2025年4月13日に埼玉県川越市にて、オープンタウン型のインディーゲームイベント「ぶらり川越 GAME DIGG」が開催された。
会場の「コエトコ」と「りそなコエドテラス」には、50以上の個人&メーカーのインディーゲームとボードゲームが集結。展示ブースを回って自由にゲームを試遊できるだけでなく、グルメ屋台やミニ音楽ライブ、ポストカードラリーなども用意されていた。
今回の取材をきっかけに川越の街へ初来訪した筆者が、1日かけてゲームと街歩きを満喫してきたので、その様子をお伝えしたい。
「コエトコ」の歴史ある建物の軒先でゲームを楽しむ!
まずは、「ぶらり川越 GAME DIGG」の会場の1つ「コエトコ」を紹介したい。コエトコは、有形文化財に指定されている旧川越織物市場と旧栄養食配給所を復原し、2024年4月にオープンした川越市文化創造インキュベーション施設だ。川越の未来をつくる新しいクリエイターの育成支援や、地域と連携した創造的活動の推進を行っている。「ぶらり川越 GAME DIGG」を主催する株式会社アトリエミミナやCap合同会社も、コエトコのインキュベーションオフィスに入居している。
コエトコでは軒先にずらりと展示ブースが並び、まるでお祭りの出店のような賑わいを見せていた。出展者は思い思いにブースを飾りつけ、来場者を迎え入れる。ゲームの操作方法や世界観を丁寧に解説しながら、来場者とのコミュニケーションを楽しんでいる姿が会場のあちこちで見られた。当日はあいにくの雨模様だったが、そのおかげで軒先に人が集まり、クリエイターと来場者の距離がグッと縮まったように感じた。
コエトコ会場内の一角には、イベント前に開催された子ども向けのゲーム作りワークショップの完成作品が展示されていた。ワークショップに参加した子どもたちは、約1ヶ月かけて「ものがたりゲーム」を制作。シナリオはもちろん自作で、音楽やイラストも一つひとつ自分で選びながら創作を楽しんだ。
『イラストクエスト』を作ったゲームクリエイターのハルヒ氏(植松春陽くん)に作品のこだわりポイントを伺ったところ、「戦闘シーンのバトル表現をがんばった」と答えてくれた。できあがった作品は友達や家族、来場者からも好評で、「続きを作りたい」と今後のゲーム制作にも意欲的だ。未来のゲームクリエーターが、「ぶらり川越 GAME DIGG」から生まれるかもしれない!
コエトコ会場内の展示企画室では、人気ゲーム実況者「フェイチャンネル」のフェイさんを迎え、YouTubeのライブ配信を実施。会場に出展しているゲームをプレイしたり、クリエイターを招いてインタビューをしたり、川越代表Vtuberの鈴風時音さんの案内で実際に川越の街を散策したりと、開催時間を目一杯使ってたっぷりと「ぶらり川越 GAME DIGG」の魅力を発信していた。
なお、当日のライブ配信はフェイチャンネルにてアーカイブが残っている。惜しくも現地への参加が叶わなかった人も、ぜひ視聴して会場の雰囲気を味わってほしい。
【ぶらり川越 GAME DIGG】現地配信!『川越ゲムディグ生放送!』【埼玉初のインディーゲームイベント】
「りそなコエドテラス」でゲームもグルメも満喫!
次に紹介するのは、もう1つの会場「りそなコエドテラス」だ。りそなコエドテラスは、明治以降の埼玉の産業を支えた第八十五銀行本店の建物を利活用した複合施設。100年余り銀行として営業を続けてきたが、老朽化に伴い、2024年5月に「りそなコエドテラス」としてリニューアルオープンした。
施設内には、カフェやレストラン、川越の地産地消セレクトショップのほか、会員制のインキュベーション・コワーキングスペース「Resona Kawagoe Base+」を有する。
「ぶらり川越 GAME DIGG」では、りそなコエドテラスの広場と駐車場を活用した屋外スペースに加え、3階の「Resona Kawagoe Base+」の一部に展示ブースが設置された。
りそなコエドテラスの屋外スペースでは広めのテントが用意され、パイオニア株式会社や株式会社CRI・ミドルウェア、尚美学園大学の学生の作品展示など、「ぶらり川越 GAME DIGG」の協賛者の出展ブースも並んでいた。
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HACTAC株式会社の展示ブースでは、川越にまつわる「13のこと」が絵柄になったアナログカードゲーム「カワゴエーノ」を用意。ルールは「UNO」と一緒で、遊びながら川越の観光名所や特産品を知ることができる
また、屋外スペースにはグルメ屋台がずらりと並び、「ぶらり川越 GAME DIGG」のコラボメニューを含む、さまざまなドリンクやフードが販売されていた。川越の街をあちこち歩き回った来場者も、グルメ屋台でお腹を満たし、しばし小休憩を取って疲れを癒していた。
りそなコエドテラス3階の「Resona Kawagoe Base+」の展示スペースでは、2025年2月に発売した『都市伝説解体センター』の開発チーム「墓場文庫」のブースに長蛇の列ができていた。
ゲームをクリアしたばかりの熱狂的なファンが集まり、なかには自作の応援うちわやぬいぐるみを持って遊びに来る人も。クリエイターに会って直接ゲームの感想や作品愛を伝えられるのも、ゲームイベントの醍醐味の1つだろう。
ミニコンサートやポストカードラリーも開催! 川越の街を遊び尽くす
「ぶらり川越 GAME DIGG」では、ゲーム展示のほかにも、ゲーム音楽のミニコンサートや川越の街歩きを楽しめるポストカードラリーが開催された。
ミニコンサートは、コエトコとりそなコエドテラスの両会場にて時間帯を分けて開催され、演奏開始前からたくさんの観客が集まった。演奏を担当したのは、アイリッシュホイッスル奏者の高梨菖子氏とアイリッシュブズーキ奏者の岡皆実氏。当日会場に出展しているゲームのなかから選んだ楽曲に加え、アイルランドの伝統ダンス曲なども披露された。
特に会場が盛り上がったのは、『UNDERTALE』の楽曲だ。コンサートでは、「ケツイ〜華麗なる死闘」「夢と希望〜Save the World」をメドレー形式で演奏。電子音で構成されたテンポの速い戦闘曲も、高梨さんと岡さんの演奏で見事にアイリッシュアレンジされ、原曲とは一味違った音を楽しめた。インディーゲームの金字塔とも呼べる人気作品なだけに、演奏終了後には観客から大きな拍手が起こった。
コンサートの最後には、「ぶらり川越 GAME DIGG」のテーマ曲を制作した作曲家/パフォーマーの岡部弦氏が登場。DJプレイとラップで会場を盛り上げ、観客からは「ぶらり川越 GAME DIGG!」と掛け声が上がった。明るくポップなメロディが耳に残り、つい口ずさんでしまう素敵なテーマ曲だ。
『ぶらり川越GAMEDIGGのテーマ』PV
ポストカードラリーでは、会場周辺のお店にゲームのポストカードが設置され、来場者はポストカードを集めながら川越の街歩きを楽しんだ。ポストカードは全12種類、設置場所は全6箇所。宿泊施設の「Hatago COEDOYA」や、菓子屋横丁の老舗「玉力製菓」、蔵造りの建物を活用した「仲町観光案内所」など、川越の街並みをつくるさまざまな施設が協力した。
玉力製菓では、ポストカードを受け取るだけでなく、手づくり飴を買っていく来場者が多く見られた。筆者も店員さんにおすすめされた春らしい桜の組飴を購入。ポストカードラリーのおかげで、ゲームだけではなく川越の街を丸ごと堪能できた。
仲町観光案内所でスタッフの方にお話を伺ったところ、「ぶらり川越 GAME DIGG」は予想を超える盛り上がりを見せており、「ゲームのイベントでこんなに大勢の人が川越を訪れてくれるとは驚きだった」と語った。また、「今回は残念ながら雨に降られてしまったが、もし晴れていたら、さらに多くの来場者が見込まれただろう」と期待を示した。
「ぶらり川越 GAME DIGG」は今回が初開催となり、資金繰りや運営スタッフの人員不足など、課題も多く見つかったことと思う。しかしながら、ゲームと一緒に川越の「街」や「歴史」も楽しめるイベント内容は、数多あるインディーゲームイベントのなかでも個性を感じた。ぜひその強みを活かした今後の展開を期待したい。