シャープは、亀山第2工場での液晶パネルの生産を停止すると発表した。

鴻海グループへの譲渡を目指して、協議を進めてきたが、不成立になったことを理由にあげている。既存顧客の需要に応えるための先行生産や、在庫の確保を行ったうえで、2026年8月を目途に生産を停止。その後に売却を進めることになる。2006年8月の稼働から、20年目の節目で「火を落とす」ことになる。

  • 亀山の工場群。亀山第2工場は、「世界の亀山モデル」として一世を風靡したシャープの液晶テレビ向けパネルの生産拠点。写真で手前左が第1工場、右が第2工場

    亀山の工場群。亀山第2工場は、「世界の亀山モデル」として一世を風靡したシャープの液晶テレビ向けパネルの生産拠点。写真で手前左が第1工場、右が第2工場

亀山第2工場の生産停止を発表、鴻海との関係は?

2026年2月10日に行った2025年度第3四半期連結業績発表の席上、亀山第2工場の生産停止を発表したシャープの沖津雅浩社長 CEOは、「もともとシャープ単独では事業継続が厳しいという理由から、終息を想定していたが、鴻海が亀山第2工場の顧客の1社として、グループ内に多くの液晶バネルを供給していることから、鴻海が取得すれば、シナジー効果が生まれ、事業継続が可能であると考え、2025年5月以降、鴻海への譲渡に向けて協議を進めてきた。だが、今後の価格推移や需要などを捉えた結果、2025年12月末に、鴻海にとっても、将来に渡ってメリットが出ないという結論が出たことで、今回の決断に至った」と説明した。

  • 2025年度第3四半期連結業績発表の席上、亀山第2工場の生産停止を発表したシャープ 代表取締役社長執行役員CEOの沖津雅浩氏

    2025年度第3四半期連結業績発表の席上、亀山第2工場の生産停止を発表したシャープ 代表取締役社長執行役員CEOの沖津雅浩氏

亀山第2工場は、「世界の亀山モデル」として一世を風靡したシャープの液晶テレビ向けパネルの生産拠点で、「工場の差が、テレビの差になる。」をキャッチフレーズに、他社製品との差別化そのものが、亀山第2工場で生産したパネルであることを訴求。国内トップシェアの座を維持してきた。

第8世代と呼ばれる2160mm×2460mmのマザーガラスでの生産が可能で、2006年8月の稼働時には世界最大のパネルサイズを誇った。液晶テレビの普及期に、大画面化を牽引する役割を担い、シャープの液晶事業を象徴する工場であった。

シャープでは、生産停止に伴う事業構造改革費用として、2025年度に100億円を計上。そのうち、長期契約をしているユーティリティに関する将来費用の引き当てで約26億円、社員の希望退職に関する必要で約73億円を見込んでいる。亀山工場で勤務する1170人が希望退職の対象になる。

シャープの小坂祥夫CFOは、「人員の費用の一部については、2026年度に約20億円の繰り越しが発生する見通しである」とし、2025年度分とあわせて、約93億円の人員費用を想定している。

なお、鴻海と連携したAIデータセンター市場への参入について、シャープでは亀山第2工場を活用する考えを示していたが、亀山事業所内のテレビ組立工場の建屋を活用することを基本として、継続的に推進する考えを示した。

「今回の件で、鴻海との関係が悪化したということはない」(沖津社長CEO)とした。

  • 「今回の件で、鴻海との関係が悪化したということはない」

    「今回の件で、鴻海との関係が悪化したということはない」

一方で、堺ディスプレイプロダクト(SDP)についても、インド大手企業の液晶工場への技術移転が不成立となり、事業終息を決定した。SDPに勤務する約240人は退職することになる。2025年度の事業構造改革費用として22億円を計上した。

SDPには、第10世代の液晶パネル生産設備が導入されていたが、この設備の受け入れ先はなくなる。

沖津社長 CEOは、「今回のインドプロジェクトの終了に伴い、シャープの大型パネルの研究開発は継続しない」とした。シャープの大型液晶パネル事業は、引き取り先がないまま、完全に終了することになる。

また、閉鎖を発表しているシャープ米子については、すでに2019年に液晶パネルの生産を終了しており、それ以降は、亀山工場などの一部業務を行ってきた経緯を説明。2026年7月の完全閉鎖を予定しており、約160人の社員が退職することになる。構造改革費用として22億円を計上している。

今後、シャープの液晶パネル事業は、亀山第1工場と、白山工場で、中小型パネルの生産に集中することになる。

「亀山第1工場では、2026年度から欧米自動車メーカー向けの車載パネルの量産が立ち上がり、関連するベトナムのモジュール工場も設備を整え、2026年度の生産立ち上げに向けた準備が完了しているところである」とし、「今後は、付加価値の高いカスタム品に注力することになる。Nano LEDをはじめとした次世代技術開発への投資も継続していく。中小型パネルではナンバーワンを目指す」との意欲をみせた。

中期経営計画で掲げているディスプレイデバイス事業の2026年度の営業黒字化、2027年など最終利益の黒字化の方針には変更がないという。

2025年度第3四半期(2025年4月~12月)決算の中身

シャープが発表した2025年度第3四半期(2025年4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比14.5%減の1兆4176億円、営業利益は同101.0%増の409億円、経常利益は8億円から477億円に拡大、当期純利益は前年同期の35億円の赤字から675億円の黒字に転換した。

  • 2025年度第3四半期(2025年4月~12月)実績

    2025年度第3四半期(2025年4月~12月)実績

  • 2025年度第3四半期(2025年4月~12月)営業利益の要因別分析

    2025年度第3四半期(2025年4月~12月)営業利益の要因別分析

  • 2025年度第3四半期(2025年4月~12月)セグメント別売上

    2025年度第3四半期(2025年4月~12月)セグメント別売上

  • 2025年度第3四半期(2025年4月~12月)セグメント別営業利益

    2025年度第3四半期(2025年4月~12月)セグメント別営業利益

第3四半期の3カ月間(2025年10月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比16.8%減の4673億円、営業利益は前年同期比39.6%減の120億円。経常利益は前年同期の6億円の赤字から、141億円に黒字転換。当期純利益は前年同期の265億円の赤字から、220億円となった。

  • 第3四半期の3カ月間(2025年10月~12月)実績

    第3四半期の3カ月間(2025年10月~12月)実績

  • 第3四半期の3カ月間(2025年10月~12月)営業利益の要因別分析

    第3四半期の3カ月間(2025年10月~12月)営業利益の要因別分析

シャープの沖津雅浩社長 CEOは、「第3四半期累計では、全社トータルで減収となったものの、営業利益は前年同期から倍増している。経常利益や最終利益も大きく改善した。売上高、営業利益は想定通り進捗している」と総括。「ブランド事業の売上高は、需要の低迷や競争環境の激化の影響などがあり減収となったが、営業利益は2桁増益を達成した。ディスプレイデバイスは減収となるも、営業赤字が縮小した」と述べた。

なお、第3四半期には、本社工場棟の売却などによる固定資産売却益や、カメラモジュール事業に関連した事業譲渡益を特別利益として計上する一方、テレビ生産を行っていたマレーシア工場の閉鎖などに伴い、30億円の事業構造改革費用を特別損失として計上している。

第3四半期3カ月間のセグメント別業績は、ブランド事業の売上高が前年同期比6.9%減の3647億円、営業利益は同24.7%減の222億円となった。そのうち、スマートライフの売上高が前年同期比8.9%減の1571億円、営業利益は同14.2%増の84億円となった。

  • スマートライフ。国内ではヘルシオが好調だったが、大型家電で苦戦し、ASEANは冷夏でエアコン販売不調。一方で高付加価値シフトが功を奏す

    スマートライフ。国内ではヘルシオが好調だったが、大型家電で苦戦し、ASEANは冷夏でエアコン販売不調。一方で高付加価値シフトが功を奏す

「白物家電事業、テレビ事業、エネルギーソリューション事業がともに減収。白物家電事業は、国内ではヘルシオが好調だった調理家電が伸長し、理美容家電も好調に推移している。だが、洗濯機や冷蔵庫などの大型家電が、2025年後半から厳しい市況環境に陥り、前年同期に及ばなかった。海外では、米州の調理家電が引き続き伸長したほか、タイやベトナムで、空気清浄機や除湿機が好調に推移したが、冷夏によって、ASEANのエアコンの流通在庫が高止まりした影響により、エアコンの販売が不調だった」という。

また、「国内家電市場は、2026年度には大きく下方に振れることはないだろうが、中国メーカーや量販店のPBブランドと、どう戦うかが重要になる。また、B2B市場を意識した家電にも力を入れていく予定であり、2026年もこの分野の新製品を投入する。海外では、アジアでのエアコンの回復、付加価値商品へのシフトのほか、アフリカおよび中近東に注力。米国の調理家電は関税による価格上昇があったが、あまり影響は受けていない。米西海岸エリアにも新たに販路を広げているところだ」と述べた。

さらに、「テレビ事業は、他社攻勢の影響から国内の売上げが前年同期を下回った。国内向けは、中国の南京工場で自社設計、自社生産を行っているが、付加価値の高いモデルだけを日本の技術者が設計している。付加価値の出るところに人を集中し、競合に対抗していく。裾野の製品については、自社工場にこだわらずに、メリットがあれば、どこかの会社と組むことも検討している。また、グローバルに構造改革を進めており、海外向けについては、ODMおよびOEMによる生産へとシフトしており、固定費をかなり落としている。すでに、改善の兆しが出ている」とした。

エネルギーソリューション事業は、国内住宅用が堅調に推移し、蓄電所向けやアジア地域も伸長したものの、国内EPCなどの売上げが減少した。

スマートワークプレイスは、売上高が前年同期比5.3%減の2075億円、営業利益は同37.6%減の137億円となった。PC事業やビジネスソリューション事業が増収となったが、通信事業は減収になったという。

  • スマートワークプレイス。PC事業は伸びたが、メモリ高騰の懸念も

    スマートワークプレイス。PC事業は伸びたが、メモリ高騰の懸念も

「PC事業では、Windows 11への切り替え需要が継続するなか、プレミアムモバイルモデルが好評で、国内のB2Cや、官公庁および自治体向けが大幅に伸長した。とくにB2Cは、年末にかけてメモリ価格上昇を意識して購入を急ぐ動きがあり、7割超の増収になった。だが、Windows 10のEOSによる需要がずれこんだのかもしれない。B2Bでは、官公庁および自治体向けのほか、GIGAスクール向けの販売も好調だった」という。

また、ビジネスソリューション事業では、オフィスソリューションやMFPが好調。オフィスソリューションでは、世界的なオフィスのIT化が進むなか、動きが顕著な欧州でのニーズを着実に取り込み、大幅な増収となったという。

「MFPは、厳しい事業環境が続いているものの、新製品が好調に推移したことから、日欧に加えて、政府機関の閉鎖や、関税の影響があった米国でも増収になった」と述べた。 通信事業は、他社攻勢の影響が大きく、前年同期を下回った。「携帯電話事業では、中級クラスに力を入れて、ここで強さを発揮できる製品を開発し、差別化を図り、シェアを取り戻す。中国2社で生産しているが、これを集約し、数量的メリットやサプライチェーンのコスト力向上につなげる考えである」と述べた。

なお、メモリ価格の高騰などについては、「ビジネスには逆風になっている」と前置きし、「PC、携帯電話、複合機に使用するメモリは先行して確保し、2026年4月~6月に向けても、PO(パーチェスオーダー)を出しているが、価格高騰とともに、手に入らないというところが課題であり、日々、部材の確保に努めている。とくに、メモリの使用量が多いPCが価格影響を受けている。2026年1月から、PCメーカーの一部で値上げを実施しており、4月に向けて各社の価格が上昇してくるだろう。B2Cについては、それを前に店舗での購入促進が展開されることになりそうだ。3月までは駆け込み需要があると見ている」とした。 シャープが展開するDynabookでは、メモリ価格の上昇に対して、「値上げで対応していくことになる」とした。

また、「携帯電話についても、次年度モデルが登場する際に、全メーカーの価格が一気に変わる可能性がある。メモリに対する原材料費率がPCよりも高い。現行モデルをいまの時点で購入するといった動きも出てきそうだ」とした。

2025年12月時点での全社棚卸資産が、月商比で1.69カ月となり、増加しているが、「円安の影響があったこと、需給がタイトで価格も高騰しているメモリなどを先行調達したことが影響している。だが、今後の販売計画に沿った適正水準である」と説明した。

ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比15.4%減の1035億円、営業利益は前年同期のマイナス34億円の赤字からマイナス48億円の赤字に拡大した。「スマートフォン向けパネル事業を終息したことに加え、PC・タブレット向けが、顧客需要が強かった前年同期の実績に及ばなかったこと、車載向けデバイスでは、取引先の一時的な減産による影響があったことなどが影響した」という。

  • ディスプレイデバイスはスマホ向け終息やPC需要減、車載向けデバイスの減産などでマイナス

    ディスプレイデバイスはスマホ向け終息やPC需要減、車載向けデバイスの減産などでマイナス

通期業績は利益目標達成の見通し、EV参入はどうなる?

2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通しは、売上高は据え置き、前年比13.4%減の1兆8700億円、営業利益も据え置き、同13.4%%増の450億円としたが、経常利益は70億円増額の前年比194.6%増の520億円とした。当期純利益は据え置き、同46.8%増の530億円としている。

  • 2025年度(2025年4月~2026年3月)業績の見通し

    2025年度(2025年4月~2026年3月)業績の見通し

  • 2025年度(2025年4月~2026年3月)セグメント別業績の見通し

    2025年度(2025年4月~2026年3月)セグメント別業績の見通し

「122億円の事業構造改革費用を追加で織り込んだが、営業外損益が改善する見通しであり、前回公表の最終利益を達成できる見込みである」とした。

一方、2027年度のEV事業の参入については、「どんなEVにするかについては、まとまった。自動車ビジネスに知見がある人材も外部から登用した。最終的に事業として成立するかどうかの詰めを進めているところである。2026年度前半までに、EV事業を開始するかどうかの判断をする」と述べた。

シャープは、2026年3月16日に、大阪市の堺筋本町に本社を移転する予定である。

  • シャープが3月に移転する堺筋本町の新本社

    シャープが3月に移転する堺筋本町の新本社

沖津社長 CEOは、「2016年に、大阪府堺市に本社を移転して以降、10年間にわたり多大なる支援をいただいた堺市、関係各所に心より御礼申し上げる」と切り出し、「中期経営計画の公表以降、業績は順調に推移しており、財務基盤の改善も想定を上回るペースで進捗している。また、一昨年から取り組んできたデバイス事業のアセットライト化などの構造改革にも区切りがついた。今後は、いよいよ再成長へと本格的に歩みを進める段階に入る。新たな地で、心機一転、中期経営計画で掲げる2027年度目標の営業利益800億円の達成に向け、取り組みを一層加速していく」との決意を述べた。

  • 大阪府堺市の現在のシャープ本社

    大阪府堺市の現在のシャープ本社