平年より2週間遅く関東の梅雨入りが発表されました。一方で沖縄や奄美諸島では例年より少し早めの梅雨明けとなったほか、関東でも夏のきざしを感じる暑い日が出てきています。日本気象協会によると今年の夏も多くの地域で「厳重警戒」ランクの暑さを迎えるとのこと。
そんな中パナソニックは6月中旬、ルームエアコン「エオリア」の活用法を説明する熱中症対策セミナーを開催。ウェザーマップ 気象予報士/防災士の増田雅昭氏が2024年の夏予想や熱中症対策を紹介したほか、パナソニックで“エアーマイスター”の称号を持つ福田風子氏がエオリアの特徴とエアコンの省エネ法を語りました。
2024年は猛暑の予想! エアコンは夏の生命維持装置
増田氏によると、2024年の夏も厳しい暑さが見込まれる、いわゆる「猛暑」の恐れがあると予想されているそう。気象庁の予想では2024年6月から7月の均気温は関東以南で平年より高く、8月は全国的に平均気温より高くなる見込みといいます(気象庁「向こう3か月の天候の見通し」)。
しかしこの夏、日本だけが暑くなるわけではなく、世界的にも夏季の気温は上がる予想だといいます。気象庁による各国気象機関の地上気温予測では、アメリカ/イギリス/ドイツ/フランス/ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)でも、平年より高いことが予想されています。
猛暑の夏で怖いものの1つが熱中症ですが、熱中症の症状で救急搬送される人のうち最も多いのが自宅など屋内での発症。また、そのうち半数以上が高齢者だといいます(消防庁「熱中症による救急搬送状況の概要」)。
増田氏は、屋内では室温や湿度が高くなりがちなこと、また乳幼児は汗をかく能力が低く、高齢者は温度に対する感覚が弱くなることに触れつつ、若い人でも体調不良や睡眠不足の時は感覚が鈍りやすいため熱中症リスクが高まりやすいとしました。
一方で熱中症は、適切な対策を取れば防げるものでもあります。増田氏は例えば体を暑さに慣れさせたり、水分/塩分補給をしたり、しっかり睡眠を取ったりする体調管理に加え、室内の温度や湿度を(体感ではなく)数字で確認すること、我慢せずエアコンを使うことも大事だとし、「今の日本の夏では、エアコンは生命維持装置」と強調しました。
パナソニックのエアーマイスターが考えるエアコン選びのコツ
そんな猛暑の最重要アイテムとなるエアコンですが、エアコンがどうやって部屋を冷やしているのか、その仕組みは意外と知られていないかもしれません。
エアコンが部屋を冷やせる理由は、パイプでつながった室内機と室外機が、パイプ内の冷媒ガスを通じて室内の熱を室外へ排出するため。パナソニック エアーマイスター 兼 熱中症予防指導員の福田風子氏によると、エアコンの能力は冷房なら“熱を奪う能力”、暖房なら“熱を供給する能力”をkWという単位で示し、それをエアコンが冷やせる畳数のめやすとして表現しているといいます。
この畳数のめやす、実は建物の気密性によって変わります。例えばエアコンの畳数のめやすが6~9畳となっている場合、「6畳から9畳までの部屋」ではなく、木造平屋南向き和室の6畳、もしくは、鉄筋マンション南向き中間層洋室の9畳向けを意味しているといいます。
木造住宅は鉄筋住宅よりも気密性が低いぶん、冷暖房効率も下がるため、同じ畳数でも必要となる冷暖房能力が異なります。また、鉄筋マンションでも1階と最上階では必要な冷暖房能力は異なり、断熱性や窓の向き、大きさ、天井の高さ(吹き抜けかどうかなど)によっても必要なエアコンの能力は変わるとのこと。
部屋に必要な冷暖房能力より低い能力のエアコンを選んでしまうと、そのエアコンは常にフルパワーで稼働することになるため、電気代が余分にかかってしまうといいます。例えば高天井(2700mm)や西向き窓、入サッシ、最上階では、実際の畳数から1~2ランクアップさせた畳数に対応したエアコンを選ぶことが大切だとしました。
高騰する電気代が心配。電気代を節約できる運転方法は?
夏には遠慮なくエアコンを使いたいけれど、使う上でまず気になるのは電気代。おりしも、電気料金の値引き措置(電気・ガス料金激変緩和対策事業)が2024年5月使用分で期限を迎え、2024年6月/7月の電気代値上げは確定されています。(※6月29日現在、経済産業省から8月~10月の電気ガス料金負担軽減策が発表されています)
パナソニックの試算によると、月額2,236円の値上げに、電力会社各社の値上げ分が加わり、4人家族では月15,000円以上にものぼる可能性があるといいます。
エアコンはなるべく節電して動かしたいところ。パナソニック エアーマイスター 兼 熱中症予防指導員の福田風子氏に、エアコンの節電方法を聞きました。節電につながるエアコンの効率的な使い方としては、大きく3つのポイントがあるといいます。
低消費電力でエアコンを動かす方法の1つは設定温度。室内の温度と、室外の温度の差が大きいほど、電気消費量が大きくなってしまうので、設定温度を上げることが節電につながります。夏場の冷房では一般的に、設定温度を1度上げることで約13%の省エネにつながるとのこと。
当然ながら設定温度を上げると部屋が暑くなります。ここでのポイントが「気流」。例えば温度は上げず風量を上げることで、体感温度を下げられるといいます。なのでエアコンの温度設定を1度上げたうえで風量をアップさせ、自分の方向へ風が向くようルーバーを設定すると、節電につながるとのこと。エアコンと同時に扇風機やサーキュレーターを併用することもよさそうです。
もう1つはポイントはフィルターのお掃除。フィルターが目詰まりしていると、それだけで冷房の効きが悪くなる上に、消費電力量がアップしてしまうため、本格稼働前には1度掃除をしておきたいところです。
効率的な運用という観点では、室外機の放熱も重要で、室外機を囲ってしまったり、日除けを室外機に直接立てかけてしまったりというケースを見かけますが、室外機から出る熱を塞いでしまうと熱交換の効率が悪くなり、消費電力にも影響してしまうとのこと。
室外機の周りは空間を空けて「何も置かない」が基本。日陰にすること自体は適切ですが、ゴミや植木鉢などを置いて風が通りにくい状態にしてしまうことは避け、日陰を作る際も直接室外機に日除けを載せるのではなく、1mほど離れた場所で日除けを作る方が効果的だとしました。
このほか筆者が気になっていたエアコンの節電方法が、「つけっぱなし」か「こまめに消す」か。福田氏によるとこれはケースバイケースとなるものの、めやすとして、例えば1時間以上部屋を空ける場合は、エアコンを切る方が節電につながるといい、30分以内の外出では点けっぱなしにした方が節電的にはいいとのことでした。