シャープが発表した2025年度第1四半期(2025年4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比11.2%減の4724億円、営業利益は前年同期のマイナス58億円の赤字から153億円の黒字に転換。経常利益はマイナス101億円の赤字から185億円の黒字となり、当期純利益は前年同期のマイナス12億円の赤字から272億円の黒字に転換した。

  • シャープ 2025年度第1四半期(2025年4月~6月)の連結業績

    シャープ 2025年度第1四半期(2025年4月~6月)の連結業績

利益が大きく改善、構造改革進む

シャープの沖津雅浩社長 CEOは、「全社トータルでは売上高は減収となったが、営業利益は前年同期の赤字から大幅に改善し黒字化した。経常利益や最終利益も、大きく改善しており、いずれも黒字化を達成している。ブランド事業の売上高は競争環境の激化や円高の影響などがあり、減収となったが、営業利益は前年同期に比べ約1.5倍の大幅な増益を達成した。また、ディスプレイデバイスは、PC・タブレット向け、車載向けが伸長し増収となったのに加えて、構造改革の効果もあり、営業赤字は大幅に縮小した」と述べた。

  • シャープ 代表取締役 社長執行役員CEOの沖津雅浩氏

  • 営業利益の要因別増減分析

セグメント別業績では、ブランド事業の売上高が前年同期比4.8%減の3297億円、営業利益は47.3%増の142億円となった。

  • セグメント別売上高

  • セグメント別営業利益

そのうち、スマートライフの売上高が前年同期比10.6%減の1403億円、営業利益は66.3%増の68億円。白物家電事業、テレビ事業、エネルギーソリューション事業ともに減収となった。「減収ではあるが、利益が確保できている点には手応えがある」とし、「白物家電事業は国内、海外ともに減収。国内はヘルシオが好調だった調理家電や、空気清浄機が伸長したが、洗濯機、エアコン、冷蔵庫が前年同期には及ばなかった。とくに洗濯機の落ち込みが大きい。付加価値モデルの需要の一巡と、低価格のドラム式洗濯機を発売したメーカーの攻勢の影響を受けた。海外では米国の調理家電が伸長したが、ASEANでのエアコンが冷夏の影響で前年同期比40%減になっている。ここは市場が縮小したことが理由であり、売り負けたわけではない。テレビ事業は市況悪化の影響もあり、国内や欧州で減収となったが、国内におけるXLEDやOLEDモデルが好評であり、付加価値ゾーンのシェアが増加している。また、テレビ事業の構造改革効果などにより、営業利益率は改善している」と総括した。

テレビ事業については、日本向け付加価値モデルは、シャープが設計し、中国の工場で生産し、販売を行っているが、ミモディティモデルを中心に多くの製品をODMからの調達に移行しており、「スペックの要求はシャープから行うものの、商品の設計、組立はODM先に一任することで、固定費削減とコスト競争力の強化が進んでいる」という。

また、冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの大型家電は、独自に開発し、自社工場で生産し、自社で販売する仕組みを継続する考えも示した。

  • スマートライフでは「減収ではあるが、利益が確保できている点には手応えがある」とする

スマートワークプレイスは、売上高が前年同期並みの1893億円、営業利益は39.6%増の142億円。PC事業が増収となったが、ビジネスソリューション事業と通信事業が減収になった。

「PC事業は、第1四半期には前年同期比20%増の水準となっている。とくに、官公庁、自治体向けが大幅に伸長した。マネジメントサービスの提案などが奏功し、大企業向けも増収になった。PC事業の高付加価値化が進展していることが背景にある。また、2025年10月にWindows 10のサポート終了に伴う需要は2024年度内で終了すると見ていたが、引き続き、需要が好調に進んでいる。国内ではシェアを拡大しているところだ。だが、B2Cについては伸びがあるわけではない。GIGAスクール向けのChromebookの貢献もあるが、第2四半期以降は、前年同期比10%強の減少になると見ている。XRなどの新たな商品を開発し、少しでも落ち込みをカバーしたい」と述べた。

さらに、「ビジネスソリューション事業は国内が増収となったが、海外が減収。国内のオフィスソリューション事業、MFP事業、インフォメーションディスプレイ事業が伸長したものの、欧米のMFPやインフォメーションディスプレイが競争激化の影響を受けた。通信事業は減収となったが、スマホのハイエンド比率は上昇している」という。

  • スマートワークプレイスではPC事業が増収。官公庁、自治体向けが伸びた

一方、ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比7.4%増の1092億円、営業利益は前年同期のマイナス109億円の赤字から改善したものの、マイナス25億円の赤字が残った。同セグメントは、中小型ディスプレイのみの業績を示している。

沖津社長CEOは、「スマホ向けディスプレイは終息方向であるが、米国関税の駆け込み需要のあった車載向けや、PC・タブレット向けが伸長している。駆け込み需要の反動で、8月以降は落ちると見ており、年間を通じると当初計画通りになるだろう。アプリケーションミックスの改善に加えて、生産能力の最適化などの構造改革を進めた効果により、赤字が大幅に縮小している」と語った。

なお、SDP(堺ディスプレイプロダクト)を含む「その他」では、売上高が前年同期比59.3%減の380億円、営業利益は前年同期のマイナス40億円の赤字から13億円の黒字になった。「SDPの売上げはほぼ無く、上期中に譲渡予定のカメラモジュール事業や半導体事業も減収となっている。だが、経費削減が進み、13億円の黒字になった」という。

  • ディスプレイデバイスでは米国関税の駆け込み需要のあった車載向けが伸びた

通期の業績見通しを上方修正

シャープでは、2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通しを上方修正し、売上高が200億円増額の前年比13.4%減の1兆8700億円、営業利益は100億円増額の同9.7%%増の300億円、経常利益は220億円増額の前年比52.9%増の270億円、当期純利益は220億円増額の同11.3%減の320億円とした。営業利益と経常利益は、減益計画から増益計画へと見直した。

「先行きが不透明な状況が続いているが、第1四半期のPC事業などの業績の上振れを売上高、営業利益に反映するとともに、期初の業績予想には織り込んでいなかった為替差益や持分法による投資利益なども、経常利益、最終利益に織り込み、通期の業績予想を上方修正した」と説明した。

  • 2025年度(2025年4月~2026年3月)の連結業績見通しを上方修正

通期のセグメント別業績も見直した。

ブランド事業の売上高は前年比3.0%減の1兆4350億円、営業利益は7.5%減の755億円とした。「ブランド事業の営業利益の通期予想を75億円引き上げている。海外のエアコンや、国内の洗濯機の事業環境などを反映し、スマートライフの売上見通しを15億円引き下げる一方で、上期のPC需要が想定より底堅く進捗する見込みであることなどを考慮し、スマートワークプレイスの売上見通しを90億円引き上げた」という。

ブランド事業のうち、スマートライフの売上高が前年比1.3%減の6350億円、営業利益は52.5%増の335億円とした。「生成AI対応家電の拡販や海外での販売拡大、構造改革効果などにより、増益を見込みでいる」とした。冷夏の影響を受けた海外エアコン事業については、「ASEANでの次の需要期は1月~3月である。それまでに流通在庫を整理すれば、2025年度第4四半期はよくなる」と予測した。

スマートワークプレイスは、売上高が前年比4.3%減の8000億円、営業利益は29.7%減の420億円とした。「クロスセルの推進や、新規事業の拡大に取り組む一方で、2024年度には特許による一過性収益があったこと、Windows11への切り替え特需の反動、米国の関税政策の影響などにより、減益を見込んでいる」とした。

一方、期初には公表していなかったディスプレイデバイスの通期見通しを開示した。売上高は前年比13.8%減の3900億円、営業利益は前年同期のマイナス269億円の赤字から、49億円改善するものの、マイナス220億円の赤字を見込む。「白山工場における高付加価値商品の投入拡大や、亀山第1工場における大型車載パネル比率の向上、構造改革効果などにより、赤字幅が縮小する見通しである」とした。

その他では、売上高が前年比82.5%減の450億円、営業利益は前年同期のマイナス78億円の赤字から改善するものマイナス30億円の赤字としている。

  • セグメント別の業績予想も見直し

なお、米国関税の影響については、「ブランド事業で影響を見込んでいるが、売価への反映やコストダウンなどの対策を想定しており、年間の利益影響額は37億円程度に抑制できる」と試算した。

米国市場向けの年間売上高は2071億円(2024年度実績)であり、全体の9.6%となる。スマートライフでは、ドロワーオーブンや調理家電が対象となり、関税影響として19億円を想定するが、対策により18億円を打ち返し、1億円のマイナス影響を想定。スマートワークプレイスではMFPやディスプレイ、プロジェクター、PCが対象となり、112億円が影響するものの、対策によって75億円の効果を想定し、36億円のマイナス影響になると見ている。

  • 米国関税の影響。「年間の利益影響額は37億円程度に抑制できる」と試算

「白物家電はタイからの輸出が中心になり、一部が中国からの輸出になる。また、MFPもタイから輸出している。いまのサプライチェーンの体制がやっていくことになる。調理家電は、2025年6月から売価をあげており、10%を上限に値上げを進める。MFPは競合他社が同様にアジアから輸出しながら10%の価格転嫁を行うと発表しており、業界全体の流れに応じて売価をあげていくことになる。価格対応によって、市場が停滞する可能性があるが、年内はこの価格が維持されるだろう。競合他社に比べて強い商品を投入し続けることが大切である」と語った。

一方、今年度から開始している2027年度までの中期経営計画の進捗状況についても説明した。

  • 2027年度までの中期経営計画の進捗状況

スマートライフでは、「AIoT事業の拡大」、「美容・ヘルスケア事業の強化」、「海外事業の拡大」を重点取り組みにあげており、具体的な取り組みとして、生成AI対応「ヘルシオ」を商品化し、生成AI活用サービス「クックトーク」の提供を2025年6月から開始したほか、米国における関税影響で需要が減速するなか、調理家電を中心に対前年比で10%弱の売上成長を見込んでいるという。

「白物家電については、市場が大きくシュリンクする製品領域はやめることも考える必要があるが、いまのところ具体的にやめるものは決まっていない。市場ニーズを見ながら判断していく。地域的に見ると、シャープが強い地域に重点的に新たな製品を投入していくことになる」とした。

スマートワークプレイスでは、「オフィス向け事業の強化」、「新たなスマートビジネスの展開」を進めており、顧客情報の共有化を通じたクロスセルの強化に加えて、機器固有サービスを、他製品に展開する可能性を検討する「クロスマーケティング」の取り組みを進展。衛星通信事業では、欧州衛星通信事業者や各国政府関係者、大手企業などから強い引き合いが出ていることをアピールした。

なお、ブランド事業においては、2025年9月から、ブランディング施策を本格展開することも公表している。

ディスプレイデバイスにおいては、「パネル生産工場の選択と集中」、「車載、モバイル、産業用途の強化」をあげており、亀山第2工場の譲渡に向けて、鴻海によるデューデリジェンスおよび取引条件協議が進行中であることを報告。車載ディスプレイについては、欧米の特定の完成車メーカー向けの実装設備を、日本およびベトナムの生産拠点において導入を開始し、2026年度下期に量産をスタートする予定であることも示した。

さらに、新産業領域においては、2025年10月に、東京ビッグサイトで開催予定のJapan Mobility Showに、シャープのEVである「LDK+」の最新コンセプトモデルを出展する予定であること、拡大が期待されているAIデータセンター市場への参入に向けて、鴻海との連携によって、様々な可能性を検討中であることも公表した。

「新たに展示するLDK+は、現在、鴻海が生産しているベースモデルを使ったものになる。今回、展示するクルマのサイズで販売を想定している。事業として成立するかどうかを見極めて製品化に乗り出すことになる」としたほか、「堺工場(SDP)の売却については、いいタイミングであったと思っている。データセンターに適したインフラ設備であり、短期間に売却ができてよかった。AIデータセンターに関しては、ソフトバンクやKDDIとの協業を模索しているが、決まったものはない。鴻海との連携では、鴻海が持つAIサーバーの生産ノウハウを活用し、シャープが日本でビジネスを行う前提で検討している。自らがサーバーを持つということは考えていない」とした。

沖津社長 CEOは、「各事業で重点取り組みに沿った具体的な施策が進捗している。これらの取り組みを通じて、2027年度の財務目標である営業利益800億円と、ブランド事業の営業利益率7%の達成、さらには2028年度以降の飛躍に向け、競争力の強化、財務基盤の改善を進めていく」と意欲をみせた。

なお、シャープの沖津社長 CEOは、8月8日に、社員を対象にしたCEOメッセージを、社内イントラネットを通じて配信しており、そのなかで、すでに発表している本社移転について触れ、「2026年3月に、大阪市中央区の堺筋本町駅すぐにあるJTB大阪ビルを一棟借りし、本社を移転する計画である。現在、移転スケジュールを詰めている。対象部門には9月頃に説明会を実施する予定である」とした。