ゲーミングキーボード界隈で「Snap Tap」(スナップタップ)機能を巡る議論が加熱している。

スナップタップは、7月9日にRazerが「Huntsman V3 Pro」キーボードのゲーミング用新機能として発表したものだ。Counter-Strike 2やOverwatch 2のようなゲームで、流動的で応答性に優れた操作を可能にする。これが「過度なアシストではないか」という議論を巻き起こし、一方でその効果を歓迎するゲーマーも多く、否定的な立場をとっていたWootingも同様の機能の導入に踏み切った。

この議論は、今年3月にWootingが新たなキースイッチ機能「Rappy Snappy(ラッピースナッピー)」を発表したことに遡る。キーボードで反対方向に移動するキー入力が同時に検出(SOCD:Simultaneous Opposing Cardinal Directions)された場合、一般的には互いに入力がキャンセルされ、FPSのようなゲームではどちかのキーを離すまで硬直が起こる。

ラッピースナッピーは、選択した2つ以上のキーをモニターしながら押下げを比べ、より深く押されているキーをアクティブにしてオーバーラップを回避し、スムーズなキー切り替えを可能にする。

このラッピースナッピー(7月16日にベータ版に到達)が正式リリースになる前に、Razerがスナップタップを投入した。これは反対方向のキー入力が検出された場合に、最後の入力を優先的に登録する。2つのキーが押された状態から前のキーを離さなくても瞬時に方向を変えられるようになる。

ゲームによっては、SOCD時にどちらかの方向が優先されたり(ナチュラル)、入力方向を溜め状態とする(チャージ)など、ふるまいが設定されている場合がある。ラッピースナッピーやスナップタップは過度なアシストではないかという議論において、Wootingは、SOCDにおける重複を避けるという点では同じでも、押下げに基づいたラッピースナッピーと、最後のキーを優先するスナップタップでは、効果のターゲットとなっているゲームに与える影響の性質が異なると指摘。「SOCDはデバイスではなくゲームによって管理されるべきであり、それによって誰もが公平な土俵に立つことができると考えている」と述べていた。

ところが、7月23日にWootingが「SOCD」(仮称)というスナップタップと同様の機能のベータ提供を開始した。これはWootingがXで行った「スナップタップのように最後の入力を優先するSOCDを導入すべきか?」という投票で、「Yes」が70%と圧倒的だったためである。ユーザーの要望に応えることにした。

SOCDは、反対方向の同時入力が検出された時の出力として、最後の入力優先、選択した1つの方向を常に優先、ニュートラル(入力しない)の3つから選べるなど、より柔軟なソリューションになっている。

しかし、WootingはSOCDのベータ提供を「Wooting's SOCD is basically cheating(WootingのSOCDは基本的にチート)」というタイトルのYouTube動画で発表し、「(沸き起こった要望に対して)我々に選択の余地はなかった!」としている。問題のあるアプローチという考えに変わりはなく、スナップタップ機能をめぐる論争は今後も続きそうである。