3月、Appleから新しい「iPad Air」が発売されました。iPad Airは、エントリーモデルの「iPad」と、プロ仕様の「iPad Pro」との間を幅広くカバーするオールラウンダーの位置にあり、AI時代に合わせてその基礎体力がさらに強化されました。
同時に「MacBook Neo」「MacBook Air」も発売されましたが、iPadとMacBookのどちらを買うか迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
MacBook Neoは2024年モデルのiPhoneに搭載されたA18 Proチップという"モバイル出身の頭脳"を持っています。一方でiPad AirはOSの機能で複数ウィンドウの表示が可能になり、Magic Keyboardを装着した時の"PCっぽさ"がますます強化されました。価格も含め、デバイスの境界線は以前より近付いてきたと言えるでしょう。
筆者の同業者には、仕事のほとんどをiPadでこないている人もいます。実際のところ、iPadだけの環境はMacとどの程度違うのでしょうか。今回筆者は13インチiPad Air(M4)を試用する機会を得て、日常の仕事の中で試してみました。
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新しい13インチiPad Air(M4)。Magic Keyboardは、そのままApple Pencilで書けるくらい安定感あり。ただし、ペイントに使う場合はSmart Folioや、サードパーティ製のケースやカバーがおすすめ
iPadだけで日常的な仕事をしてみると
今回はMagic Keyboardを装着したスタイルで使用してみました。具体的には次のようなシーンです。
1)文章を書く
WordやGoogleドキュメントなどのアプリを使えば、Macとほぼ変わらない操作性を簡単に実現できます。逆に難しいのは、MarkdownやHTMLの編集が必要なテキストです。機能や使い勝手がフィットするテキストエディタアプリを探したり、使い慣れた形にツールやショートカットをカスタマイズしたりする必要があります。
2)図版を制作する
Macで図版制作に使っているAdobe Photoshopは、同じライセンスでiPad 版も使用できますが、UIが大きく異なり、機能も比較的ペイント向けに絞られています。筆者にとって致命的なのは、図形や直線を描画する「シェイプツール」がないことです。
そこで、代替として「Canva」を使用してみました。ドキュメントから動画まで様々なタイプの制作に対応するアプリで、「プレゼンテーション」ツールを使えば、画像や文字、図形を自由に配置することができます。これをJPGやPNGで書き出せばOKです。
3)原稿を入稿する
原稿が完成したら、メールやチャットで編集部に送ります。これは従来からクラウドストレージ経由でダウンロードリンクを共有しているので、手順はMacと変わりません。
「作業ができる」と「仕事ができる」は違う
予想通り、それぞれの作業は問題なく実行できたほか、動画視聴、読書、ペイント、SNS、スケジュール管理などなど、多くのことがiPad Airだけで完結できました。iPhoneを手にする回数が減ったほどです。
目の前の1台だけであらゆることをこなせる万能感と信頼感。Magic Keyboardの重さは感じながらも、自分のニーズを満たしてくれるアイテムには愛着が湧くものです。
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13インチiPad Air本体は621g。Magic Keyboardは753g。合計で1,374g。Apple Pencilをつけると1,394gです。ちなみにApple純正のスマートフォリオ(カバー)は279g
しかし、筆者がすぐにiPad Airだけの環境へ移行できるかというと、そう簡単ではありません。試してみて分かったのは、最大の壁が「今あるワークフローである」ということです。
iPadで個別の「作業」ができたとしても、「仕事」全体の流れをカバーできるかというと、そうはいかない部分がどうしても出てくるのです。それは、現在の筆者のワークフローがmacOSという"物理法則"の上で最適化されてきたことに原因があります。
例えば「Webやメールやデジカメから素材となるファイルを探し集め、まとめて整理する」といった、制作前の準備段階などがそれです。Macでやっていたのと同じことをiPadでやろうとすると、機能としては可能でも、ファイルの確認や移動、管理の面で余計な工数がかかってしまいます。
ただし、これはMacをメインにした環境で築いてきたワークフローをそのままiPadで再現しようとするから起こる不具合です。iPadの環境に最適化していくことは可能ですし、これから新しくワークフローを築いていくならiPadに合わせて構築できるはずです。
iPadに適した新しいワークフローが必要
「MacかiPadか」という迷いに対して「まだまだiPadではできない部分がある」という答えは、半分正解ですが、半分はそうではありません。逆に、iPadにできてMacにできないこともたくさんありますし、「できない」「足りない」部分は、おそらくPCを前提にした「従来のやり方」との間に生じてしまうギャップが主な原因です。
ですから、既存の(PC前提の)ワークフローの中で使うのであれば、Macを選んだほうがスムーズです。しかし、個人で完結する仕事やPCとの連携が薄い環境でなら、MacにできてiPadにできないことは、もはやほとんどないと考えていいでしょう。
仕事内容や使用目的によっては、そうでない見方もあると思います。「MacかiPadか」で悩んでいる方は、デバイスの機能・スペックそのものも重要ですが、自分のやりたいことをやっている先人たちのデバイス活用方法にも注目してみると良いのではないでしょうか。
ランニングコストも考慮しよう
最後に、iPadを選ぶ際にはランニングコストも予め考慮に入れることをお勧めします。
高機能で信頼性の高い(特にビジネススタンダードの)アプリは、多くの場合サブスクで提供されています。PC用ソフトウェアでは当たり前だった「買い切りモデル」が、iPadアプリでは比較的少ない傾向があります。無料アプリは広告表示や機能制限のある場合が多く、仕事向きには妥協の限界がありますし、アップデートが滞り動作が不安定になっているケースも少なくありません。
クラウドストレージやAIの有料版も必要かもしれません。もちろん、Wi-Fi+セルラーモデルで通信契約をすれば、毎月の通信料も必要です。
前モデルから価格は維持しつつスペックが強化され、お買い得感のあるiPad Airですが、高価であることには変わりなく、買った後もお金がかかる世界と直結していることを忘れてはいけません。そして無料で多くのものが手に入る一方、自分やデバイスを守るリテラシーも求められます。デバイスを手に入れたら、責任を持った使い方を身につける意識も同時に大切にしましょう。







