Appleは2024年5月22日、日本国内向けにApple Watchで利用できる「心房細動履歴」機能の提供を開始した。これは心房細動と診断された22歳以上の人を対象に、心房細動の兆候を示した推定時間を追跡する機能。ユーザーは1週間ごとに通知で詳細を見られるほか、その他の生活習慣要因を加えた詳細なレポートをダウンロードすれば、医師の指導に基づく治療に役立てることができる。

  • 欧米では2022年に提供が開始されていた「心房細動履歴」機能。日本国内でも認可を受け、提供が開始された

心房細動とは

心房細動は、心臓を動かす電気信号の乱れによって心房が痙攣し、正常に働かなくなる心臓の病気。動悸や倦怠感、めまい、息苦しさといった症状が出る場合もあるが、自覚症状のない場合も少なくない。

すぐに命にかかわるものではないが、放置すると慢性化し、心不全につながる恐れがある。また、心房細動の頻発により心房内で血栓が形成され、脳梗塞を発症するリスクが高くなる。

  • iPhoneの「ヘルスケア」アプリ内で、心房細動の危険性や治療に関して学べる情報が提供されている

自覚症状がない場合は健康診断の心電図検査で見つかることがある。また、Apple Watchの「不規則な心拍の通知」機能をきっかけに受診し、診断を受ける人も増えている。

「心房細動履歴」機能の使い方

「心房細動履歴」機能は、医師に心房細動と診断された22歳以上の人を対象に提供される機能で、その他の人の使用は想定されていない。「心房細動履歴」の使用を開始すると、Apple Watchは光学心拍センサーで適宜計測を行い、心房細動の兆候を示した時間の推定値を記録する。

常時計測しているわけではないため「推定値」として示されるが、臨床試験の結果によると、身体に貼り付けて常時計測するECGパッチを使った実測値と比較した場合の平均差は1%未満と報告されている。

データはiPhoneの「ヘルスケア」アプリで確認できる。また、睡眠時間や運動、飲酒などの生活習慣要因の履歴と併せて確認することも可能だ。さらに、これらの情報が記載されたレポートをPDFで書き出せ、医療機関側がより正確な評価を行うことにも役立てられる。

杏林大学医学部循環器内科学教室診療科長である副島京子医師は、この機能について「Apple Watchで得られる健康データは、患者の健康全般に関して医師が指導する上ですでに役立っています。心房細動履歴によって、Apple Watchを使ってユーザーの心房細動負荷を評価できるようになり、医師はリズム治療の効果を評価するための手助けとしてさらに活用できます。患者もまた、運動時間や睡眠時間、アルコール摂取量などの情報によって、自身の健康状態について理解を深めることができ、健康維持に活用できます」と述べている。

「心房細動履歴」機能は、Apple Watch Series 4以降/Apple Watch Ultra/Apple Watch SE全モデルで使用が可能。同機能は日本において厚生労働大臣から承認を得た管理医療機器(家庭用心拍数モニタプログラム)となる。使用には以下の条件が必要。また、前述の通り、22歳未満の人の使用は想定されていないのでご留意いただきたい。

  • 医師により心房細動の診断を受けていること
  • 最新バージョンのwatchOSおよびiOSにアップデートされていること
  • Apple Watchを1週間のうち5日間、1日12時間以上着用すること
  • Apple Watch で心拍数と手首検出が有効になっていること