PCゲーミングキーボード市場に突如現れた“ラピッドトリガー”機能。メカニカルスイッチではなく磁気スイッチや光学スイッチを採用して押し込み具合を精密に把握できる点が特徴で、これによってメカニカルスイッチを採用した従来製品とは一線を画した高速性能を実現しています。あまりの性能差を発揮するラピッドトリガーの有無で、ゲーミングキーボードかそうでないかをほとんど分けてしまうほどの地殻変動が起きました。
そういう筆者はというと、普通のメカニカルスイッチを搭載した「Pulsar Gaming Gears PCMK JIS TKL」で『VALORANT』をボンヤリ遊んでいます。そんな折、編集部にあったロジクールG「PRO X TKL RAPID」のサンプルを試す機会に恵まれたので、短期間ながら借用して普段のゲームプレイに使ってみることに。
忙しい方向けにまとめておくと、たしかに入力のオンオフが明らかに次元の違う高速さで行われていてビックリ。個人的には必要ない機能もありますが、ロジクールでデスク上をまとめたいユーザーにとっては完成度が高く充実した製品にまとまっていると思います。
写真で見るロジクールG「PRO X TKL RAPID」
さっそく今回触ったロジクールG「PRO X TKL RAPID」について写真で見ていきましょう。編集部にあった試用サンプルはホワイトカラーで、金属製のトップカバーはざらっとした表面加工のシルバー。このほかビビッドなマゼンタと、無難なブラックカラーがラインナップされています(直販価格は32,780円ですが3月21日時点ではセールで28,500円から販売中)。
いずれもキーキャップは日本語表記を廃したスッキリしたデザインで、光が透過するようになっています。
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パッケージ。各所を周遊して少し疲れている様子です
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ぱかりと開封。白い紙で梱包されており、ビニールの使用を減らす取り組みが行われています
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付属のケーブル(1.8m)はしなやかで取り回しやすそう
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取り出したところ
このロジクールG「PRO X TKL RAPID」が筆者のお眼鏡に叶った極めて重要な点として、ラピッドトリガー搭載かつ“日本語レイアウト”であることが挙げられます。昨今ラピッドトリガーを搭載したキーボードはいろいろとありますが、日本語レイアウトとなると一気に製品が減ってしまいます。他メーカーの後塵を多少拝した形ですが、それでもロジクールが日本語レイアウトのG PRO X TKL RAPIDを発売してくれたことに感謝したい気持ちでいっぱいです。
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マウス操作の邪魔になるテンキーを除去した日本語レイアウトを採用
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不要なかな入力用の日本語表記を省きつつ、しっかり記号を表記してくれるキーキャップのデザイン
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ゲーミングキーボードですが、特にWASD周辺の意匠に変化はありません
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2段階のキックスタンドで好みの高さも選択可能
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キーキャップの天面が人間工学的なカーブを描きます
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右奥にはダイヤルやボタンも完備。音量調節やメディア機能をファンクションキーなしで利用できます
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USB-C端子は左側
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軸は0.1mm単位で調節可能な磁気スイッチです
本体右奥のメディア機能は便利そう。他メーカーにはファンクションキーとの組み合わせで使える製品もありますが、一発で押せることに越したことはありません。ただしこのボタンのために奥行きが多少張り出しており、コンパクト感とのトレードオフになっています。
ロジクールといえばG HUB
箱から取り出したところで、さっそくPCにつないでG HUBをインストールしましょう。手持ちのヘッドセット、マウス、マイクをロジクール(Blue)で統一しているこだわり派のゲーマーならもう入っているかも。ロジクールが送り出す周辺機器のほぼすべてを統括できる統合ユーティリティで、製品が備えたカスタマイズ機能を利用できるようになります。インストールしなくても設定変更を行える昨今流行りのWebドライバーには対応していませんが、ここはロジクール製品を使うための作法に従っておきたいところ。
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インストールして接続したところ。すぐにファームウェアアップデートの通知が表示されました
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Windows 11にはPCに接続されたRGBデバイスを設定画面から制御できる機能が最近追加されており、G HUBのインストールでこれに対応します
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Windows 11の設定画面。OSからキーボードのライティングを認識できるようになります
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サンプルのラピッドトリガー機能はデフォルトで無効化されていました。ぜひG HUBをインストールして有効化してきましょう
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キーごとに有効化する方法がわからず、いったん0.2mmで全部有効化
よくある話ですが、強力なデバイスも適切に設定されていなければ宝の持ち腐れ。サンプルユニットだけかもしれませんが、標準でラピッドトリガーは有効化されていなかったので、しっかり有効化しておきましょう。上の画面ではアクチュエーションポイントの深さを0.1~2.0mmの範囲で設定することも可能なので、好みに応じて調節できます。
明らかに速く感じられるレスポンス。メカニカルには戻れない
G HUBをインストールしてラピッドトリガーも有効化し、さっそくいつも遊ぶ『VALORANT』を起動しました。このゲームでは移動中に武器の射撃精度が低下してしまうため、発砲する直前に立ち止まる必要があります。つまり、移動→敵発見→操作停止→射撃という一連の操作をどれだけ高速に行えるかが勝敗を分けます。
このうち、ラピッドトリガー機能があれば操作停止を高速に行えるようになる点が最大の強み。一般的なメカニカルキーボードでは、キーから指を放しても上に跳ね上がるまでの一瞬も入力が継続されますが、ラピッドトリガーは押されていた最深部からわずかに上へと開放された段階で入力がなくなります。これが応答の速さとなり、自分のキャラクターが立ち止まる速さとなり、敵への反撃への速さになるというわけ。
いざゲームでPRO X TKL RAPIDを使ってみると、明らかにレスポンスが速く感じられてビックリしました。入力を検知するアクチュエーションポイントが浅いこともあってキーを押した瞬間から移動が始まり、離した瞬間に止まります。指の動作が即座にゲーム内に反映されるような感触で、まさに“キビキビ”しています。メカニカルキーボードを使っていた今までのプレイは、もっさり感を含んだキャラコントロールだったのか……と理解が得られる始末です。
『VALORANT』だけではなく、『オーバーウォッチ2』のようにストッピングの必要ないゲームでも磁気スイッチは快適。アクチュエーションポイントが浅いためにキビキビ動かすことができ、もっさり感から解き放たれた軽快なプレイを楽しめます。
個人的にはマゼンタがぜひ欲しい
ここまでロジクールG「PRO X TKL RAPID」を見てきた本記事。磁気スイッチの圧倒的な性能でかつてないレスポンシブなゲーム体験を実現しており、従来製品とは一線を画していることがわかりました。日本語レイアウト仕様のラピッドトリガー製品、磁気スイッチ採用モデルとなるとなかなか少ない候補の中で、「PRO X TKL RAPID」は有力な選択肢になるはずです。今回試用したホワイトも良かったですが、筆者としてはぜひビビッドなマゼンタモデルが欲しいなと思いました。