現在公開中のWindowsターミナル安定版Ver.1.22とプレビュー版Ver.1.23では、GUI設定が変更になった。ここでは、最新のWindowsターミナルのGUI設定について解説する。
Windowsターミナルプレビュー版Ver.1.23
Windowsターミナルプレビュー版Ver.1.23(以下プレビュー版と表記)は、2025年2月6日に公開された。同日、安定版Ver.1.22も公開されている。今回の解説は、安定版Ver.1.22とプレビュー版Ver.1.23を元に行った。
Windowsターミナルは、登場時、設定は、JSONファイルを修正するものだったが、Ver.1.6でGUI設定が搭載され、外部JSONエディタを使わずに主要な設定を変更できるようになった。ただし、いくつかの設定項目は、Settings.jsonファイルでのみ指定可能なものがある。
GUI設定は、Windowsターミナルに新規の設定項目が増えると変更になることがあるが、プレビュー版では、比較的大規模な変更となった。GUI設定は、設定項目を階層化して整理しているが、そのトップレベルの階層に変化があった。従来、JSONファイルでのみ指定可能だった、メインメニューのカスタマイズやベル音の指定をGUI設定で行うことが可能になった。
その他の大きな変更点としては、入力でC1コントロールコードの利用が可能になった点がある。VT系のエスケープシーケンスの一部は、8 bit文字コードのC1コントロールコードで定義されている。C1コントロールコードの代用が「Esc」コードと文字を組み合わせたものだ。
従来、WSLに関しては、Windowsターミナルがインストールを検出して、自動プロファイルとしてメニューに登録を行っていたが、WSL側がインストール時に自身をWindowsターミナルのプロファイルとして登録するようになった。このため、WSLのプロファイルの扱いに変更がある。
GUI設定
GUI設定は、メインメニューの「設定」で開くほか、標準では、「Ctrl+,」で開くことができる。アクションとしては“Open settings”であり、これを他のキーに割り当てることも可能だ。
設定ページは、(図01)のようになっており、左側が設定項目を分類するリスト、右側が設定項目を表示するエリアになっている。
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図01: WindowsターミナルのGUI設定は、左側に設定項目の分類リストがあり、右側に設定項目が並ぶ。項目数の多いものは畳まれていて、下向き矢印をクリックして開く。また、選択項目は囲みの中に下向き矢印があり、クリックすると選択項目の小さなリストが表示される
設定項目は、「スタートアップ」、「操作」、「外観」、「配色」、「レンダリング」、「互換性」、「操作」、「新しいタブメニュー」の8つの基本設定項目(ターミナル全般の設定)と、「プロファイル」設定に分かれる。
プロファイル設定は、各プロファイルの共通設定値となる「既定値」と、個々のプロファイルに別れる。
基本設定項目
表01は、基本設定項目の既存項目(v1.21までの項目)とv1.22(現在の安定版)、v1.23(プレビュー版)での増減を示す。色をつけてあるのが変化のあった部分だ。
安定版v1.22では大項目として「互換性」が、プレビュー版v1.23では、「新しいタブメニュー」の2つが追加された。
大項目ごとに見ていくと、先頭の「スタートアップ」には変更点はない。次の「操作」では、警告カテゴリが新設され、元々あった1項目に加え、3項目が追加されている(写真01)。このうちわかりにくいのは「試験段階:選択した色のテキストにキーバインドを追加する」(英語表記は、Experimental: Add key bindings to color selected text)だ。これは、ターミナル内でテキスト範囲を選択している場合(マークモードやマウスドラッグなど)に、「Alt+数字」で文字カラー、「Ctrl+数字」で背景色を指定して色を付ける機能だ。バッファをクリアしない限り、色を付けたテキストはそのままになる。過去にコマンドで出力したテキストなどに色を付けておけば、あとから参照するのがラクになる。いわゆる「マーカー」を引くような感じの機能だ。ただし、試したところ、「Alt+数字」による文字カラーの指定はうまくいかず、Ctrl+数字では、背景色はつくが、選択範囲の1つ右側の文字まで色がついてしまう。なお、数字は、0から9のどれか1つを使う。試験段階の機能なので、こうした不具合はしょうがない。
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写真01: 「操作」は、ターミナルの基本的な動作を指定する。ここでは、「Webの検索アクションに使用する既定のURL」、「試験段階:選択した色のテキストにキーバインドを追加する」の2つの設定項目が追加された。「警告」サブカテゴリが新設され3つの設定項目が追加された
なお、日本語表示では、この項目と、キー割り当てが同じ「操作」になっている。この項目は英語版では、“Interaction”、キー割り当ての方は“Action”である。
「外観」は、3つの項目がプレビュー版で追加(写真02)、「配色」には、Ottossonカラースキーマが追加された。「レンダリング」には変更がない。
「互換性」は、v1.22で新規に追加され、v1.23プレビュー版で「デバッグ機能を有効にする」が追加された(写真03)。これは、もともとsettings.jsonでは指定できた機能。この機能を有効にしたとき、キーボード左右のAltキーを同時に押したまま、新しいタブを開くと、2つに分割され、片方にデバッグ用ペインが表示される。ここには、左側のペインに出力が、そのまま、エスケープシーケンスなどを解釈しないで表示される(写真04)。
「互換性」の下に表示される「操作」は、現在のキー割り当てを示す(写真05)。キー割り当ては、標準の割り当てであるdefault.jsonファイルでの定義、settings.jsonファイルでの定義を組み合わせたもの。なお、今回のプレビュー版ではこの設定項目自体には変更はない。
新しいタブメニュー
「新しいタブメニュー」は、プレビュー版でGUI設定に追加された新しいカテゴリだ(写真06)。メインメニューのプロファイルのリスト部分をカスタマイズして、フォルダ構造を作ることができる。
メニューのカスタマイズ機能自体は、v1.17で導入されたが、これまでは、settings.jsonに“newTabMenu”オブジェクトを記述するしか方法がなかった。
v1.23プレビュー版でようやくGUIを使ったメニューカスタマイズが可能になった。なお、基本的な原理は、JSONによる設定と同じ。これについては、Windows Terminal ベスト設定 第10回「メニューをカスタマイズ」で解説している。
メニューをカスタマイズするには、「プロファイル」をタブメニューリストに登録、必要な場合はフォルダを作成してプロファイルをフォルダに移す。
なお、プロファイルは、「特定のプロファイル」を指定するほかに「プロファイルマッチャー」で指定した条件を満たすプロファイル(複数可)、リストに登録されていないプロファイル「残りのプロファイル」が、リストのルートやフォルダの要素として指定できる。
また、同一のプロファイルがリストの複数のフォルダに登録されてもかまわない。
注意するのは、「新しいタブメニュー」で編集したのち、「保存」で設定を保存しない限り、メニューの変更が有効にならない点。
プロファイル設定
Windows ターミナルの「プロファイル」とは、ターミナルのタブ内で実行されるシェルまたはコンソールプログラムの登録情報だ。ターミナルは、登録されたプロファイルを使って、シェルを起動する。
一部の設定は、プロファイルごとに設定することができる。また、プロファイルの設定は、共通の初期値となる「(プロファイル)既定値」の設定(写真07)と、個別のプロファイルの設定を組み合わせたものになる。共通の初期値設定があることで、同じ設定をプロファイルごとに繰り返す必要がなく、背景色やフォントなどを同じにして共通性を出すことが可能だ。このため、プロファイル名など一部を除き、「既定値」と個別プロファイルの設定項目は、ほぼ同じである。
表02は、プロファイル関連のGUI設定の変更点だ。大きな項目としてはV1.22から「ターミナルエミュレーション」が追加された。
アイコン設定は、従来、アイコンを示すファイル名(URI)を直接指定していたが、V.1.23で、「アイコンピッカー」機能が導入された。これは、アイコン指定を「なし」、「組み込みアイコン」、「絵文字」、「ファイル」(画像ファイル)から選び、それぞれの選択方法を提示するもの(写真08)。たとえば、組み込みアイコンなら、アイコンのリストを表示し、ファイルなら「参照」ボタンを表示する。
「外観」(写真09)では、「テキストの配色」設定で、カラースキームの選択だけでなく、「前景」、「背景」、「選択の背景」を個別にカラースキーマの色あるいはRGB値で指定可能になった。
また、「ウィンドウ」のパディングは、4方向のパディング値を設定できるようになった(写真10)。
ターミナルエミュレーション(写真11)は、v1.22で追加された項目で、もともとあった「タイトルの変更を表示しない(詳細設定)」を移動し、新たに4つの項目を追加した。
「詳細設定」では、いくつか追加項目がある。このうち「パスの変換」は、コマンドラインに渡すパスのドライブ文字とパス区切り文字をどうするかを指定するもの。
ファイルやフォルダをドラッグ&ドロップで、Windows ターミナルのペインに落としたときにコマンドラインには該当のパス文字列が入力される。
このとき、変換処理を行うかどうか、どの変換処理を行うのかを指定する。選択肢は「なし」、「WSL」、「Cygwin」、「MSYS2」の4つ(写真12)。実行シェル環境により切り替える。
これまでいくつかの新機能は、settings.jsonでのみ設定可能だったが、v1.23で、ほぼGUI設定が追いついた状態だ。
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