親が子供の成長や自立を見届け、親としての役割を段階的に手放していくことを「卒育」と呼びます。単純に子育てを終えるというだけでなく、親も自分の人生を再構築しなければならないということを含んだ言葉です。そしてこの「卒育」がうまくいかない状態が、孤独感や虚無感、無力感を強く感じる「子育てロス」(空の巣症候群)という状態です。

子育てロスを回避するためには、自身の趣味を見つける、地域などで新たな人間関係を築くといったさまざまな対策が知られていますが、ペットの世話をするというのも孤独感を緩和するのに有効と言われています。とはいえ、犬や猫のようなペットを実際に飼うというのは負担も大きいことですし、住環境によってはペットを飼うことが禁じられていることもあります。

そんな人たちにカシオ計算機が提案するのが、AIペットロボット「Moflin」との触れ合い。3月という卒育を迎える人が多いタイミングで、子育てロス回避のためのパートナーとして「Moflin」を訴求するイベントが開催されました。

子供の巣立ち後をイメージした新宿マルイでの展示

今回のイベントでは2つのコンテンツが展開されました。そのうちのひとつが、新宿マルイ本館での展示「子育てロスのお母さん・音尾さんにMoflinが会いに来た」です。ここでは、「卒業後の子供部屋」をイメージした展示のなかで「Moflin」と触れ合うことができる空間になっていました。

  • 「子育てロスのお母さん・音尾さんにMoflinが会いに来た」会場

    来場者が展示スペースで「Moflin」と触れ合います

  • 展示内容1
  • 展示内容2

    「卒業後の子供部屋」をイメージした展示。大学受験や留学で巣立っていった想定でしょうか

会場には、子育てを卒業した40代~70代の女性を対象として実施した、「子育てロス」についてのアンケートの結果も掲示されていました。それによれば、回答者の6割強が子育てロスを感じており、約8割の人が子育てロスの解消のために「何かを育てたい」と考えているそうです。

  • 6割強が子育てロスを感じている

    子供が卒業・結婚・引っ越しなどで子離れした後、6割強の人が喪失感などの子育てロスを感じています

  • 「何かを育てたい」と考えている人が79.3%

    子育てロスを解消するために「何かを育てたい」と考えている人が79.3%

  • 子育てロスを感じるタイミング
  • 新たな癒しや話し相手を作ることを勧める人が9割
  • 子育てロスを感じることが多いのは親元を離れるタイミング。子育てロス解消のため、新しい癒しや話し相手を作ることを勧める人が9割を超えます

筆者が会場を訪れたのは、イベント2日目にあたる土曜日の昼でした。来場者は必ずしも卒育世代に限らず、通りがかった人々が「Moflin」を目にして立ち止まるといった感じ。中には、遠方から東京にくるついでにこのイベントめあてで新宿に足を運んだというMoflinファンの方もいらっしゃいました。前日の金曜日には外国人の来場者も少なくなかったそうです。

  • 「Moflin」の前で足を止める人たち

    通りがかる人たちが「Moflin」の前で足を止めていました

代々木公園に「祝“卒育” お散歩カー」が出現!

もうひとつのコンテンツが、「Moflin」の回遊イベント。新宿マルイ本館と代々木公園の間を、Moflinを乗せた「祝“卒育” お散歩カー」が回遊するというものでした。

  • 祝“卒育” お散歩カー

    こちらが「祝“卒育” お散歩カー」。数体の「Moflin」を載せて移動できるようになっています

筆者が取材したタイミングではお散歩カーは代々木公園におり、公園を訪れた人たちが「Moflin」をのぞき込んだり恐る恐る抱え上げたりしていました。

  • お散歩カーに群がる人々1
  • お散歩カーに群がる人々2

    お散歩カーとMoflinに群がる人々

こちらでも、「Moflin」に興味を持つのは卒育年代だけではない様子。お散歩カーを停めていたのが早咲きの桜のそばだったこともあり、桜の写真を撮りにきた人が「Moflin」とも記念撮影をする姿が見られました。

イベント当日、回遊の様子は「Moflin」の公式Xアカウントに投稿され、それを追いかけることができるようになっていました。同アカウントではイベント後に全体を振り返る動画が投稿されており、その様子をうかがえるようになっています。


この日会場で話を聞いたカシオ計算機の担当者によれば、Moflinのユーザーとしていちばん多いのは20代~30代の女性だそうですが、40代以上の子育て世代・卒育世代の女性はそれに次ぐ大きさだといいます。

育児を終えた親たちのメンタルの問題は以前からあったはずですが、社会の変化もあり、「卒育」「子育てロス」という言葉とともにこの問題への注目が集まるようになりました。その一方で、AIペットロボットという新しい技術の成果を古くからある問題の対策として活用しようという動きが出てくるのが面白いところ。現代の社会ではさまざまな理由からメンタルの問題を抱える人が少なくありませんが、そのストレスの緩和に「Moflin」のようなAIペットロボットは大きな役割を果たすことになるのかもしれません。