現在出荷しているDellのCopilot+PCを一挙展示
2024年7月31日、DellはCopilot+ AI PC新製品説明会を行いました。製品そのものは5月に発表されていたものの、現物を報道機関に公開したのはおそらく初。現在登場しているCopilot+ AI PCはIntelやAMDのX86ではなく、QualcommのSnapdragon Xを使用したARMプロセッサを採用。
今回展示されたXPS 13/Inspiron 14 Plus/Latitude 7455もすべて本体にSnapdragonのステッカーが貼られていました。
説明会はまず個人向け製品をデルのコンシューマー&ビジネスプロダクトマーケティング統括本部 コンサルタント 松原大氏が紹介しました。
冒頭、マイナビニュースのPR記事「AIの驚くべき性能とは? 企業から個人まで、幅広いシーンで役立つ「Copilot+ PC」の凄さを担当者に聞いてみた」で実施したを引用。
「AI PCを知っていますか?」という問いに関して半数が知らないと回答しており、認知度に関してはまだまだ課題があることに加え、AI PCを購入すべきポイントとして価格を上げている方が38%と予算にあった性能を手に入れたいと捉えられていると分析していました。
そして製品を2つ紹介。XPS 13は個人向け製品の最上位に属する製品で、プロセッサも二段階のクロックブーストを持つSnapdragon Elite X1E-80-100を採用。12コアでDual Core Boost時最大4.0Ghzとなります。
製品の選択範囲が広いのも特徴で、ディスプレイはFHD+/QHD+とtandem OLEDの三種類を用意。tandem OLEDは有機ELパネルを二枚重ねた構造となっており、輝度に応じて明るさを分散させるため焼き付きが起こりにくいという特徴を持っています(ノートパソコンでの採用は世界初)。
XPSは高機能素材を採用しているのが特徴で、本機も当然アルミ削り出しボディとConfotableキーボードを採用。選択できるのはディスプレイだけでなく、日本でのオーダーでも英語版Windowsや英語版キーボードの選択ができるのも特徴です。
より一般向けの製品となるInspiron 14 PlusはSnapdragon Plus X1P-64-100(10core 3.4Gz)を使用していますが、7月2日から上位グレードのSnapdragon Elite X1E-80-100も追加発売。9月下旬からはInspiron 14として下位グレードのSnapdragon Plus X1P-42-100(8core)を採用した製品のリリースを予定しています。
ディスプレイは400nittのQHD+を採用していますが、最大16GB RAM、1TB SSDまでしか提供しません。XPSよりもコスパ重視
法人向けのLatitudeに関してはクライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 コンサルタント 白木 智幸氏が説明。
AIのためのマシンとしてLatitude初のSnapdragon Xシリーズを搭載。企業系PCではインテルPCが非常に強いのですが、これに関しては「案件を含め、あらゆるセグメントからお声がけを頂戴している」とAIクライアントに対する期待の盛り上がりで説明していました。
Latitudeとしては比較的上位のグレードである7000シリーズゆえに、再生コバルトを50%使用したバッテリーや、梱包材にリサイクル素材を含む再生可能素材を100%使用し、気候変動への取り組みを反映した設計であるEPEAT Gold with Climate+も取得。
ストレージも32GB RAM/1TB SSDに対応しています。また中位グレードの5000シリーズに関してもLatitude 5455を9月下旬に販売予定との事。
AI PCの盛り上げを行うマイクロソフトの取り組みを紹介
AIに対する期待が高まる中、ゲストとしてマイクロソフトの取り組みに関しては日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤 久氏が説明しました。
マイクロソフトはCEOのサティア・ナデラ氏が「マイクロソフトのあらゆる製品に、製品を一変させるようなAI機能を搭載していく」とAIに向けたコミットを行っていることもあり、AIに対するエコシステムをどのように作っていくかに関してはMicrosoft Copilot、Copilot Stack、Copilot+PCの3つのプラットフォームで構築するといいます。
Microsoft Copilotはエンドユーザーが実際に利用できる環境で、例えばCopilot Microsoft 365ではLLMというAI基盤モデル、非構造化データも扱いやすくするためのMicrosoft Graph、社内利活用のためのMicrosoft 365 Apps、そしてEntra IDでセキュリティを確保と全方位で準備。
開発者向けには独自のCopilotを構築するためのCopilot Stackを提供。ベースとなるAzureも世界60を超えるリージョンに配置しており、AIの効率化に関しては一例として「ChatGPT4のスピードは6倍になり、コストは1/12に下げた」といいます。
LLMはベースとなる基盤モデルが重要になっていますが、MS独自のSLMも含めたモデルを多数提供しており、すでに5万をこえる企業が利用しているとアピール。開発もCopilot Studioで行えるようになっています。
そしてクライアント環境はCopilot+PCで実現。40TOPS(Tera Operations Per Second)と膨大な演算が可能なNPUと16GB RAM、256GBのストレージとCopilotキーが条件となっています。
現在Copilot+PCが実現可能なのはSnapdragon Xシリーズだけですが、今年中にIntel/AMDも対応プロセッサを発表予定であり、これによっていままでクラウドでしか実現できなかったAI機能がクライアント機というエッジで実現できるようになります。
現在、アナウンスされているマイクロソフトのAI機能はリコール、コクリエイター、ライブキャプション、スタジオエフェクト、イメージクリエイターとなります。
この中でもライブキャプションは音声の自動書き起こし&翻訳が行えるもので現在40言語に対応。現時点では日本語への翻訳が対応されていませんが、対応は時間の問題でしょう。
今後はPhi-Silica(SLM)が搭載される予定のほか、今年末までにRAG、Vector Embeddings、Text Summarizationのライブラリが用意されるといいます。また、開発者向けに対してはPyTouch now NativeとWeb Nural Networkのプレビューが行われているとの事。
Copilot+PCはまだ登場したばかりですが、NPUという省電力で強力なプロセッサがパソコンにも入ることで、来年にはさらにAI対応が加速しそうな状況です。
一方、Dellとしてはコスパや利用目的に応じてNPUのないパソコンや、Copilot+PCを満たさない(≒NPUが搭載されていても40TOP未満)パソコンもまだ開発、販売するようなので、PC選びの選択肢が増え「最適な一台」を選ぶのがさらに難しくなりそうです。