日本シーゲイト株式会社は3月13日、都内でメディア向けの説明会を開催し、同社が推し進める次世代記録方式を用いたハードディスク製品について紹介した。改良を継続して「Mozaic 4+」と名称が更新され、ついに信頼性がクラウドサービス事業者の認定を受けるまでになっているという。

  • Seagate「Mozaic 4+」実用化。鉄プラチナ合金とHAMR技術でハードディスクは1つで44TBもの大容量に

    Seagate「Mozaic 4+」実用化。鉄プラチナ合金とHAMR技術でハードディスクは1つで44TBもの大容量に

説明会には日本シーゲイト株式会社から代表取締役社長の新妻 太 氏が登壇してビジネス面での説明を行い、加えてSeagate Technologyからアジア地域メディア開発担当シニアディレクターのThomas Chang氏が製品に採用されている技術について紹介した。

  • 日本シーゲイト株式会社 代表取締役社長 新妻 太 氏

    日本シーゲイト株式会社 代表取締役社長 新妻 太 氏

世界中のデータ量が飛躍的に増大し続けるなか、Seagateは独自調査で2029年までに527ゼタバイトものデータが世界中にあふれると推計。さらに昨今活用が進むAIについても触れ、これらの進化の源泉がそのデータによるものだと言及した。データこそがデジタル経済においてもっとも価値のある資産になりつつあり、このデータを保存して高速なアクセスを提供するストレージデバイスのプレゼンスが一層高まっているという。

また、クラウドストレージの約87%もの容量がハードディスクで提供されていることについても言及した。データセンターあたりの容量、ラックあたりの容量は最終的にハードディスク1つあたりの容量が大きく影響するため、ハードディスクの大容量化がデータセンター事業者にとってきわめて大きなインパクトを持つことになるという。

そこでSeagateでは、現在「Mozaic 4+」技術を適用した次世代ハードディスク製品を提供中。現行最新モデルではドライブ単体で最大44TBもの大容量を実現しており、従来製品比で大幅な容量の拡張が行われている。ラックあたりのストレージ容量を大幅に増やすことができ、TCO(Total Cost of Ownership)の削減も可能。先進的な技術を適用した製品ながら、主要ハイパースケール・クラウドプロバイダー2社から認定をうけて納入・実運用を開始したという。

  • NANDは高速性に優れるが、コストと容量のバランスではまだまだハードディスクもオールドメディアにはならない。クラウドストレージ容量の87%をハードディスクが支えているという

    NANDは高速性に優れるが、コストと容量のバランスではまだまだハードディスクもオールドメディアにはならない。クラウドストレージ容量の87%をハードディスクが支えているという

  • HDDといえば記録方式の違いまで気にされる製品。大容量化を実現するMozaic 4+技術適用製品がデータセンターでの使用に堪えるとアピールした

    HDDといえば記録方式の違いまで気にされる製品。大容量化を実現するMozaic 4+技術適用製品がデータセンターでの使用に堪えるとアピールした

次いでThomas Chang氏がMozaic 4+技術について説明した。従来ハードディスク製品の記録に採用されてきたPMR(Perpendicular Magnetic Recording、垂直磁気記録)は、磁気データをプラッタに対して垂直に並べていく。しかしプラッタあたりの容量を増やすために磁性粒子をこれ以上小さくすると、室温程度の熱で記録した磁力が揺らいでしまい、データを保持できなくなる限界に達してしまう。これが十分な信頼性を維持したまま大容量化を進めるためのハードルになっており、大容量化が難航していたという。

  • Seagate Technology アジア地域メディア開発担当シニアディレクター Thomas Chang氏

    Seagate Technology アジア地域メディア開発担当シニアディレクター Thomas Chang氏

そこで、Seagateではプラッタ素材に全く新しい鉄プラチナ合金を採用する「HAMR、Heat-Assisted Magnetic Recording(熱アシスト磁気記録)」を実用化して解決した。鉄プラチナ合金は常温で磁力の向きが非常に安定している合金で、従来の方法ではデータ書き込めないほど。しかし高温下では磁力の保持力が低下する性質も持ち合わせているため、データを記録する一瞬だけ磁気ヘッドがレーザーで記録面を加熱し、データの書き込みを行う。新素材を用いたプラッタ、熱を用いた全く新しい書き込み方法に対応する磁気ヘッド、耐熱性能などさまざまなブレイクスルーによって、HDDを大容量化する「Mozaic 4+」の実用化を実現したと述べた。

  • ほぼ丸ごと自社開発・自社製造なのもSeagateの強み。新開発の磁気ヘッドに適用するフォトニクス技術も独自開発

    ほぼ丸ごと自社開発・自社製造なのもSeagateの強み。新開発の磁気ヘッドに適用するフォトニクス技術も独自開発

  • 理論上はあり得ても、実用化には程遠いと思われてきたHAMR。製品としての導入ができてうれしいと相好を崩す場面も

    理論上はあり得ても、実用化には程遠いと思われてきたHAMR。製品としての導入ができてうれしいと相好を崩す場面も

DRAMやNANDの需給バランス崩壊が報道されるようになった昨今だが、クラウドプロバイダーはいまだ記憶容量の増大に対応するべくハードディスクの調達を続けている。Seagateはより大きなハードディスク製品の開発を続けてデータセンター向けの量産・出荷を継続し、業界をリードしていくと締めくくった。

ちなみに、HAMR技術を適用したハードディスク製品は消費者向けにも販売中。一部IronWolfブランドの超大容量モデルですでに導入されており、最も大きいものでは32TBモデルなどが日本国内でも購入できる。