する。