2025年3月22日から5月11日にかけて、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国際リーグ「VALORANT Champions Tour Pacific 2025 Stage 1」(以下、VCT Pacific)が、韓国のソウルにて開催されています。

本リーグでは、6月にカナダのトロントで開催される国際大会「Mastars Toronto」への出場権をかけて、Pacific地域の12チームが対決。日本からは、「ZETA DIVISION」(以下、ZETA)と「DetonatioN FocusMe」(以下、DFM)の2チームが出場しています。記事では、開幕初日の模様を中心に、現地会場の様子をお伝えします。

再び2023年と同じ会場でグループステージを開催

「VCT Pacific」では、出場チームがKickoffでの成績にもとづいて2グループに分けられ、グループごとにシングルラウンドロビン形式(総当たり戦)で対戦。各グループの上位4チームがプレイオフに進出し、ダブルエリミネーション形式で戦います。そして、プレイオフの上位3チームが「Masters Toronto」への出場権を獲得します。

グループごとに対戦するグループステージは、2023年の「VCT Pacific」と同じ会場である「Sangam SOOP Colosseum」にて有観客で行われています。2024年には、江南(カンナム)区にある大型複合施設「COEXモール」内にて開催されていましたが、「VCT Pacific」が始まった場所に再び戻ってきました。

「Sangam SOOP Colosseum」は、韓国の配信プラットフォーム「SOOP」が運営するeスポーツ専用スタジアム。「SOOP」と聞くとなじみがないかもしれませんが、2024年10月から配信プラットフォームの「AfreecaTV」が「SOOP」という名称に変更されています。それにともない、会場も「SOOP」が入った名前に変わりました。

グループステージのチケットは、一般席が15,000ウォン(約1,500円)、見切れ席が12,000ウォン(約1,200円)。相変わらず、常設スタジアムならではのチケットの安さには驚かされます。チケットは日ごとではなく、1試合ごとに販売されていることも特徴で、観たい試合を選んで購入します。

会場自体は2023年と同じですが、中に入ってみるとステージのつくりや座席に変化がありました。今年のステージは、選手席が向かい合うように円形に設けられており、観客席から選手席がより近く、選手たちの姿がさらに見やすくなった印象です。

ただ、2023年に訪れた際は、選手席もモニターも見やすい2階席があったのですが、今年は2階席がなくなっていました。会場の座席数は、およそ300席。日本で開催されている『VALORANT』のオフライン大会の規模から考えると、日本であればすぐにソールドアウトしてしまいそうな座席数ですが、韓国チームが出場する試合以外は、なかなか満席になっていないようです。

それゆえ、韓国チームとの試合でなければ、まだ日本チームが出場する試合のチケットも残っているので、現地観戦をしたいと考えている人にとってはチャンスかもしれません。日本在住の場合、チケットは「Global Interpark」から購入できます。

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    「Sangam SOOP Colosseum」があるS-Plexセンタービル

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    1階ロビーに設けられたチケットブース。来場時は、身分証明書(パスポート)をお忘れなく

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    15階に上がると、会場の「Sangam SOOP Colosseum」に到着

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    選手席が向かい合うように円形に設けられた今年のステージ

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    選手席が両サイドに横並びに設けられていた2023年のステージ

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    ステージ正面の座席。大きな会場ではなかなか味わえない選手席の近さ

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    ステージサイドの席からは、選手がプレイしているモニターまでよく見える

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    応援ボード記入コーナーには、こんなメッセージも置かれていた

11階「eスポーツ名誉の殿堂」にもさまざまなコンテンツ

今年は新たに、同ビル11階にある「eスポーツ名誉の殿堂(Esports Hall of Fame)」にも、「VCT Pacific」のコンテンツが用意されていました。「eスポーツ名誉の殿堂」は、eスポーツのこれまでの歴史や偉大な選手たちの業績など、さまざまな内容が紹介されている展示館です。

2018年に開館した「eスポーツ名誉の殿堂」は、消失するリスクのあるeスポーツ関連資料を収集・保管・研究・展示し、eスポーツの発展を牽引する国として、韓国の業績と地位を世界に広める目的もあるとのこと。「さすが韓国……」と思わずうなってしまいます。

今年はこの「eスポーツ名誉の殿堂」内に、「VCT Pacific」イベントゾーンが設けられています。イベントゾーンには、巨大な戦略ベアやウィングマン、出場チームの選手パネルが展示されているほか、試合が観戦できるビューイングエリア、物販ブース、オリジナルフレームで撮影できるフォトブース(韓国式のプリクラ)などがあります。イベントゾーンの運営時間は、15時から22時まで。11階には、チケットがなくても入場できます。

チケットが試合ごとに販売されているため、2試合目のみを観戦しに来た場合、1試合目が終わるまで15階の会場に入ることができません。しかし、チケットブースに出ていた案内によると、11階の「VCT Pacific」ロビーにいれば、2試合目の入場が始まる際にスタッフが声かけを行うとのこと。ビューイングエリアがあるため、試合を見ながら待つことができるでしょう。

会場の状況は今後変更される可能性もあるため、現地で観戦する際は、チケットブースに出ている案内や公式SNSで発信されている情報をチェックすることをおすすめします。

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    11階にある「eスポーツ名誉の殿堂」。試合のチケットがなくとも入場可能

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    さまざまなゲームの輝かしい業績を持つスター選手たちを紹介するパネル

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    巨大な戦略ベアやウィングマンが待つ「VCT Pacific」イベントゾーン

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    初日の試合に出場した4チームの選手パネルも展示されていた

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    ビューイングエリアでは、15階で行われている試合が放送される

日本チームは黒星スタート、プレイオフ進出なるか――

開幕初日は、1試合目が「DFM」対「Global Esports」、2試合目が「ZETA」対「T1」と、日本チームが出場する試合が続けて行われました。開幕戦であり、かつ2試合続けて日本チームの試合が見られる日とあって、会場には日本からたくさんのファンが応援に駆けつけました。

この日「DFM」は、0-2で「Global Esports」に敗北。オフシーズンから快進撃を見せてきた「DFM」ですが、それゆえ本格的なリーグを戦っていくにあたり、大きなプレッシャーを抱えながら戦っている様子がうかがえます。

続いて「ZETA」は、初戦から直近の「Masters Bangkok」で優勝を果たした「T1」とぶつかり、1-2で敗北。ただ、厳しい戦いになると予想されていたなか、「T1」のピックマップだった2マップ目のスプリットを勝ち切るなど、手応えを感じさせる内容を見せました。

試合後には、1階ロビーにて「DFM」がファンミーティングを行っていました。初日の様子を見る限りでは、1試合目の出場チームは試合後にファンミーティングが行われ、2試合目の出場チームはおそらく時間の都合のため行われないようです。

その代わり、試合終了後にロビーで待っていたファンに対して、「ZETA」や「T1」のメンバーが並んで挨拶する光景も見られました。ただ、これは選手たちが試合後にさまざまなインタビューなどの対応を終えたあとのことで、この日「ZETA」がロビーに降りてきたのは23時半ごろとかなり遅い時間でした。

この日は1試合目が2マップ、2試合目が3マップでしたが、両試合とも3マップにわたる戦いになれば、試合だけでも23時を過ぎる可能性があります。現地観戦の際は、終電などの時間にお気をつけください。

グループステージはWeek 5まで行われ、各グループの上位4チームがプレイオフ進出、下位2チームの敗退が決まります。現在、グループステージはWeek 3まで終了しており、「DFM」は「DRX」に0-2、「Gen.G Esports」に0-2と連敗。なかなか立て直すことができず、0勝3敗でグループ暫定6位と、かなり苦しい状況に追い込まれています。

「ZETA」は、「Team Secret」に2-0で勝利、「Rex Regum Qeon」に0-2で敗北。現在、1勝2敗でグループ暫定5位となっており、プレイオフ進出のためには、続く試合での勝利が切望されます。

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    Stage 1の開幕戦では、「DFM」と「Global Esports」が戦った

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    オフシーズンでの活躍から、より一層の注目と期待を背負う「DFM」

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    1試合目の終了後、1階ロビーで行われた「DFM」のファンミーティング

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    サインや写真のリクエストに応える「DFM」の選手たち

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    2試合目、「ZETA」は直近の世界王者である「T1」と対戦

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    「T1」の選手席前には「Masters Bangkok」で手にしたトロフィーが飾られた

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    この日の2試合とも、たくさんのファンが日本から現地に駆けつけていた

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    試合終了後、ロビーで待っていたファンに挨拶する「ZETA」

観戦に来たら、“eスポーツ大国”韓国を味わってみよう

現在Stage 1が進行中の「VCT Pacific」ですが、7〜8月には世界大会「VCT Champions」の出場をかけて行われるStage 2の開催が予定されています。このStage 2においては、Grand Finalsの2日間が東京にて開催されることが発表されており、日本でも観戦するチャンスがあります。

ただ、この2日間にどのチームが出場するかは、トーナメントの結果次第。そのため、対戦日程があらかじめ決まっているグループステージを観戦するべく、韓国まで行くことを検討するファンもいるでしょう。ということで、大会観戦のために韓国に来たら、ぜひ寄りたい場所をいくつかご紹介します。

まずは、コンビニの「CU」。このコンビニは「T1」とコラボした商品を販売しており、「T1」のロゴが入ったキンパ(韓国風のり巻き)やおにぎりが売られています。品揃え的に必ず置いてあるというわけではないので、もしなければ何店舗か行ってみると出会えるかもしれません。

コンビニの飲料コーナーでは、「T1」の『League of Legends』(以下、LoL)部門の選手たちがデザインされた、レッドブルのヒーロー缶を見かけることもあります。ふと入ったコンビニで、いたって普通にチームロゴや選手が載った商品が売られているのを見ると、韓国のeスポーツ大国っぷりを感じます。

続いては、弘大(ホンデ)の弘大入口駅すぐにある「T1 BASECAMP」。ショップやPCバンなどがあり、ファンが楽しめるスポットです。PCバンの利用ガイドが記載された英語版パンフレットも入口付近に置いてあるので、韓国のPCバンで一度遊んでみたいという人にもおすすめです。ショップでは「T1」のチームグッズや、ゲーム関連グッズが販売されています。

なお、「T1」は江南区にHQ(本社)があり、その1階にもショップがあります。このショップには、これまで「T1」が獲得してきた優勝トロフィーがずらりと飾られており、VALORANT部門が獲得した「Masters Bangkok」のトロフィー、「Red Bull Home Ground 2024」のトロフィーも間近に見ることができます。

かなり「T1」に紹介が偏ってしまいましたが、レジェンドプレイヤーFaker選手を有するLoL部門を筆頭に、それほど韓国で「T1」というチームが持つ影響力は大きいといえます。もし『LoL』にも興味があるなら、もちろん「LoL PARK」も見逃せないスポットです。ぜひ機会があればeスポーツ大国、韓国での観戦旅行を楽しんでみてください。

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    コンビニ「CU」で販売されている「T1」キンパ(コチュジャンサムギョプサル)

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    「T1」LoL部門の選手たちがデザインされたレッドブルのヒーロー缶

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    弘大入口駅の1番出口からすぐの場所にある「T1 BASECAMP」

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    「T1 BASECAMP」のPCバン。初めてでも利用しやすい雰囲気

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    アパレルだけでも相当な種類が展開されている「T1」グッズ

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    ショップでは、チームグッズ以外に『LoL』などのゲーム関連グッズも販売

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    「T1」のHQ。2階以上は選手たちの宿舎や練習場、オフィスなど

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    これまでに「T1」の各部門が獲得してきた輝かしいトロフィーの数々

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    VALORANT部門のパーカー。ユニフォームジャケットなども販売されている