モジュラー設計を採用し、ユーザーがパーツを交換・修理・アップグレードできるノートPCを開発・販売する米Frameworkは、2月25日(米国時間)、初のデスクトップPC「Framework Desktop」を発表した。小型で高性能なゲーミングPCを求めるユーザーや、ローカル環境で生成AIモデルを運用する層を主要ターゲットとしている。

デスクトップPC市場は、ノートPCに比べ修理やアップグレードの自由度が高く、自作も可能なため、Frameworkのモジュラー設計という強みを活かしにくい分野である。しかし、同社は1月にAMDが発表した「Ryzen AI Max」シリーズに着目し、この新チップのポテンシャルを最大限に引き出せるデスクトップPCの開発を決断した。

Framework Desktopは、「Ryzen AI Max 385」および「Ryzen AI Max+ 395」を採用している。最大16のCPUコア、最大5.1GHzのブーストクロック。Radeon 8060S GPUを統合。メモリは最大128GBのLPDDR5xをサポートする。この強力な統合GPUを搭載したプロセッサは、デスクトップではコンパクトなフォームファクタで静音性と冷却性を保ちながら、120Wのサステイン電力と140Wのブースト電力で、その性能を最大限に発揮できる。

Frameworkは、ゲーミング用途に十分な性能を確保しつつ、同社の強みであるモジュラー設計を活かし、自作PCのようにユーザーがアップグレードや修理、カスタマイズを自由に行える小型デスクトップを実現した。

Framework Desktopのメインボードは、標準的なMini-ITXフォームファクタを採用し、ATXヘッダー、PCIe x4スロット、そして豊富なリアI/O(USB4 ×2、DisplayPort ×2、HDMI、5Gbit Ethernet)を備えている。そのため、ユーザーが自分のケースに組み込むことも可能である。

冷却システムはCooler Master、Noctuaと共同開発し、標準的な120mmファンを採用。ストレージには、最大16TB対応のPCIe NVMe M.2 2280スロットを2基搭載。通信面では、RZ717 Wi-FiモジュールによるWi-Fi 7をサポートする。

ただし、メモリの交換やアップグレードは不可となっている。Ryzen AI Maxシリーズは、256bit幅のLPDDR5x-8000をサポートし、256GB/秒の帯域幅を実現する。この高帯域幅はメモリのチップセット統合によるものである。Frameworkは従来、ユーザーがメモリを交換できる設計を重視してきたが、256GB/秒の帯域幅をユーザーにもたらすために、メモリ交換不可のトレードオフを受け入れ、代わりにメモリの価格設定を抑えた。

例えば、Ryzen AI Max+ 395(128GBメモリ)の基本システムは1,999ドルである。Ryzen AI Max+ 395(64GBメモリ)は1,599ドルで、64GBから128GBへのメモリ増量コストは400ドルとなる。同じユニファイドメモリ・アーキテクチャのMacBook Studioを例にすると、64GBから128GBへのメモリ・アップグレードに800ドルが必要となる。メモリの価格だけで比べると、Framework Desktopはリーズナブルな価格設定となっている。

生成AIモデルをローカルで実行するには、GPUの演算性能以上に、モデルを展開するためのメモリ容量が重要となる。しかし、GeForce RTX 50シリーズでもVRAMは最大32GBにとどまる。一方、最大128GB、高速な統合メモリを搭載するFramework Desktopなら、大規模で高性能なAIモデルをローカル環境で快適に動作させることができる。Frameworkは、「最上位モデルのRyzen AI Max+ 395構成(メモリ128GB)は、わずか1,999ドルから。ゲーミングに優れるだけでなく、AIワークロード向けとして破格のコストパフォーマンスを提供する」と強調している。

Framework Desktopは2025年第3四半期の出荷を予定している。現時点では全てDIYエディションとなっており、ストレージやOSを自由に組み合わせられる。基本システムは1,099ドル(Ryzen AI Max 385: 32GBメモリ)から。最上位のRyzen AI Max+ 395(128GBメモリ)は1,999ドルである。参考として、M4 Max搭載のMacBook ProやM2 Max搭載のMac Studioを128GBメモリ構成にすると5,000ドル近くになる。大容量の統合メモリを用いたローカルでの生成AI実行環境として、コストパフォーマンスに優れた選択肢として注目を集めている。

ケースのフロントパネルは、タイル(21色)でパーソナライズ可能。このデザイン仕様は公開されており、ユーザーが自身で3Dプリントすることもできる。また、前面にFrameworkのノートPCと共通の拡張カードスロットを備え、USBポートやオーディオなど多様な拡張カードで機能をカスタマイズ可能である。