「プロゲーマーになりたい」

そんな子どもの夢を、親はどのようにサポートできるのでしょうか。

2024年8月10日から12日まで開催された、高校生向けeスポーツ大会「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2024(STAGE:0 2024)」の全国大会グランドファイナル会場で、選手の親御さんに「どんなサポートを心掛けているか」を聞きました。筆者の主観も交え、健全な取り組み方を探ります。

  • 保護者のeスポーツ

    高校対抗eスポーツ大会で子どもたちの応援に来ていた選手の親御さんに意見を聞きました

「見守る」型のサポート

親御さんの意見で多かったのは(子どもの)「健康管理に徹する」「練習の邪魔をしない」でした。

フィジカルスポーツと異なり、eスポーツは疲労感を自覚しづらいので、長時間の練習になりがちです。休息を取るタイミングが難しいため、最低限の声がけとして、親御さんとしては適度な休憩を促すことになります。体調管理の観点では、バランスの取れた食事を提供することも大切でしょう。

<実際の意見>
・練習で夜遅くなることがある
・体調管理のために早く寝るように伝えている

「勉強とのバランスに気をつけている」という意見もありました。eスポーツの活動に時間を費やしすぎて、勉強がおろそかにならないよう、時間管理をしてあげるのも親の役割なのかもしれません。

<実際の意見>
・趣味の範囲で楽しむか、学業と両立してほしい
・失敗したときに逃げ道がなくなる

家庭内でルールを設定するのも手段の1つです。プレイ時間や利用に関する家庭内のルールを明確にし、守らせることも必要になってくるでしょう。

<実際の意見>
・子どもの邪魔をしないことを意識している
・妹たちの泣き声で息子の集中力を削いでしまわないよう気をつけている

ここで難しいのが「制約をかける」ことが「練習の邪魔」につながらないようにすること。子どもがeスポーツを練習しやすい環境を用意しつつ、監督者として最低限の声がけに留めておくのがいいのかもしれません。

「関与する」型のサポート

eスポーツに理解のある親御さんからは、積極的なサポートについて話を聞くことができました。子どもの夢をさらに後押しできるように、プロゲーマーになるための情報を集めて提供しているとのことです。

<実際の意見>
・プロチームやアカデミーの募集情報を集めて子どもに伝えている
・最初は親である自分が情報収集していたが、最近は子どもが自主的に情報を集めて、自分で応募するようになった

親御さんが積極的に関与するためには「eスポーツがどのような環境下で実施されているのか」を理解することも重要です。

チームプレイのeスポーツはもちろんのこと、1人プレイのeスポーツにおいても、その試合の前後では必ずといっていいほど、チームや仲間とのコミュニケーションが発生します。

<実際の意見>
・子どもがeスポーツを始めてから、外に出るようになった
・チームメイトとの関係が良く、誘われると積極的に出かけている
・学校でオフラインの練習もしているので、オンラインからリアルの関係に発展している

eスポーツの活動は集団行動が伴うので、ときには人間関係に関するアドバイスも必要になるでしょう。また、勝敗に一喜一憂することもあります。メンタル面でのサポートやストレス管理の方法を教えられるといいのかもしれません。

  • 保護者のeスポーツ

本当に親がすべきサポートとは

時代の変化により、“ゲーマー世代”が親になったことで「プロゲーマーを目指す」ことに理解を示さない親御さんは減ってきたように思えます。

その一方で、筆者が危惧しているのは、安直に背中を押してしまうケースも増えてくることです。

現在、プロゲーマーという職業には、明確なキャリアパスが存在しません。

プロゲーマーは「職業」ではなく「資格」のようなものである、というのが筆者の考えです。プロゲーマーになったからといって、自動的に稼げるわけではなく、ほとんどのプロゲーマーが「プロゲーマーになった」という箔を活かして、次の活動につなげているのが実態です。

そのため、プロゲーマーが「腕一本で生きていける仕事」ではないことを、親御さんは理解すべきでしょう。実際、プロゲーマーの多くは「大会の賞金」だけを収入源としているのではなく、グッズ販売やスポンサー料を収益元とする所属チームからの給与、および個人での配信活動、講師業などを収入源としています。

最近では、プロゲーマーの引退後は、ストリーマーに転向、ゲーム企業に就職する事例も増えてきましたが、いずれにしても「ゲームが上手いだけ」では成立しない職業です。ストリーマーであれば自らを商材としてプロデュースして集客していく能力、企業に就職するのであれば一般的な社会人としてのスキルが必要です。

将来的に「ゲームスキル+α」が必要になることを念頭に置くと、親御さんができるサポートや教えられることがたくさんあると、見えてくるのではないでしょうか。

「ゲームのことはよく分からないから静観するだけ」がサポートではありません。親御さんが持つ固有の経験やビジネス上のスキルを活かして、子どもの+αの部分に貢献することはできるのです。

  • 保護者のeスポーツ

eスポに対する「漠然とした不安」を払拭する

今回はeスポーツ大会の会場で取材したため、前向きな意見が多かったですが、それでも幾ばくか不安視する声もありました。

<実際の意見>
・収入が安定しておらず、将来性に不安を感じる
・結果が全ての世界なので、自分で「どこまでやれるか」をしっかり考えてほしい

世間的には、このような(eスポーツという夢に対する)「漠然とした不安・懸念」はまだまだ多いでしょう。

ただ、漠然と不安を感じるのではなく、子どもが「プロゲーマーになるための障壁」「プロゲーマーになったあとの障壁」を理解しておくことで、先回りしてサポートができるはずです。

例えば、将来的にストリーマーとしての活躍を想定しているのであれば「配信環境を考える」、海外チームでの活躍を想定しているのであれば「語学力を身に付けさせる」など、直接的にはeスポーツと関係のないサポートも検討できます。

先述したとおり、プロゲーマーになることは、ゴールではなくスタートです。子どもにとって、親御さんのサポートは「プロゲーマーになる前」はもちろんのこと「プロゲーマーになった後」にこそ活きてくるのかもしれません。

  • 保護者のeスポーツ