2025年11月5日から11月7日まで、東京都港区の虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された「Clarisカンファレンス2025」の最終日に、「Claris FileMaker キャンパスプログラム」に関連する公開のセッションとワークショップ、そして非公開の座談会が実施された。
本記事では、座談会の模様を中心にお伝えする。
学校のFileMaker関連講座を支援するキャンパスプログラム
ClarisはFileMakerを使った演習に取り組む教育機関に対して、FileMaker認定講師を派遣したり無償ライセンスを貸与したりする「Claris FileMaker キャンパスプログラム」(以下、キャンパスプログラム)を提供している。目的は、モバイルデバイスで利用可能なアプリを開発できる人材の育成だ。
DBPowersの有賀啓之氏は、キャンパスプログラムを導入した授業を2013年から担当し、現在に至るまで多くの高校、大学で指導にあたっている。Clarisカンファレンス最終日のセッション、ワークショップ、座談会は、有賀氏が中心となって実施された。
生徒・学生のプレゼンでは課題解決への積極的な取り組みが示された
セッションは、有賀氏による概要紹介から始まった。同氏はPBL(Project Based Learning、課題解決型学習)の手法で授業を実践している。つまり、FIleMakerそのものの知識やスキルを教えて伸ばすことが目的ではなく、生徒・学生たちが課題を解決するためのツールとしてFileMakerを使うということだ。
概要紹介の後、
・北海道岩内高等学校(北海道岩内郡)の教員と生徒1名
・新潟大学(新潟市)の教員と学生2名
・名桜大学(沖縄県名護市)の教員と学生1名
が登壇。教員からは授業の方針や実施報告、生徒・学生からはそれぞれが作成するアプリについてのプレゼンが披露された。
生徒・学生たちが作成するアプリは、自分自身の課題を解決するものと地域の課題を解決するものに大別できるが、どちらも課題を見つけ、深く分析し、解決に寄与するよう取り組んでいる。しかも積極的に楽しく取り組んでいることが伝わってきた。
岩内高校は今年9月からキャンパスプログラムを導入した。プレゼンをしたのは3年生で、アプリを完成させるのは日程的に難しい。そのため「後輩に引き継いで地域貢献に役立てたい」と考えているという。高校の授業でありながら長期的に課題を解決していく方向性が示された。
新潟大学は今年の夏に初めてキャンパスプログラムを利用した。来年度以降への布石として、今年度の講座開催は夏休み中、学生への告知期間は短く、しかも単位は出ないという状況だったが、学生が集まって熱心に取り組んだ。
名桜大学は2022年度からキャンパスプログラムを導入した講座を開講。今年度はこれまでで最も多い人数の学生が履修した。創る楽しさを体験することを目的とし、学生から好評だという。
ワークショップでは率直に意見交換
ワークショップには、有賀氏、前述の生徒・学生と教員のほかに、大学のスケジュールの都合によりセッションには登壇しなかった北海道教育大学旭川校(北海道旭川市)の4年生1名も加わった。 ほかに、キャンパスプログラムを今後導入する予定の学校の担当者や、Clarisカンファレンスに来場していた一般の参加者なども交えて、和やかな雰囲気で率直に情報共有、意見交換が進められた。
生徒・学生、教員、Claris CEOらが集まった座談会
座談会では、セッションとワークショップに参加した生徒・学生と教員、Claris CEOのライアン・マッキャン(Ryan McCann)氏らが会して意見を交わした。有賀氏の「生徒・学生の皆さんは、FileMakerに数か月触れてみて、どんな感想を持ちましたか?」という問いかけから、座談会が始まった。
佐々木さん これまではアプリを使う側でした。使っていると「もっとこうしてほしい」というような改善点が見つかりますが、そういうことを考えながらアプリを作れるのは貴重な体験です。
三河さん 直感的に作れてエキサイティングだと感じました。FileMakerはノーコードではなくローコードなので、多くのことができて、より楽しいと思います。データベースについてはよくわからなかったのですが実際に手を動かしながら学べましたし、自分自身で作るのでオーナーシップを持つことができました。
座安さん アプリを作るのは初めてでした。データベースには慣れていませんでしたが、半年間挑戦してみて、アプリを作る楽しさを理解できました。
今泉さん 自分自身の課題解決として「お掃除記録アプリ」を作りたいという思いが強かったので、楽しかったです。パソコンは苦手でしたが、スキルアップできるうれしさもありました。
渡邉さん 社会の課題に目を向け、アプリで解決したいと考えました。飲食販売店に関わる多くの人を助けるアプリにしたかったので、使う人のためにどうすればいいかを考える経験になりました。
マッキャン氏 今泉さん、お掃除のアプリとはどういうものですか? それを作りたかった理由は?
今泉さん 自分の家の掃除を習慣化し、達成感を得たいと思ったのです。掃除の種類ごとにポイントを決め、仮に1か月に3,000ポイント貯まったとしたら3,000円分の好きなものを買っていいというルールも決めました。
マッキャン氏 掃除の習慣化とは素晴らしい! 私の子どもより何百光年も先に行っていますね。うちの子に渡したいので、そのアプリをください(笑)。目標を決め、進捗をトラッキングする上にポイント制まで取り入れているとは、感銘を受けました。皆さんの話を聞きながら思ったのですが、日本のこの年代の方たちは、こんなにモチベーションが高いのですか?
有賀氏 先生方にお聞きしてみましょうか。
立津氏 小・中学校からプロジェクトベースの学習が推奨されているので、やりたいことを見つけて問題解決に取り組む学びには、みんな慣れています。でもここに集まっている皆さんは、スペシャルだと思いますね。
橋口氏 正直、難しい場面もありますが、さまざまな方法を提示するなどして興味や関心を持たせるのが私たちの仕事だと思っています。
マッキャン氏 FileMakerを好んで使う開発者の方々を、私たちは「Creative builder」(創造的に構築する人)あるいは「Problem Solver」(問題を解決する人)と呼んでいます。皆さんのお話は、未来に希望を持たせてくれました。単にアプリを作るのではなく、人々の問題を解決する意義や責任を考えたり、チャレンジングではあるけれどできることとのバランスを重視して取り組んだりというのは、とても特別なことです。
課題を解決し生活を豊かにするアプリ作りを実感
有賀氏 学生の皆さんは、この授業をどう感じましたか?
渡邉さん 私が所属しているのは創生学部といって、課題解決に取り組む学部です。この授業での体験から、アプリ作りによって解決に向かうことができるという根拠を得られました。
今泉さん 私は現在4年生で、これから中学校の家庭科の教員になります。家庭科といえば日常生活ですが、アプリで自分の生活をより良く、豊かにできることを学びました。
座安さん 直感的で作りやすかったので、アプリ開発に対して感じていたハードルがぐっと下がりました。課題解決の方法としてのアプリ開発を実感しました。
三河さん 自分が面白いと思うことについて、実感を持ちながらアプリを作れると思いました。課題解決は、頭の中、机の上では考えてみるものの、行動を起こすのは難しいものです。アプリ作りが行動の第一歩、きっかけとなりました。
佐々木さん アプリを作ることによって未来が変われば、達成感を味わえると思います。今年の授業ではその段階には至っていませんが、新しいことへの挑戦の第一歩を体験できました。
有賀氏 渡邉さんから「課題解決に取り組む学部」という発言がありましたが、熊野先生、これについてはいかがですか。
熊野氏 学生たちにいろいろな可能性を示して、やりたいことを選んでもらいたいと考えています。その中でFileMakerは課題解決に直結する方法だと思いますね。
学生たちからFileMakerへのリクエストは?
有賀氏 学生の皆さんからFileMakerに対するリクエストはありませんか?
今泉さん 私は今回、四角の枠の中にアプリのデザインの絵を描いてから、実際に作っていきました。その絵を写真に撮ったらある程度自動でアプリになるといいなと思ったのですが。
マッキャン氏 なるほど。心に留めておきます。
渡邉さん FileMakerには不満はなく完璧だと思います。ただ、データベースに関する知識を学ぶのは難しいと感じました。
マッキャン氏 データベースの教え方ですね。確かに、それは最も難しいと認識しています。
三河さん 今回作ったアプリはFileMaker Goの中で動くものですが、自分で作ったオリジナルのアイコンでホーム画面に配置できたらうれしいと思いました。
マッキャン氏 良いフィードバックですね。
リオス氏 そのようにする方法はあります。例えばSDKを利用すればカスタム AppをiOSのネイティブアプリにすることができます。難易度は上がるので、皆さんにとっては次の段階のチャレンジになると思います。
若い世代には「探索し、行動し、うまくいかなくても再び立ち上がる」ことを期待したい
有賀氏 学生の皆さんからClarisの方々に質問はありますか?
佐々木さん 私は将来、経営者になりたいと思っています。経営をする上で大切にしていることは何ですか?
マッキャン氏 「Trust and integrity」(信頼と誠実さ)。これだけです。この2つが大切です。
座安さん 私は今回の授業で、いかに使いやすいデザインのアプリにするかを重視しました。Clarisの皆さんはどんなことに注意してFileMakerを作っていますか?
リオス氏 使う皆さんの立場だったらどうだろうかと、常に考えています。FileMakerはパワフルな製品ですが、そのパワーを容易に使ってアプリを作れるようにするにはどうすればいいか、使う人はどういう課題や障壁を乗り越えようとしているかを考えます。また、製品は簡単すぎず難しすぎず、というものになるよう心がけています。
リー氏 機能を増やすだけなら難しくはないんです。しかし大切なのはバランスです。あらゆる人にとってアクセスしやすいものにしたいと思っています。
三河さん 私たちはスマホを小さい頃から使っている世代で、膨大な情報にすぐアクセスできることに慣れています。こうした私たちの世代に対して、どのような期待を持っていますか?
マッキャン氏 FileMakerに関する答えの方がいいのかもしれませんが、もっと話を広げてお話ししますね。意志や意図を持つこと、誠実であること、自分を見失わずに努力することです。確かに現在は情報があふれ、たくさんのことを持たなくてはならないように思いがちですが、そうではありません。探索し、行動し、うまくいかなくても再び立ち上がる。若いうちからそういう感覚を持ってもらいたいと思います。











