KDDIは11月1日、2025年3月度第2四半期(2024年7月~9月)の決算を発表した。売上高は2兆8,557億円、営業利益は5,731億円でいずれも前年同期から増益・増収。決算説明会に登壇した髙橋誠代表取締役社長 CEOは、「通信ARPU/DXの主要事業が順調に成長した」と語った。

  • 髙橋誠 代表取締役社長 CEO

    決算説明会に登壇した髙橋誠 代表取締役社長 CEO

増収増益の好調な決算、通期予想へも順調な進捗

発表された決算内容は、売上高が前年同期の2兆7,790億円から2.8%増の2兆8,557億円となり、通期予想に対する進捗率は49.5%。営業利益は前年同期の5,603億円から2.3%増の5,731億円となり、こちらの通期予想に対する進捗率は51.6%。いずれも順調な進捗となった。

  • 四半期決算ハイライト

    四半期決算ハイライト

2024年度3月期上期と2025年3月期上期の営業利益の増減を事業領域ごとに見ると、通信ARPUで46億円増、DXで114億円増と主要事業で順調に成長。さらに金融・エネルギーで114億円増、ローソンの持分法利益で98億円増となっている。これらがMVNO/楽天ローミング収入の112億円減や技術コストの増加・販促費の増加といったマイナス要因を上回り、増益となった。

  • 連結営業利益の増減要因

    連結営業利益の増減要因

個人向け通信事業の領域では、前述のとおり通信ARPU収入が46億円の増加となっただけでなく、付加価値を含めた総合ARPU収入では207億円の増加となっている。ブランド別では、auが約3%の増加でUQ mobileが約7%の増加。UQ mobileからauへの移行も前年同期の2倍となっており、ARPUの高いauのユーザーが増え、ブランド比率も改善傾向だ。

  • 総合ARPUは拡大、auへの移行も増加

    総合ARPUは拡大、auへの移行も増加

スマートフォンの稼働数(法人契約を含む)は第1四半期末時点の3,246万台から、3,258万台へと増加。auブランドの解約率も、具体的な数字は示されなかったが、低下傾向にあるという。

  • ARPUの基盤となるスマホ稼働数は引き続き増加

    ARPUの基盤となるスマホ稼働数は引き続き増加

  • ARPU収入最大化の戦略

    ARPU収入の最大化を目指し、ユーザー基盤の拡大と付加価値の向上を目指す。そのための戦略がネットワークの品質向上と競争力のある料金プランの提示、さらにローソンとの連携による利便性の提供だ

ARPU収入最大化のための戦略としては、マルチブランドと高品質ネットワークの2点を挙げる。マルチブランド戦略において、auブランドはマネ活プランなどの付加価値サービス、UQ mobileはおトクな料金プラン、povoは新たな体験価値を武器とし、この3ブランドであらゆるニーズにこたえていく。

  • マルチブランドと高品質ネットワーク

    マルチブランドと高品質ネットワーク

これを支えるのが、「体感No.1」を謳うネットワーク品質だ。業界最多の5G基地局を展開するなど積極的な5Gエリア展開を進め、Opensignalのユーザー体感評価でも高評価を獲得。ネットワークの強化は今後も継続していく方針で、近接したSub6周波数帯2ブロックを持つメリットを生かした2周波数対応Massive MIMOの活用、Starlink衛星とスマホの直接通信などに取り組んでいくという。

  • 高品質ネットワークの詳細

    Opensignalのユーザー体感評価において、18部門中13部門でNo.1を獲得したという

  • 2周波数対応Massive MIMOの活用、Starlink衛星とスマホの直接通信

    2周波数対応Massive MIMOの活用を進める。Starlink衛星とスマホの直接通信も年内提供開始を目指している

UQ mobileとpovoでは中容量帯を強化。月間30GBが主戦場に

UQ mobileとpovoでは、すでに発表されたUQ mobileの「コミコミプラン+」povoの360GB(365日間)トッピング追加により、月間30GBをおトクに利用できるプランを用意。さらに年内にはローソンへの来店で通信量をチャージできる「povo Data Oasis」を予定で、サブ回線としての利用を積極的に訴求していく考えだ。

  • UQ mobileとpovoの新プラン/新トッピング

    UQ mobileとpovoの新プラン/新トッピングで、中容量ニーズに対応。「povo Data Oasis」も年内開始予定

auでは前述のとおり、通信と付加価値で顧客との関係の強化を図る。その中核となるauマネ活プランは契約者数100万人を突破、調査でも顧客満足度No.1を獲得するなど好評。固定回線/エネルギー/金融・決済/コンビニといった多角的なサービスとの連携を強化していく。エネルギー/金融の側もauの顧客基盤により事業が順調に拡大。

  • auの魅力向上

    auでは通信+付加価値で魅力向上を図る

  • 金融/エネルギー領域でのシナジー

    金融/エネルギーは通信とのシナジーで顧客基盤を拡大

Pontaパスは好調なスタート

新たにこの一角に加わったローソンも同様に、auユーザーの利便性を拡大するとともに、au顧客基盤をいかした成長を図る。その施策としてauスマートパスをリニューアルし、ローソンで使えるクーポンの配布などが加わったPontaパスはすでに大きな効果が出ており、リニューアル後2週間でアクティブユーザー数は1.5倍になるという好調なスタートになった。

  • ローソンとの連携

    ローソンとの連携

  • Pontaパスと顧客接点の拡大

    Pontaパスは非常に好調なスタート。さらにPonta経済圏の拡大を目指す

NTT法見直し議論で示された新たな方向性に賛同の方向

このあと、髙橋社長はビジネスセグメントや経営基盤の強化について説明し、最後にNTT法についてのKDDIの考えを説明した。

10月29日に総務省で開催された審議会において、NTT法の見直し案に新たな方向性が示され、髙橋社長をはじめKDDI/ソフトバンク/楽天モバイルの3キャリアのトップが賛同の意向を表明したのは記憶に新しい。

髙橋社長は、これまでKDDIとして主張してきたとおり、「現在の法体系をあえて変更(NTT法を廃止)する論拠は見当たらない」ということが認められ、有識者も同様の見解であったとし、今後の審議会において答申が取りまとめられるのに傾注していきたいと語った。

  • NTT法改正についてのまとめ

    NTT法改正についてのまとめ

ミリ波普及には現在検討されている1.5万円の値引きでは不十分

髙橋社長のプレゼンテーションの後は質疑応答となった。主なやりとりを紹介する。なおここで紹介するやり取りのKDDI側の回答者は、いずれも髙橋社長だ。

――UQ mobileの30GBプラン投入により、ARPUが下がる、auからUQ mobileへの移行が発生するという懸念はないか。

料金はそのままなので、右肩上がりが継続すればよいとは思っている。ただ、中容量帯の競争が激しくなっているのは間違いないので、そこで月間33GBかつ固定回線セットを必須としない、競争力があるプランにした。それで物足りないという考えでpovoにも360GB(365日間)のトッピングを追加した。セカンド回線としての利用の競争においても、povoはもともとセカンド回線としての利用を想定していたところもあるので、他キャリアユーザーにも使ってほしいと考えている。

――auマネ活プランが始まって1年たつ。1年間限定の特典があったが、次の手は考えているか。

他社からも似たプランが出ているし、次の手は考えている。

――端末販売が前期より11万台増えているが、その受け止めは。また、ミリ波割引拡大など、いま検討されている端末割引についてどう受け止めているか。AIスマホの優遇などのほうが望ましいのではないか。

端末としては、オンデバイスAIを持つ端末を増やしたい、既存ユーザーの買い替えを促進したいと考えているのでよいことだと思っている。新たなガイドラインについては、現状ミリ波の端末トラフィックがほとんどない現状だが、この先はミリ波にいくしかない。ガイドラインの1.5万円の値引きだけでなく、政策的な施策、端末メーカーへの働きかけなどを行う必要があると考える。AIスマホをやるべきというのは同感。高付加価値端末をユーザーに届けやすい仕組みにすることで、トラフィックが上がり、我々が収入を得て投資するという好循環が生まれる。

――楽天がAIサービスを発表しているが、KDDIのコンシューマー向けAIサービスの方向性は。

楽天を見習うべきところはある。ユーザーとの接点をどう作っていくかという競争がある。au PAY/Pontaパスもそのひとつ。その接点にどうAIを組み込むのかが勝負になる。ここでの競争については積極的に取り組みたい。直近では、iPhoneにRCSが搭載されるようになり、Geminiとの相性もよさそうなので、ここに注目している。

――ドコモが社長が交代して以降、エンタメ重視の姿勢を強めているが、その点について思うところは。

「ローチケ」が近い領域かと思う。また最近、インディーズ、電子チケットに強い「ライブポケット」をエイベックスから譲り受けた。そのあたりで戦っていきたい。

――Direct To Cell(衛星とスマホの直接通信)について。2024年中のサービスインとかなりのスピードで進んでいるが、苦労した点、国土強靭化へのインパクトは。

Direct To Cellでは、携帯電話が使っている周波数を活用することになるので、そこのグローバルでの整理に時間を要した。ただ、総務省も前向きで、ありがたいと思っている。年内にローンチできるよう最終調整しているが、すべての機種で一斉に対応するのではなく、順次という形になる。米国ではT-mobileがハリケーン被害の際にこれを活用して12万通以上のメッセージの送信を行い、社会的に効果があったと聞いている。

  • 決算発表のサマリー

    決算発表のサマリー