シャオミの高機能スマートフォン「Xiaomi 14T Pro」が登場しました。カメラメーカーのライカと協業したカメラシステムを搭載し、既存のハイエンドスマートフォン「Xiaomi 14 Ultra」に劣らぬスペックを搭載しつつ、比較的コストパフォーマンスに優れた製品となっています。

  • Xiaomi 14T Pro

    Xiaomi 14T Pro

ハイエンドの性能

「Xiaomi 14T」シリーズは、SoCにMediaTek製品を採用することなどでコストを抑えたハイパフォーマンススマートフォンです。最近はMediaTek製SoCの採用例が増えてきており、選択肢が増えました。

本機に搭載しているのはMediaTek Dimensity 9300+。GPUとしてImmortalis-G720 MC12、AI処理にMediaTek NPU 790を搭載しており、Qualcomm製SoCにも十分対抗できるスペックを備えています。メモリは12GB、ストレージは256GBまたは512GBです。

ベンチマーク性能では、3D性能を測定する3DmarkのWild Extremeテストが4,028、Steel Nomad Lightテストが1,449など。アプリ性能などを測定するPCMarkのWork 3.0テストが15,206、GeekBenchのCPU性能はシングルコアが2,157、マルチコアが7,016、GPU(OpenCL)が12,420、GPU(Vulkan)が14,371となりました。Antutuはトータルが1,935,921でした。

パフォーマンスとしては、Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxyを搭載した「Galaxy Z Fold6」と比べても遜色ないレベルで、全体としてはほぼ同等という印象でした。

ベンチマークスコア(モトローラ「razr 50s」、サムスン電子「Galaxy Z Fold6」と比較)

Xiaomi 14T Pro razr 50s Galaxy Z Fold6
SoC Dimensity 9300+ Dimensity 7300X Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy
3Dmark Wild Life Extreme 4,028 854 4,266
Wild Life Maxed Out 3,116 Maxed Out
Solar Bay 6,396 N/A 6,908
Steel Nomad Light 1,449 348 1,362
PCMark Work 3.0 15206 15153 18400
GeekBench Single-Core 2,157 1,040 1,784
Multi-Core 7,016 3,003 5,774
GPU(OpenCL) 12,420 2,601 13,055
GPU(Vulkan) 14,371 2,521 10,602
GFXBench マンハッタン3.1 6,848 2,952 7,392
マンハッタン3.1オフスクリーン 9,756 3,482 10,760
Aztec Ruins OpenGL High Tier 4,949 1,277 3,595
Aztec Ruins Vulkan High Tier 4,516 1,336 3,876
Antutu トータル 1,935,921 N/A 1,422,604
※「Maxed Out」はそのテストで計測できる上限値を超えて計測不可となったこと、「N/A」は当該テストを実行していないことを示します。
  • Geekibenchのテスト結果

    Geekibenchのテスト結果

  • 3Dmarkのテスト結果

    3Dmarkのテスト結果

ミッドレンジ向けのDimensity 7300Xと比べてもハイエンドらしいスペックとなっており、Snapdragon 8 Gen 3との比較では、Antutuで思ったよりも差があった以外は、一進一退というか、おおむね同等といった感じのパフォーマンスのようです。

普段の用途で使っていて困ることはなく、パフォーマンスとしては問題なくハイエンド。シャオミの場合、Snapdragon 8 Gen 3を搭載した「Xiaomi 14 Ultra」もあり、カメラスペックなどを踏まえるとそちらが文字通りのハイエンドだとは思うのですが、「Xiaomi 14T Pro」もハイエンドクラスの製品といってよさそうです。

「AIディスプレイ」という有機ELディスプレイを採用しており、解像度は2,712×1,220ピクセル、リフレッシュレートは最大144Hz、タッチサンプリングレートは最大480Hz。輝度やカラー、タッチコントロールなどにAIを活用しているという話のようですが、正直なところ違いはよく分かりません。輝度やカラーに問題は感じず、リフレッシュレートの高さも魅力です。

  • 本体正面

    大画面を搭載。ディスプレイの性能面でも十分優れていると思います

  • 本体背面

    背面はシンプルでおサイフケータイのアイコンもありません

本体サイズはH160.4×W75.1×D8.39mm、209g。奇をてらわないというか、いたって普通のデザインで、特別特徴があるわけではありません。背面の四角いスペースにレンズとLEDライトが整然と並んでいて、iPhone 16 Proシリーズよりも眼の数が1つ多いのでインパクトはあります。

  • 右側面

    右側面。電源ボタンはざらつきがあって分かりやすくなっています

  • 左側面

    左側面はシンプル

  • 点面

    天面

  • 底面

    底面にはUSB Type-C端子とSIMカードスロット

日本向けということでおサイフケータイにも対応している点は大きなメリット。「Xiaomi 14 Ultra」はおサイフケータイに非対応だったので、「シャオミのライカカメラ搭載スマートフォンでおサイフケータイ対応」というのは本機ならではの魅力になります。背面にはおサイフケータイのロゴもなくスッキリしています。

ライカの風情を再現するカメラ

カメラはトリプルカメラで、「ライカプロフェッショナル光学レンズ」としてVARIO-SUMMILUX 1:1.6-2.2/15-60 ASPH.を搭載。メインカメラは有効画素数5,000万画素のLight Fusion 900センサーを採用し、ピクセルビニングによって2.4μmの大型ピクセルピッチを実現しています。レンズの焦点距離は35mm判換算で23mm、F値はF1.6。

  • カメラ部

    3つのカメラを搭載。LEICAロゴと、その下に見にくいですがVARIO-SUMMILUX銘があります

望遠カメラは5,000万画素でピクセルビニング対応。焦点距離は60mm相当、F値はF2.0。超広角カメラは1,200万画素、焦点距離は15mm、F値はF2.2。望遠カメラは倍率としては2.6倍とやや中途半端で、60mmというのも微妙な焦点距離です。ただ、望遠を抑えた方がレンズの性能は向上させやすいので、ピクセルビニングと合わせて画質を重視したのかもしれません。

ライカとの共同開発ということで、高いカメラ性能が期待できます。従来通りLeica Authentic LookとLeica Vibrant Lookという2つのプロファイルを選択可能。端的に言えば「ライカ風」と「シャオミ風」で、自然な色再現と露出を抑えめにしつつシャドーが潰れない表現といったライカらしい写り方をするのがAuthentic Lookの方です。

  • Leica Authentic Lookでの撮影例1
  • Leica Vibrant Lookでの撮影例1
  • 左がLeica Authentic Lookでの撮影。ブルーのトーンが落ち着いています。これだとそれほど差は感じませんが、全体的に落ち着いたトーンと露出になります。右はLeica Vibrant Lookで撮影。暗部の持ち上げがそれほど激しくはないのでスマートフォン的といっても落ち着いてはいますが、それでも派手めの写りになります

  • Leica Authentic Lookでの撮影例2
  • Leica Vibrant Lookでの撮影例2
  • 同じく、左がLeica Authentic Look、右がLica Vibrant Lookでの撮影例。右はわかりやすく派手になっています

基本的な写りは十分以上のレベルです。しっとりとした表現は一般的なスマートフォンにはない写りで、ライカらしいという印象です。フィルターも「Leica」の名称を冠したモードが複数用意されており、ライカらしさを楽しめます。

  • 「Leica VIV」フィルターの撮影例

    「Leica VIV」フィルターで撮影

  • 「Leica BW NAT」フィルターの撮影例

    「Leica BW NAT」フィルターで撮影

  • 「Leica Sepia」フィルターの撮影例

    「Leica Sepia」フィルターで撮影

  • 「Leica Blue」フィルターの撮影例

    「Leica Blue」フィルターで撮影

シャッタースピードやホワイトバランスなどが設定できるプロモード、主要被写体にピントを合わせながら背景をボケさせる動画モードの「映画」なども搭載しますが、写真で背景ボケを強調する「ポートレート」モードに「35mm判換算の焦点距離」でズームする機能が搭載されているのは面白い点です。

  • 暗い屋内での撮影例

    難しいシーンですがバランスよくHDRで再現しつつ、シャドーをきちんと落とすことで落ち着いた雰囲気になりました

  • 花の撮影例1
  • 花の撮影例2
  • 左はボケ味が良好でしっとりとした写り。右はデジタルズームによる撮影で120mm相当になっていますが、使っているレンズはメインカメラで、被写体までの距離が近かったのでメインカメラでのデジタルズームになったようです

23mm/35mm/60mm/75mmという4つの焦点距離を用意。単焦点レンズを付け替えるイメージで撮影できます。他にも夜景モード/デュアルビデオ/監督モードといったモードがあって、撮影方法は充実しています。

  • 23mm相当での撮影

    23mm相当での撮影

  • 35mm相当での撮影

    35mm相当での撮影

  • 60mm相当での撮影

    60mm相当での撮影

  • 75mm相当での撮影

    75mm相当での撮影

画質面やカメラの機能としてはハイレベルなのですが、最大の難点としてシャッター音がやけに大きい点があります。今回の試用機はキャリアモデル(ソフトバンク)だったのですが、かなりシャッター音が大きくなっています。ここまで大きくすることはないだろうというぐらいの音の大きさなので、カメラを頻繁に使う人は、メーカー版(SIMフリー版/オープンマーケット版)を選んだ方が良さそうです。

  • 超広角カメラで撮影

    超広角カメラでの撮影。細部の再現は弱め。暗部もノイジーなので、ちょっと他のカメラとの画質差が大きいようにも感じます。このあたりはピクセルビニングの効果でしょう

  • メインカメラで撮影

    メインカメラ。画面全体にわたってよく解像していて、細部もよく再現されています

  • メインカメラ/デジタル2倍ズームで撮影

    2倍ズームでの撮影。これはデジタル処理によるもので、画質劣化は最小限です

  • 望遠カメラ/光学2.6倍ズームで撮影

    2.6倍ズームですが望遠カメラです。光学倍率としては他社スマートフォンより抑えめですが、その分画質は良好。5,000万画素のピクセルビニングであることも功を奏していそうです

  • 望遠カメラ/デジタル5倍ズームで撮影

    UIには5倍までのズームボタンが用意されていますが、デジタルズームとなっています。デジタル処理の影響は感じられますが、通常利用であれば問題ないでしょう。5倍ですが焦点距離としては120mm相当で、望遠カメラが使われています

  • 望遠カメラ/デジタル10倍ズームで撮影

    10倍ズーム。それなりに描写は甘くなりますが、まだ実用的なレベル

  • 望遠カメラ/デジタル20倍ズームで撮影

    20倍ズーム。拡大しなければ使えるぐらいの画質

  • 望遠カメラ/デジタル30倍ズームで撮影

    30倍ズーム。このクラスの画質としてはかなり高めでしょう

撮影例

  • 撮影例1
  • 撮影例2
  • 撮影例3
  • 撮影例4
  • 撮影例5
  • 撮影例6

    昼間の写真から夕景、夜景まで、バランスよく写り、画質も高いので安心して撮影できます

充実したAI機能

AI機能が強化されているのも本機の特徴です。AIサービスとしてメモ/ギャラリー/レコーダー/AI字幕/AI通訳/Googleのかこって検索が用意されています。

  • AIサービス

    AIサービスとして複数の機能が用意されています

レコーダーは、録音した音声のテキスト化が可能。テストでは25分の音声をテキスト化してみたところ、まず4分ほどの時間が経過してから、少しずつテキスト化が進みます。「音声をクラウドにアップロードし、再生しながらリアルタイムにテキスト化をしている」というような印象です。

  • レコーダー

    個人的に期待のレコーダー。リアルタイム変換はできないので、いったん録音した後にテキスト化します

  • 言語の選択

    対応言語は幅広くカバー

再生と同時にテキスト化を実行したところ、アップロード時間が必要になるものの、テキスト化の方が先に終了したので、実時間よりは速くテキスト化が進行していました。それでもそれなりの時間を要します。

  • テキスト化の画面

    見た目だけはリアルタイム変換のように少しずつテキスト化が進行していきます。実時間よりは早く変換が終わりました

精度はかなり高め。テキスト化の時点でまず言語を選択する必要がありますが、「Xiaomi」という言葉を英語の「Show me」と認識してしまうようなこともあって、多少の間違いはありますが、「Google Pixel」のレコーダーアプリ並みの精度はありそうです。ただし前述のように時間がかかるので、長時間の音声のテキスト変換はあまり実用的でないように感じました。

メモでは、作成したメモの要約/校正/翻訳といった作業が可能。まだ試用機のためか動作が不安定で、あまりしっかりとは確認できなかったのですが、例えば要約の上限は5,000文字までで、それなりに変換時間なども要するようです。日々のメモやメール本文を事前にチェックするなどの用途で使うのは便利かもしれません。

  • テキスト化して保存したメモ
  • メモから利用できるAI機能
  • AIによる要約結果
  • 左はテキスト化したデータをメモに保存したところ。「AI」をタップするとAI機能が利用できます。中央はメモから利用できるAI機能です。右はAIによる要約結果

ギャラリーでは、よくある機能と言ってはなんですが、消しゴム機能で画面内の余計なものを消去できます。通常モードに加えて「Pro」モードも用意。こちらはクラウドを使った生成AIによる消去機能のようです。単に消去だけでなく、謎の物体と置き換わるというありがちな状況も発生します。

  • ギャラリーのAI機能
  • 通常モードの画面
  • ギャラリーのAI機能。オンデバイスの通常モードと、クラウドを使うProモードの2種類があるようです(左)。右は通常モードの画面

  • 「線を消す」実行中
  • 「人を消す」実行中
  • 左はProモードの「線を消す」機能を実行しているところ。右は「人を消す」「すべて」で映り込んだ人物を一括して消しています。通常モードだと「すべて」という項目ががないので、1つずつ消す形になります

  • 元画像
  • AIでカボチャを消去しようとした画像

    上の元画像から、Proモードでカボチャを消去……しようとしたところ、なにやら謎の物体に置き換わりました。ただ、カボチャの背後はかなり自然になっています

  • 空港の元画像
  • 空港の修正画像

    こちらも上の画像から柵をAIで削除したもの。自然ではない場所もありますが、それなりに誤魔化されています

トリミング機能には、逆の拡大機能も搭載。周囲の景色を予測して生成する機能で、Photoshopなどにも搭載されている機能です。それなりにそれっぽい風景を生成してくれるのが面白いところ。ただしAIなので不自然になる場合もあります。またもちろん、AIで生成した画像を「本物」のように装ってフェイク画像として使ってはいけません。

  • AI拡大機能

    周辺を生成する「AI拡大」機能

  • AI拡大の元画像1
  • AI拡大を行った画像1

    上の元写真をAI拡大で拡大したところ。実際の風景とは異なりますが、自然に見えます

  • AI拡大の元画像2
  • AI拡大を行った画像2

    こちらもAI拡大を行ったもの。一瞬自然に見えましたが、拡大部分ではかなり無茶をしていることが見て取れます

AI字幕は動画やビデオ会議などで音声をリアルタイムでテキスト化し、それを翻訳までしてくれる機能。AI通訳は、それぞれ話した言葉を通訳してくれる機能。このあたりはGoogleが展開している機能でもありますが、シャオミも製品に投入してきました。

  • AI字幕

    AI字幕は動画の字幕をリアルタイム表示してくれます

  • AI字幕でリアルタイム日本語翻訳

    さらにリアルタイムに日本語翻訳も可能です

  • リアルタイム通訳

    リアルタイム通訳機能も搭載

いずれも、基本的にネットワーク接続が必要なようなので、このあたりはレコーダーやメモなどでの利用の際には注意。秘匿しなければならない情報の場合は、利用を避けたほうがよいでしょう。

とはいえ、精度は高く、機能としては十分実用的なレベル。スピードはオンデバイスでの処理に比べて劣りますが、機能としては十分でしょう。

「Xiaomi 14T Pro」は、ライカカメラ監修による高画質とライカらしいしっとりとした描写性能を備えた充実のカメラ機能と、ハイスペック並みのパフォーマンスと多くのAI性能を備えて、しかも10万円そこそこという価格を実現している点が特徴です。

シャープもハイエンドスマートフォンの「AQUOS R9 pro」を発表しており、「ライカ」ブランドのカメラを搭載したスマートフォンのラインナップがさらに拡充されています。本機の下位モデルにあたる「Xiaomi 14T」も、少しスペックは異なるもののライカのカメラを搭載しているので、どれを選ぶかは悩ましいところです。

いずれにしても「Xiaomi 14T Pro」は、日本でも好調で勢いを増すXiaomiらしい、意欲的な製品に仕上がっていました。