シャオミの「POCO F6 Pro」は、ハイエンドモデルに迫る性能を備えつつ7万円を切る価格で、注目を集めているスマートフォン。「POCO」はオンライン販売のみで展開されている、シャオミのサブブランドで、日本では約2年ぶりの新製品です。

グローバルではエントリーやミドルレンジなど幅広いラインナップを展開していて、Fシリーズはその中でも最上位のモデル。シャオミによれば、性能に対するコストパフォーマンスの高さから、「フラッグシップキラー」というキャッチフレーズもあるそうです。実際のところはどうなのか、チェックしました。

  • POCO F6 Pro

    6.67インチの大画面かつ狹額縁。周囲には高見えするメタルフレームが採用されています

約2年前に発売された「POCO F4 GT」は、ゲーム用の操作ボタンを搭載するなど、まさにゲーミングスマホといった製品でしたが、「POCO F6 Pro」は落ち着いたデザインで、ゲームファンのみならず、より広いターゲットに向けたスマホという印象を受けます。

ディスプレイは約6.67インチ。WQHD+(3,200×1,440ドット)の有機ELを採用し、120Hzまでのリフレッシュレートをサポートしています。サイズはH160.86×W74.95×D8.41mm、重さは209g。画面サイズ相応に大きく重さもそこそこありますが、周囲のベゼルが狭いので、実際に手にしてみると意外にもコンパクトに感じられます。

  • 背面

    背面にはガラス素材を使用。月面をイメージしたという独特の模様がデザインされています

  • ホワイトとブラックの2色

    カラーはホワイトとブラックの2色で、ブラックはカメラリングがゴールドなど、ややデコラティブな印象です

  • 太陽光下のディスプレイ

    ピーク輝度は4,000nitで、強光環境での最大輝度であるHBM輝度も1,200nit。ピーカンの太陽光下でも文字を読み取れた

月面をイメージしたという背面の模様は好みの分かれるところかもしれませんが、指紋が付かないしっとりすべすべの質感に加えて、ガラスの縁がラウンド状になっていて握りやすいなど、触り心地/持ち心地は良好です。背面にはカメラが4つあるように見えますが、ひとつはLEDライト。カメラの周囲が四角いガラスパネルで、一段高くデザインされているのも本機の特徴になっています。

  • 右側面

    「POCO F4 GT」のようなゲーム用のボタンはなく、物理キーは右サイドに電源ボタンと音量キーのみ

  • SIMカードスロット

    上下にはDolby Atmos対応のステレオスピーカーを搭載。SIMカードスロットは表裏に2枚挿せるようになっている

  • 同梱品一式

    ポリカーボネート製のケースのほか、120Wの急速充電が可能な専用ACアダプターとUSB Type-Cケーブルが付属

  • 専用ケースを装着した状態

    付属の専用ケースを装着すると、背面カメラ周りの四角い部分がまるっと露出するようになっている

SoCは、昨年の各社のフラッグシップモデルで採用されていた、クアルコムの「Snapdragon 8 Gen 2」。AI処理性能に優れたSoCです。メモリーは12GBで、ストレージは256GBと512GBから選択可能。さらにストレージの一部を仮想メモリーとして使用できる機能も備わっています。

OSはAndroid14ベースのXiaomi HyperOS。大画面を活かしたマルチタスク機能が充実していて、処理性能の高いSoCのおかげで、複数のアプリを重ねて表示できるフローティングウィンドウもサクサク動作します。またゲームプレイ時には、パフォーマンスを向上する「ゲームターボ」も利用できます。

  • 仮想メモリーの割り当て
  • フローティングウィンドウのマルチタスク
  • 初期設定では4GBが仮想メモリーとして割り当てられている(左)。複数のアプリを同時に表示してのマルチタスクもストレスなく動作(右)

  • 指紋認証を利用

    生体認証は画面内に指紋認証と顔認証をサポート。指紋認証用のセンサーで心拍数が測れる機能も備わっている

各ベンチマークテストの結果は以下の通り。なお、3D Markの「Wild Life」テストでは、スマホの性能に対して負荷が足りなかったのか「Maxed Out」となったため、「Wild Life Extreme」をテストしました。

  • 3DMark Wild Life
  • 3DMark Wild Life Extreme
  • 「3DMark Wild Life」(左)と「3DMark Wild Life Extreme」(右)

  • Geekbench 6 CPU Benchmark
  • PCMark for Android Work 3.0
  • 「Geekbench 6 CPU Benchmark」(左)と「PCMark for Android Work 3.0」(右)

こうしたテストの結果からも、「Snapdragon 8 Gen 2」が約1年の型落ちとはいえ、まだまだトップランナーだとわかります。マルチタスクやゲームにもストレスのないスペックを備え、それでいて価格は256GBモデルが69,980円、512GBモデルが79,980円。「フラッグシップキラー」にも納得といった感じです。

  • 背面のカメラ部周辺

    背面カメラ周囲のパネル部分には「POCO」のロゴと、光学手ぶれ補正搭載であることを示す「50MP OIS」の文字がプリントされています。

では一体どこでコストダウンをしているのかというと、ひとつにはカメラということになるでしょう。本機のカメラは、メインカメラが約5,000万画素で、約800万画素の広角カメラ、約200万画素のマクロカメラという構成。たとえば「Xiaomi 14 Ultra」のような、光学式の望遠カメラなどは搭載されていません。

一方で、メインカメラに採用されているセンサーは1/1.55インチと大型で、F値は1.6をサポート。光学式手ブレ補正も備えていて、夜景なども明るくきれいに撮影できます。広角0.6倍/等倍/2倍をワンタップで切り替えることができ、最大10倍まで拡大可能。8K@24fps/4K@60fpsの動画撮影のほか、動きのあるシーンで便利な高速連写にも対応しています。なお、フロントカメラは約1,600万画素です。

以下は実際に「POCO F6 Pro」で撮影した写真です。

  • 夜景写真は明るいが、白飛びがなくノイズも少ない。シャープに撮影できる印象だ

  • 料理なども、「AIカメラ」をオンにすれば、シーンに応じた設定で撮影

  • カメラ機能はシンプルで、シャッターを切るだけのスナップ撮影がはかどる

  • 設定でマクロをオンにすると、数センチの距離まで近づいて撮影できる

  • 5,000万画素撮影

    約5,000万画素の高解像度撮影も可能。高精細な写真が撮影できる

ズーム倍率の比較

  • 0.6倍

    広角0.6倍は800万画素の広角カメラを使用

  • 等倍

    標準等倍は細部までジャープな印象

  • 2倍

    2倍デジタルズームもシャープさは変わらない

  • 10倍デジタルズーム

    最大10倍まで拡大可能だが、さすがに粗くなる

フラッグシップモデル同様に、AI性能に優れたSoCを活かす、様々な画像処理機能も利用できます。たとえば映り込んだ人などを自動でマーキングして削除すると同時に、背景を生成する「消しゴム」。背景を切り取るトリミングの逆で、背景の足りない部分を生成して拡大する「AI拡大」、AIを用いて晴天の空を作成できる機能などもあります。

  • 「消しゴム」適用前
  • 「消しゴム」適用後
  • 「消しゴム」機能。最初からそこに居なかったかのように、人などを消すことができる

このほかバッテリーは5,000mAhで、120Wの急速充電にも対応しています。ブースト設定をオンにした場合、最短19分でフル充電が可能とのこと。実際に同梱のACアダプターを使用して充電してみましたが、ブースト設定がオフの状態でも、20%を切っていたバッテリーが約10分で55%まで充電され、30分足らずで満充電となりました。朝起きて充電忘れに気づいても、支度をしている間にリカバリーできる速さです。

  • 充電のようす

    付属の120WACアダプターを使用すると、あっという間に充電されていく

一方で少し気になったのが、バッテリー持ちです。本機のディスプレイの解像度はWQHD+ですが、初期設定ではFHD+に設定されています。そのままFHD+で使用していたときは、短時間の動画を見たりゲームをしたり写真を撮ったりしても2日くらいは使えたのですが、これをWQHD+にして使用すると、当り前ですがFHD+のときと比べて、明らかにバッテリーの減りが早くなります。

もちろん使い方にもよるのですが、WQHD+だと毎日充電した方が安心かなという感じ。長時間のゲームプレイやカメラを長く起動していたときの端末の体感温度も、WQHD+の方が少し高くなりやすいように感じました。急速充電ができるからそれでよいという考え方もありますが、ディスプレイのポテンシャルをフルに活かしたい場合は、少しバッテリー残量を意識する必要があるかもしれません。

  • ディスプレイ解像度の設定

    ディスプレイの初期設定はバッテリー節約のためにFHD+になっている

「POCO F6 Pro」は高い処理性能と余裕のあるメモリー、120Wの急速充電などを備え、そのコスパを考えれば、確かに「フラッグシップキラー」になり得るスマートフォンです。高精細な動画の視聴やゲームプレイ、写真や動画撮影をストレスなく楽しめるのに加え、AIを用いた画像編集や音声の自動文字起こし、翻訳機能なども利用できます。ネットワークもドコモのn79には非対応ですが、Wi-Fiは最新のWi-Fi 7をサポートしています。一方で、防水やおサイフケータイ、eSIMやワイヤレス充電には非対応など、価格を抑えるために省かれている機能もあります。このあたりを納得の上で選ぶなら、かなりお買い得なスマホなのは間違いありません。