現在出荷しているDellのCopilot+PCを一挙展示

2024年7月31日、DellはCopilot+ AI PC新製品説明会を行いました。製品そのものは5月に発表されていたものの、現物を報道機関に公開したのはおそらく初。現在登場しているCopilot+ AI PCはIntelやAMDのX86ではなく、QualcommのSnapdragon Xを使用したARMプロセッサを採用。

今回展示されたXPS 13/Inspiron 14 Plus/Latitude 7455もすべて本体にSnapdragonのステッカーが貼られていました。

  • 現在出荷中のDellのCopilot+PC。個人向け最上位のXPS 13が中央で、個人+小規模企業向けのInspiron 14 Plusが左。右が法人向けのInspiron 7000シリーズ。9月末までにさらに2製品を追加投入予定です

  • XPS 13。個人向け最上位という事で、SoCも最上位のSnapdragon X Eliteを搭載。3Kのtandem OLEDモデルはパソコンとして世界初採用

  • より一般的なInspiron 14 Plus(個人向け+小規模事業者向け)。こちらは一段下のSnapdragon X Plusを採用していますが、Snapdragon X Eliteモデルも追加されました。後日Inspiron 14も投入予定

  • エンタープライズ向けのLatitude 7455。メモリの選択範囲が広いのが魅力です。後日Latitude 5455も投入予定

説明会はまず個人向け製品をデルのコンシューマー&ビジネスプロダクトマーケティング統括本部 コンサルタント 松原大氏が紹介しました。

  • デル・テクノロジーズ株式会社 コンシューマー&ビジネスプロダクトマーケティング統括本部 コンサルタント 松原大氏

冒頭、マイナビニュースのPR記事「AIの驚くべき性能とは? 企業から個人まで、幅広いシーンで役立つ「Copilot+ PC」の凄さを担当者に聞いてみた」で実施したを引用。

「AI PCを知っていますか?」という問いに関して半数が知らないと回答しており、認知度に関してはまだまだ課題があることに加え、AI PCを購入すべきポイントとして価格を上げている方が38%と予算にあった性能を手に入れたいと捉えられていると分析していました。

  • AI PCにおける意識調査。まだAI PCの認知度が低いのが課題で導入もコスパ重視

そして製品を2つ紹介。XPS 13は個人向け製品の最上位に属する製品で、プロセッサも二段階のクロックブーストを持つSnapdragon Elite X1E-80-100を採用。12コアでDual Core Boost時最大4.0Ghzとなります。

製品の選択範囲が広いのも特徴で、ディスプレイはFHD+/QHD+とtandem OLEDの三種類を用意。tandem OLEDは有機ELパネルを二枚重ねた構造となっており、輝度に応じて明るさを分散させるため焼き付きが起こりにくいという特徴を持っています(ノートパソコンでの採用は世界初)。

XPSは高機能素材を採用しているのが特徴で、本機も当然アルミ削り出しボディとConfotableキーボードを採用。選択できるのはディスプレイだけでなく、日本でのオーダーでも英語版Windowsや英語版キーボードの選択ができるのも特徴です。

  • XPS 13の紹介。一般量販店は今月になってからの取り扱いで、説明会が遅くなったのはこのためとの事

より一般向けの製品となるInspiron 14 PlusはSnapdragon Plus X1P-64-100(10core 3.4Gz)を使用していますが、7月2日から上位グレードのSnapdragon Elite X1E-80-100も追加発売。9月下旬からはInspiron 14として下位グレードのSnapdragon Plus X1P-42-100(8core)を採用した製品のリリースを予定しています。

ディスプレイは400nittのQHD+を採用していますが、最大16GB RAM、1TB SSDまでしか提供しません。XPSよりもコスパ重視

  • Inspiron 14 Plusの説明。XPS 13よりもSoCのグレードを落としているものの、7月になって上位SoC製品を追加投入

法人向けのLatitudeに関してはクライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 コンサルタント 白木 智幸氏が説明。

  • デル・テクノロジーズ株式会社 クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 コンサルタント 白木智幸氏

AIのためのマシンとしてLatitude初のSnapdragon Xシリーズを搭載。企業系PCではインテルPCが非常に強いのですが、これに関しては「案件を含め、あらゆるセグメントからお声がけを頂戴している」とAIクライアントに対する期待の盛り上がりで説明していました。

Latitudeとしては比較的上位のグレードである7000シリーズゆえに、再生コバルトを50%使用したバッテリーや、梱包材にリサイクル素材を含む再生可能素材を100%使用し、気候変動への取り組みを反映した設計であるEPEAT Gold with Climate+も取得。

ストレージも32GB RAM/1TB SSDに対応しています。また中位グレードの5000シリーズに関してもLatitude 5455を9月下旬に販売予定との事。

  • Latitude 7455の紹介。性能だけでなくサステナブルを協調しているのはSDG's配慮

  • パッケージもすべてリサイクル可能とアピールしていました

  • 本日紹介のパソコンまとめ。まだ製品数が少ないもののコンシューマーからエンタープライズまでカバーする製品を投入

AI PCの盛り上げを行うマイクロソフトの取り組みを紹介

AIに対する期待が高まる中、ゲストとしてマイクロソフトの取り組みに関しては日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤 久氏が説明しました。

  • 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤久氏

マイクロソフトはCEOのサティア・ナデラ氏が「マイクロソフトのあらゆる製品に、製品を一変させるようなAI機能を搭載していく」とAIに向けたコミットを行っていることもあり、AIに対するエコシステムをどのように作っていくかに関してはMicrosoft Copilot、Copilot Stack、Copilot+PCの3つのプラットフォームで構築するといいます。

  • AIエコシステムに対して三つのプラットフォームで対応します

Microsoft Copilotはエンドユーザーが実際に利用できる環境で、例えばCopilot Microsoft 365ではLLMというAI基盤モデル、非構造化データも扱いやすくするためのMicrosoft Graph、社内利活用のためのMicrosoft 365 Apps、そしてEntra IDでセキュリティを確保と全方位で準備。

  • 利用環境に関してはAI基盤モデルに加え、非構造データを扱いやすくするグラフ化も提供。Entra IDでセキュリティとガバナンスにも対応

開発者向けには独自のCopilotを構築するためのCopilot Stackを提供。ベースとなるAzureも世界60を超えるリージョンに配置しており、AIの効率化に関しては一例として「ChatGPT4のスピードは6倍になり、コストは1/12に下げた」といいます。

LLMはベースとなる基盤モデルが重要になっていますが、MS独自のSLMも含めたモデルを多数提供しており、すでに5万をこえる企業が利用しているとアピール。開発もCopilot Studioで行えるようになっています。

  • 開発環境においてはCopilot Stackでクラウド・エッジを問わずに利用できる環境を提供

  • Copilot StudioはMicrosoftが提供するローコード開発プラットフォームで、独自のAIアシスタントやチャットボットを作成可能。様々な業務に活用できるように

  • RAGは最近注目の技術で、社内や他のデータをプロンプトに加えてLLMに入れる事でより業務に即した回答を得る技術です。以前だと業務に合わせたファインチューニングと言われていましたが、RAGではそれが不要かつ最新のデータも含められます

そしてクライアント環境はCopilot+PCで実現。40TOPS(Tera Operations Per Second)と膨大な演算が可能なNPUと16GB RAM、256GBのストレージとCopilotキーが条件となっています。

現在Copilot+PCが実現可能なのはSnapdragon Xシリーズだけですが、今年中にIntel/AMDも対応プロセッサを発表予定であり、これによっていままでクラウドでしか実現できなかったAI機能がクライアント機というエッジで実現できるようになります。

  • Copilot+PCの最低要素。最低要素ゆえに今後NPUの演算速度が上がることもありそう

現在、アナウンスされているマイクロソフトのAI機能はリコール、コクリエイター、ライブキャプション、スタジオエフェクト、イメージクリエイターとなります。

この中でもライブキャプションは音声の自動書き起こし&翻訳が行えるもので現在40言語に対応。現時点では日本語への翻訳が対応されていませんが、対応は時間の問題でしょう。

  • 現在Copilot+PCに提供予定の機能。スタジオエフェクトは(NPUが遅い)AI PCでも利用可能

今後はPhi-Silica(SLM)が搭載される予定のほか、今年末までにRAG、Vector Embeddings、Text Summarizationのライブラリが用意されるといいます。また、開発者向けに対してはPyTouch now NativeとWeb Nural Networkのプレビューが行われているとの事。

  • Copilot+PCに対して、Windows Copilot Runtimeを提供

  • LLMよりも規模の小さなSLM「Phi-Silica」を提供。LLMもパラメーター数が多いとGPUメモリを大量に必要となるので、Copilot+PC向けには小規模のほうが扱いやすいでしょう

  • RAG、Vector Embeddings、Text Summarizationも年末までに提供予定

  • 開発者向けにAIフレームワークも提供

Copilot+PCはまだ登場したばかりですが、NPUという省電力で強力なプロセッサがパソコンにも入ることで、来年にはさらにAI対応が加速しそうな状況です。

一方、Dellとしてはコスパや利用目的に応じてNPUのないパソコンや、Copilot+PCを満たさない(≒NPUが搭載されていても40TOP未満)パソコンもまだ開発、販売するようなので、PC選びの選択肢が増え「最適な一台」を選ぶのがさらに難しくなりそうです。

  • 本日の登壇者によるフォトセッション

  • 以下、デモ展示。スタジオエフェクト。これは視線が横を向いても画面上ではカメラ目線になるもので、すでにAI PCで利用可能で便利です

  • Image Creator。Edgeで動作するクラウド実行のものはすでに使えますが、これがローカルで作成可能に

  • ライブキャプションは最近ZoomやTeamsにも含まれており、すでに活用されている方も多いかもしれません