グループウェア&ノーコードツール導入は「小さく始めて大きく育てる」

一方、大阪市に本社に置く加工製品商社のISSリアライズは、それまで利用していたNotesがサポート終了を迎えたことから、2021年にグループウェアを刷新。サイボウズのGaroon(ガルーン)の導入に踏み切った。

Notesは主に社内ポータル、掲示板、会議室予約、メールサーバの機能を使っていた。新たなグループウェアの選定ポイントは、ユーザーである一般社員が扱いやすいこと、情報技術グループがシステム設定等を変更できることの2つだった。

「業務改善を進める上で、他システムとの連携や併用という環境は非常にメリットが大きかったと思います。ビジネスの変化に対応するという意味では、トレンドに合わせた自動的な機能更新は当時のNotesにはなかったこともあり、魅力的に感じました」と、総務部 情報技術グループ 西脇一憲氏はGaroonの選択理由を語った。

  • ISSリアライズ 総務部 情報技術グループ 西脇一憲氏

    ISSリアライズ 総務部 情報技術グループ 西脇一憲氏

Notesでは1,500程度のデータベースを利用していたが、利用していないものを削除するなどして、Garoon移行したデータベースは33ほどだったという。Garoonのメニューも必要最低限のものだけを表示するなど、運用初期は小さく始めることを心掛けた。

  • メニューも必要最低限のものだけを表示(出典:ISSリアライズ)

    メニューも必要最低限のものだけを表示(出典:ISSリアライズ)

「あくまで移行に徹して、『新しい機能があるから使ってみよう』というチャレンジはせず、スモールスタートで導入しました」と、西脇氏はGaroonを定着させたポイントの一つとしてスモールスタートを挙げた。

地道な改善事例の積み上げで進んだ活用

Garoon導入自体は、社員からの問い合わせもほとんどなく順調だったが、さらに利用を発展させていきたいと考えたときに、ちょっとした模索もあったという。

過去に情報技術グループでは、他部門からの要望を断ってきた歴史があり、社員に「どうせ、言っても無駄だろう」思われ、改善要求が上がってこなかったという。

そこで、西脇氏は積極的に情報収集に努め、ある部署がこういうことをやりたがっているという噂を聞くと、自分から足を運んで少しずつ改善の事例を積み上げていった。すると、その事例を見た人たちから、「あんな風にしたい」「こういうことができないか」という要望が寄せられるようになり、次第に活用が進んでいったという。

  • 社員のニーズを知るため、積極的に接触。徐々に事例や要望を増やしていった

    社員のニーズを知るため、積極的に接触。徐々に事例や要望を増やしていった(出典:ISSリアライズ)

同社はGaroonのほかにkintoneも利用しているが、両者の使い分けについて、西脇氏は次のように語った。

「Garoon、kintoneはツールであり手段であるため、目的に合わせて選択しています。業務を改善したい場合、RPA、マクロ、kintoneと、さまざまな選択肢があっていいと思います。あえて、どれかに寄せる必要はないでしょう。本質的な課題がない限り、無理に統合しないというインスタンスで考えています。グループウェアに寄せることが、現場にとって最適かどうかはわかりませんから、必要であれば結果として1つの製品に寄せていくといった考え方をしています」(西脇氏)

Garoonは情報技術メンバーが触ることも多いが、kintoneはユーザーがアプリケーションを作るケースが多いという。

最後に、西脇氏はシステム導入の効果を次のように述べ、講演を終えた。

「ユーザー視点でいくと、情報共有や変化のスピードが大きく進化したと思います。また、いろいろな部門の人からアイデアが持ち込まれるようになったことで、変化のスピードが加速するようになりました」(西脇氏)

  • ,Garoon、kintoneの導入効果

    Garoon、kintoneの導入効果(出典:ISSリアライズ)