クラウドの利用で自動化を推進
このように西松建設では、MODEクラウドにデータをアップロードしながら、工事現場の無人化、自動化を進めている。
水中ポンプの稼働を監視するシステムにおける取り組み
最初に取り組んだのは、トンネル内の水中ポンプの稼働を監視するシステムだ。
水中ポンプはトンネル工事の排水に利用しており、水中ポンプが止まるとトンネル工事現場がと水没してしまう可能性がある。そのため、無給電電力センサーを使って、水中ポンプの稼働を監視するシステムを構築した。
このシステムでは、水中ポンプが稼働している間(電気が流れている間)は無給電電力センサーが稼働し、データをMODEクラウドにデータを送信する。水中ポンプが止まってしまうとデータがアップされなくなるため、それをクラウド上で判断して関係者にメールを送る仕組みになっている。
バッチャープラントの材料管理システムの構築
最近は、トンネル内で使用するコンクリートを生産するバッチャープラントの材料管理システム「BP-Tracker」の構築も行っている。
コンクリートの材料としては砂、砂利、セメント、水などを使用するが、この材料を切らさないように現場ではスタッフが在庫を確認したり、トンネル工事の進み具合を見て、材料を追加発注したりする。逆に、工事でトラブルがあると、追加発注した材料が不要になりキャンセルも必要で、材料の監視は負荷が高い業務だったという。
「BP-Tracker」は各材料の在庫を計測し、それを数値化してクラウドにアップする。これにより、クラウドでいつでも残量を確認することが可能になる。ただ、毎回クラウドに在庫を見に行くのは大変なので、API連携して、普段利用しているL is B (エルイズビー)のビジネスチャット「direct」の画面上に、簡単なコマンド操作で残量が表示される仕組みを構築している。
最近はボットを活用し、設定した時間に在庫をつぶやくようにしているという。
「最終的には、骨材屋さんに直接在庫を確認してもらって、自動で発注してくれるような形にすれば、職員の負担は大幅に減るのではないかと考えています」(山本氏)
また、バッチャープラントでは、各材料をストックされている骨材ピンからホッパーに移す必要があるが、骨材ホッパーの残量を一定以上に保つように、クラムシェル(土砂をつかんでクレーンで移動する機器)を制御し、自動運転する仕組みも導入している。これにより、作業員の拘束時間が低減しているという。
このように、西松建設では、作業現場のデータをセンサーで取得してクラウドにアップすることで、自動化・自律化を推進しようとしている。山本氏は、今後の展望について、次のように語った。
「これまで私が開発している技術のデータは、基本的にすべてクラウドに上げていました。現場にしかないデータはクラウドに上げないと共有できませんが、当社はデータを指定して、自動的にBoxにアップロードする仕組みを構築しています。これまで現場のいろいろなデータを収集しているので、トンネル自体を3次元空間上に再現するデジタルツインも合わせて進めていきたいと考えています。そのためには、かなりの数の情報を収集する必要があり、今後はセンサーをNフィールドに入れていきたいと思っています」
なお、同社が開発した自動化ソリューションは、他社への提供も行っていくという。