スマートフォンに様々なアタッチメントを取り付けて機能を拡大できる「合体式」とでも言えるモデルが定期的に市場に出てきています。HMD(HMD Global)の「Fusion」は様々な背面カバーで機能拡張できるスマートフォン。近日中に海外で発売される予定です。

  • HMDのFusion

背面カバーが交換できる、そしてアタッチメントが取り付けられるスマートフォンは、最近ではNothingから「CMF Phone 1」が出ています。本体にケースを付けずに使い、背面が汚れたり破損したりした場合は気軽に交換できるのです。機能性は無いものの、ファッション感覚で替えられる点は他のスマートフォンには無い特徴です。さらに背面隅のネジを使ってストラップやスタンドを装着することも可能です。

  • 背面カバー交換やアタッチメント装着可能なCMF Phone 1

HMDのFusionはCMF Phone 1よりも機能を持たせた「多機能カバー」のようなアタッチメントを用意しています。FusionはチップセットにクアルコムのSnapdragon 4 Gen 2を採用し、ディスプレイは6.56インチながら解像度は1,612×720ピクセルとミドルレンジのスペック。249ユーロ(約4万円)で発売予定であり、本体機能は抑えながらも普段使いできるスマートフォンを目指しています。

  • ミドルレンジスペックの安価なモデルだ

実はFusionは背面が交換できるだけではなく、本体の修理も自分でできる構造になっています。同社はすでに分解可能なスマートフォンとして「Skyline」などをヨーロッパで販売中。背面カバーを取り外してバッテリー交換ができるほか、基板やマザーボードモジュールも交換できるのです。ディスプレイが割れてもディスプレイだけを購入し自分で修理できるので、修理のたびにメーカーのサービスセンターへ行く必要もありません。Fusionも同様であり、自分で修理しながら長い期間使えるうえに、背面を着せ替えしたり、あるいは多機能カバーで機能性を高めることもできるのです。

  • 自己修理に対応するHMD Skyline

Fusionの背面カバーは工具を必要としない、はめ込みなので、手を使って外せます。カバーがない状態ではすぐにバッテリーを見られます。ただしバッテリーを外すにはネジを取り外す必要がありますが、これは誤って落下させてすぐにバッテリーが外れてしまわないようになっているからです。ネジは市販の精密ドライバーを使えますし、慣れていない人でも10分程度で外せるそうです。

  • 背面のカバーの無い状態

カバーは現時点ではあまり数が多くありませんが、最も有用なカバーはワイヤレス充電アンテナを内蔵した製品でしょう。iPhoneのMagSafeとも互換があるようで、おそらくワイヤレス充電の最新規格「Qi2」に対応していると思われます。ワイヤレス充電アンテナの無いカバーも用意されているので、より軽量な本体を求める人はそちらを装着するといいでしょう。

  • ワイヤレス充電カバーを装着してみた

また機能性のカバーはゲーミングパッドも提供されます。さらにHMDはFusionの背面カバーのサイズと電気接点の回路を公開しているので、3Dプリンターを使って自分好みのカバーを作れるのです。たとえば業務用にバーコードリーダーを搭載したカバーを作ることもできます。小規模な焦点など、Fusionに自作カバーを付けて在庫管理を行えば端末コストを抑えられというわけです。

  • 3Dプリンターカバーの試作品(左)とゲーミングパッド(右)

ゲーミングパッドは現在はHMDから販売される予定ですが、規格が公開されているのでゲーミングアクセサリを展開するメーカー、たとえばゲーミングPCのRazerなどがFusion向けのゲームパッドを出す、といった展開も期待できます。これらの背面カバーは電気的な接点で接続され、Bluetooth接続ではないため装着するだけですぐに使えますし、動作のラグもありません。

  • ゲーミングパッドを付ければゲーム機になる

合体式スマートフォンはモトローラが2016年に販売した「moto Z」が当時は大きな話題を呼びました。Fusionと同様にゲームパッドもありましたし、360度カメラやプリンターモジュールモデルなど合体式のアタッチメント「moto mods」は何種類も登場しました。とはいえスマートフォン本体が高価だったことに加えmoto modsを複数買いそろえるとかなりの金額になってしまいました。そのためmoto Z/moto modsは数年で市場から消えてしまいました。

  • 合体式スマホの先駆けでもあったmoto Zとmoto mods

Fusionはスマートフォン本体の価格を抑えつつ、背面カバーも奇をてらったような高機能や高価格のものは避け、必要な人は自分で3Dプリンターで作ってもらうことにすることで、全体のコストを下げたシステムになっています。2025年に話題のスマートフォンとなるのか、ちょっと注目したい製品です。

  • 新世代の合体式スマホ、どれだけ人気になるだろうか