Samsungの折りたたみ端末「Galaxy Z」シリーズの最新モデル「Galaxy Z Fold6」が登場しました。長年折りたたみスマートフォン市場をリードしてきたSamsungの最新モデルをさっそくチェックしていきましょう。
薄く、軽くなった「Z Fold6」
折りたたみスマートフォンは、Samsungが長年取り組んできたジャンルで、最近はスマートフォン各社が追随しているので選択肢が増えています。ただし、「日本に正式に投入されている」という意味では意外に選択肢は少なく、特に横開きの製品を提供しているのは現時点でSamsungとGoogleだけという状況です。
今回も「Galaxy Z」シリーズとしては、閉じた状態だとスマートフォン、開くとタブレットになる横開きタイプの折りたたみスマートフォンである「Galaxy Z Fold6」、閉じた状態だとコンパクトに持ち運べて、開くと大画面スマートフォンになる縦開きタイプの「Galaxy Z Flip6」の2モデルが登場しています。
Samsungでは、従来のスペックを強化したことに加え、AI性能を搭載した点をアピールしており、使い勝手の向上などが特徴となっています。
ハードウェア面では、わずかにコンパクトになってデザインが変わりました。
Galaxy Z Fold5 | Galaxy Z Fold6 | |
---|---|---|
本体サイズ(閉じた状態) | H154.9×W67.1×D13.4mm | H153.5×W68.1×D12.1mm |
本体サイズ(開いた状態) | H154.9×W129.9×D6.1mm | H153.5×W132.6×D5.6mm |
重さ | 253g | 239g |
画面サイズ(閉じた状態) | 6.2型(904×2,316) | 6.3型(968×2,376) |
画面サイズ(開いた状態) | 7.6型(2,176×1,812) | 7.6型(2,160×1,856) |
「Z Fold6」は「Z Fold5」に比べて薄く軽くなっており、持ち比べるとその違いをわずかですが感じることができます。ただし、初めて触れる人が目に見えて薄いと感じるほどではありませんし、例えばシャオミの横開き型折りたたみスマートフォン「Xiaomi MIX Fold 4」は、折りたたみ時の厚さが9.47mm、開いた時で4.59mmなので、「Z Fold6」ももうひとがんばりしてほしかったところです。
「Z Fold6」では、折りたたんだ時のカバーディスプレイのサイズが6.2型から6.3型に大型化しています。これはディスプレイの四隅の丸みが小さくなくなったためでしょうか。テキスト表示を比べてみると、横方向に1文字分、広くなっているようです。
「Z Fold」シリーズの場合、折りたたんだ状態の画面がスマートフォンとしてはかなり縦長なので、使いづらい面もあります。前述の「Xiaomi MIX Fold 4」は6.59型で21:9のディスプレイで、それよりさらに細長いディスプレイなので、特にテキスト入力時に横幅が足りないと感じます。
開いた時の画面サイズは変わっていません。カバーディスプレイと同様に、メインディスプレイも従来よりも四隅の丸みが小さくなったこともあって、縦方向がやや短く、横方向がやや長くなり、正方形に近づきました。ちなみに「Xiaomi MIX Fold 4」は7.98型で2,488×2,244のディスプレイなので、さらに大きく、正方形に近いディスプレイです。
折りたたんだ時の画面は細すぎるように感じますが、開いた時の正方形に近いディスプレイも、動画や画像、書籍の見開き表示などのコンテンツ視聴時に無駄が多くなるという欠点があります。どのあたりに正解があるのか難しいところです。
Z Fold5 | Z Fold6 | MIX Fold 4 | Pixel Fold | Pixel 9 Pro Fold | |
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メイン画面サイズ | 7.6型 | 7.6型 | 7.98型 | 7.6型 | 8.0型 |
解像度 | 1,812×2,176 | 1,856×2,160 | 2,244×2,488 | 2,208×1,840 | 2,070×2,152 |
アスペクト比 | 5:6 | 5:5.8 | 5:5.5 | 5:6 | 5:5.18 |
サブ画面サイズ | 6.2型 | 6.3型 | 6.59型 | 5.8型 | 6.3型 |
解像度 | 2,316×904 | 2,376×968 | 2,520×1,080 | 2,092×1,080 | 2,424×1,080 |
アスペクト比 | 23:9 | 22:9 | 21:9 | 17.4:9 | 20.2×9 |
SNSやWebサイトの閲覧であれば「Z Fold」を折りたたんだ細長い状態でもでも十分ですが、入力も含めた操作をするとなると、「Xiaomi MIX Fold 4」や「Pixel Fold」シリーズぐらいのサイズは欲しくなります。
そう考えると、「Xiaomi MIX Fold 4」がバランスのよいサイズ感とアスペクト比かもしれません。とはいえ、「Z Fold6」は従来モデルより薄く軽くなっているため、使い勝手はよくなっています。
AI機能を強化したハイエンド端末
性能面では、Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxyを搭載。メモリは12GB、ストレージは256GB~1TB。前モデルがSnapdragon 8 Gen 2だったので、順当にバージョンアップした形です。
パフォーマンス面では、従来通りハイエンド端末として十分な性能を発揮しています。通常の用途ではもはや過剰なほどの性能ですが、ゲーミング性能に加えて、今後はオンデバイスの生成AIが重視されることから、そこがハイエンドスマートフォンにとっては重要な指標となりそうです。
ベンチマーク | Galaxy Z Fold6 | Z Fold 5 | |
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3Dmark | Wild Life Extreme | 4,266 | 3,393 |
PCMark | Work 3.0 | 18,400 | 13,085 |
GeekBench | Single-Core | 1,784 | 1,407 |
Multi-Core | 5,774 | 4,776 | |
GPU(OpenCL) | 13,055 | 9,239 | |
GPU(Vulkan) | 10,602 | 8,981 | |
GFXBench | マンハッタン3.1 | 7,392 | 7,345 |
マンハッタン3.1オフスクリーン | 10,760 | 6,609 | |
Aztec Ruins OpenGL High Tier | 3,595 | 4,091 | |
Aztec Ruins Vulkan High Tier | 3,876 | 4,414 |
パフォーマンスの向上は順当な結果で、グラフィックス性能を示す3DmarkのWild Life Extremeテストは「Z Fold6」が4,266、PCMarkテストは18,400などといった結果でした。
これだけのパフォーマンスがあれば、重量級のゲームでも問題なく動作し、満足のいく性能を体感できそうです。
Galaxy AIでさらにスマートフォンを進化
「Galaxy S24」以降、SamsungはAI機能の「Galaxy AI」に力を入れています。オンデバイスだけでなくクラウドも活用したAI機能は豊富で、興味深い機能が多くなっています。Galaxy AIは、比較的多くのGalaxyスマートフォンに提供されることになっており、「Galaxy S24」や「Galaxy Z Fold5」などでもすでに利用できるようになっています。
Samsungのプレゼンテーションでは必ず登場する「かこって検索」は、Googleの機能でGalaxy独自というわけではないのでここでは紹介を割愛するとして、まず音声のテキスト化に関する機能をみていきましょう。
最初に紹介するのはレコーダーアプリで、録音した音声をテキスト化してくれるというもの。Pixelなどに搭載されるレコーダーアプリと違うところは、リアルタイムのテキスト化ができないところ。音声化の時間もそれなりにかかります。
精度自体は、「Google Pixel」のレコーダーには叶わないという印象ですが、文字起こし機能の導入当初よりはアップデートにより日本語の精度が向上しているようです。日本語でも発言者の区別ができる点はGalaxy AIの強み。また、翻訳機能が統合されているのも嬉しいところです。
要約機能の利便性も高く、単に文章を要約するのではなく、リスト化して分かりやすくまとめてくれます。ここにも生成AI機能が使われており、特に長時間の講演や会議をまとめるのに役立ちそうです。
さらに通訳機能も搭載されています。これは自分の話した内容を外国語にリアルタイムに翻訳し、相手の返答もリアルタイムに日本語に翻訳してくれるというもので、画面上のテキストと音声によって通訳をしてくれます。
この通訳機能は、特に折りたたみスマートフォンの「Z Fold6」と「Z Flip6」に最適な機能。端末を半ばまで折りたたんで、相手にサブディスプレイ、自分にメイン画面を向けておくと、認識、翻訳したテキストを相手と自分にそれぞれ表示した状態になります。
周辺の騒音/話し方/声の大きさなどさまざまな条件により、正確な通訳ができるとは限りません。このあたりは、確実に使えるというわけではないのですが、うまく機能するとかなり便利になります。海外旅行用に使い方を覚えていくと便利そうです。
通訳機能は、この「会話モード」に加えて「リスニングモード」も搭載しています。これは、講演のように一方的に話している人のスピーチをリアルタイムに通訳していくというもので、まさに同時通訳です。文章の切れ目がたまにおかしくなってしまって文意が伝わらなくなることがありましたが、少なくとも米国の政府要人クラスの英語の発音であればかなり正確に聞き取ってくれるようでした。
リスニングモードでは、同時に音声を記録することもできます。履歴としてテキストが残るだけでなく、録音した音声はレコーダーアプリに保存されるため、文字起こしも可能になります。
この通訳機能は音声通話でも利用できます。これは音声アプリだけでなく、LINE/Facebook Messenger/Instagramといったアプリでの音声通話でも動作します。この機能を使えば、現地の海外SIMを使って「海外で音声通話の通訳をしてもらう」という使い方ができそう。個人的には「Rakuten Link」もサポートしてくれたらもっと嬉しかったところです。
テキストに関する生成AI機能としては「チャットアシスト」を搭載。メッセージ、LINE、Instagram、+メッセージ、WhatsAppといったアプリやEメールの文面を生成してくれるというもので、「日曜のパーティーのお誘い」といった程度の短文で、長文のメッセージを作成してくれます。
機能としてはIMEのSamsungキーボードに搭載されたものと同じで、キーボードの左上のAIボタンを押して「文書の生成」を選び、メールやソーシャルメディアといった生成先を選択。さらに文書スタイルとしてプロフェッショナル/カジュアル/丁寧のいずれかを選ぶと、それに沿った文面を生成してくれます。
細かな設定を指定すると意に沿った文章が生成されますが、あまり細かく指定すると文面を素直に作成した方が早いので、簡単な文から生成された文章を追記/修正した方が便利そうです。
Web系のAI機能では、「ウェブアシスト」機能を搭載。「要約」と「翻訳」の2つの機能を搭載。ただし利用できるのは標準の「ブラウザ」アプリのみなので、Google Chromeなどの他のブラウザでは動作しません。
そしてとにかく便利に感じたのがPDFの翻訳機能です。例えばネットからダウンロードした外国語のPDFを「Samsung Notes」アプリで開き、AIボタンを押すと「要約」と「翻訳」が利用可能です。翻訳は、テキストだけでなく画像内の文字も含めて、レイアウトを保持したまま翻訳してくれます。
要約をするだけだと言語はそのままですが、翻訳した上で要約すれば日本語で内容をまとめてくれます。Webサイトとは異なりPDFの翻訳は面倒ですが、Galaxy AIを使えば簡単に翻訳できます。
手描きイラストからAI生成
この「Samsung Notes」アプリにもAI機能が搭載されています。「Samsung Notes」はSペンを使った手書き入力ができるNoteアプリ。テキスト/画像/手書きを組み合わせて自由なノートが作成できます。
「Samsung Notes」では生成AIを使った「スケッチアシスト」機能があり、手書きで書いたイラストを水彩画やイラストといったスタイルに合わせて画像を生成してくれます。この機能は手描きイラストをベースに作品を生み出すというより、元のイラストをベースに清書をするという感じです。そのため、ある程度の絵心がないときちんとした画像が生成されず、「自分の画力以上の画像は生成できない」と言えるかもしれません。
このスケッチアシストは「AIイラスト」として「Samsung Notes」上だけでなく、エッジパネルやSペンのエアコマンドなどからその場で作成することもできます。さらに画面上の写真やイラストなどに手書きで絵を描き加える機能も搭載。既存の写真などに生成AIでオブジェクトを追加したい時に有効です。
この機能はWebサイトの画像にも使えますし、自分で撮影した画像でも使えます。アルバムアプリでは、被写体を長押しで選択肢、削除して背景を埋める塗りつぶしの機能や、被写体を移動させる機能など、手軽に写真に対して生成AIを適用できます。
生成AIによって編集された画像は、「AIで生成されたコンテンツ」という透かしが画像に含まれます。画像に生成AIでの編集履歴などを埋め込むコンテンツ認証情報には対応しておらず、透かし以外にはAIが使われているかどうかは分からないので、SNSなどに投稿する場合、透かしは消さない方がいいでしょう。
「Samsung Notes」アプリは、手書きメモと同時に音声録音が可能で、最終的に録音した音声のテキスト化が可能。加えて、テキスト化した音声の指定位置を選択すると、同じタイミングで手書きしていたメモの場所に移動するという機能も搭載しています。文字起こししたテキストは要約も可能です。AIを使って見出しを付けて内容を箇条書きする「自動フォーマット」や翻訳も可能なので、英語の会議で日本語化してまとめることもできそうです。
Sペンの存在は、「Galaxy Z Fold」シリーズの優位点としては常に指摘しておきたいところ。本体に挿入できず、Sペン Proは別途ケーブル接続が必要なのでしょっちゅう充電を忘れてしまうという欠点はありますが、持っていてよかったと思う瞬間はたびたびあります。「Samsung Notes」のAIや音声テキスト化の機能が統合されたことで、さらに便利に使えそうです。
なお、Sペンの利用を除いて、これらのAI機能は全て「Galaxy Z Flip6」でも使えます。指で手書きをしてイラストをAI生成するといったことが可能です。
カメラの画質はトップクラス
カメラは、「Z Fold6」に関しては従来を踏襲。基本的には同等の性能でしょう。
Z Fold5 | Z Fold6 | |
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有効画素数 | 50.0MP+12.0MP+10.0MP | 50.0MP+12.0MP+10.0MP |
焦点距離(35mm判換算) | 13mm/23mm/69mm | 13mm/23mm/69mm |
F値 | F1.8/F2.2/F2.4 | F1.8/F2.2/F2.4 |
とはいえ、画質面ではトップクラスの描写です。仕上がりが明るくなりがちなので、個人的には少しマイナス補正をした方が好みですし、色のりは相変わらず派手ですが、明部からシャドウまで、HDRも駆使してバランスよく描写。レンズの写りも高い性能を発揮してくれます。
基本的に優れたカメラ性能とはいえ、アルゴリズムの改善などはあるものの、大きな進化はなさそうです。
生成AIのためのハイエンド端末
「Galaxy Z Fold6」は、Galaxy AI機能を中心とした機能向上を果たしています。AI機能としては「Z Fold6」独自というわけではなく、「Z Fold5」でも同様の機能は利用可能。そのため、「Z Fold6」単体だと買い替えをどうするかは悩ましいところです。
より角張って薄くなったデザインは使いやすくはなっています。「Z Fold3」や「Z Fold4」との比較だと、大きく変わっているので買い替えると大幅な変化を感じられそうです。
Galaxy AIに関しては既存モデルにも適用されるため、「Z Fold6」のみの新機能ではありません。ただ、Sペンを使った生成AIのイラストなどは、他のスマートフォンにはない機能で、初めての折りたたみとして新たな世界を体験できます。
録音音声の文字起こし・要約/通訳といった機能も便利で、今後、生成AIがスマートフォンの機能として大きく注目されることが予想されます。最新機種でなくてもローカルとクラウドを組み合わせることで、最新の生成AIを利用できる点はGalaxy AIの強みです。
ローカル限定にしてプライバシーを考慮しつつ、最新の機能を体験するには、やはり最新のハイパフォーマンス機種が有効なのは間違いありません。その意味では、「快適な生成AIの活用に向けてハイエンド端末を選ぶ」という選択が今後増えてくるのかもしれません。