皆さん! 健康ですかあああああ!!
どうも、皆さんご無沙汰しています。2年前に脳卒中を発症して入院した際の顛末を、超個人的な事情にも関わらず記事で紹介させていただいた“ライターながはま”です。
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おかげさまで、いまでもなんとかライターとして仕事ができています……といっても、完全に体が復活したわけではなく、右半身にはまだマヒがまだ残っており、右足は不自由ですし、右手も思うように動きません。
手書きは難しいのですが(え? 倒れる前から御前の手書き文字は判読不能だったって……、そ、そ、それは否定しないー!)、それでもキーボードがタイプできるおかげで何とか原稿は書けています。ありがたやありがたや。
リハビリ中でも気兼ねなく長文入力した~い!!
とはいっても、長い文章を書き続けるのはなかなか骨が折れます。
そんな四苦八苦している私に、私と同様に脳卒中を経験して利き手が不自由な状態でも活躍されているライターの先輩から音声入力の利用を勧められ、いまいろいろと試しているところです。
え、なんでいまごろ? という声が聞こえてきそうなぐらい音声入力は以前からある技術ですが、んー、以前は精度があまり高くなく、入力後の修正が大変だった記憶があって。しかし、最近の音声認識の精度は格段に向上しているとのこと。そういえば知り合いの多忙な編集者やライターさんも、口述筆記で長文の記事を書いているという話をSNSの投稿で目にする機会も増えています。
ほえー、そうなんだと思いなおして、私も実際に使ってみると、お? これは思っていた以上に声の認識精度は高く、漢字も正確に変換してくれます。
おお、これならば音声入力で、下書きレベルのテキストを、かなりの長文でも作成できそうです。最近では生成AIを通すことで、記事のテーマや事前情報をプロンプトで整えておけば、音声入力でありがちな“つなぎ言葉”や“無駄な言い回し”を除去して、望む書き味に近い文章に整えることも“出来つつ”あります。
よかったー。めでたしめでたし。
そんなときに本当に偶然見つけたのが、“減音マスク”ともいえる「Privacy Talk」でした。
キヤノン的推しポイントは、オフィスで他の人がいても、迷惑をかけることなくリモート会議ができる、いうことでしたが、私はそれに加えて、音声入力も恥ずかしくなくできるのではないかと思いついたわけです。さっそく機材をメーカーからお借りして試してみました。
Privacy Talkは、20デシベル程度の減音効果があるとされています。この減音効果、「いやマスクしてしゃべっているから当然でしょ」と思うかもしれませんが、製品説明によると「音響メタマテリアル技術」を導入しているからこそとのこと。
これは、音を「迷路」状のモールドに通すことで音を打ち消し合わせ、減音させる仕組みといいます。また、周囲の雑音もマイクに入りづらいので、リモート会議では自分の声が明瞭に伝えやすいことがメリットとして紹介されています。
接続はBluetoothがおススメ。製品は本体とマスクの2構成
PCとはBluetoothで接続します。Bluetoothが使えない状況ではUSB接続も可能(Privacy Talk自身はUSB充電)ですが、コネクタがマスクの内側にあるので、使用中に顔を動かすとケーブルが引っ張られてちょっと抵抗を感じます。
見た目的にはちょっと大きめのマスクといった感じで、あまり違和感ありません。色もグレーで落ち着いています。なので意外と目立たない。ただ、でっぱり(というか正面方向の盛り上がり)は結構大きい(高い)。この風貌、なんというか、みたことあるようなないような……、あ、そう! ちょっと犬の鼻のような感じです。
そんなPrivacy Talkは「ヘッドセットユニット」と「マスク」で構成されます。マスクの内側にヘッドセットユニットを「貼り付けて」装着。
このとき、マスクとヘッドセットユニットの位置合わせは両側に用意されたマジックテープが頼り……ですが、なにぶん身体の感覚は微細ですから、わずかなずれでも認識してしまいます。
この微妙なずれが使い勝手というか装着感に大きく影響するのです。このような違和感があったときは自分の“フォース”を信じて手動で位置を合わせるしかありません。
録音データを聞いてみると「明らかに」静かだった
マスクはヘッドセットユニットの「スタンド」として機能しているような感じです。ヘッドセットユニットのマイク部分の周囲にラバー製のマウスピースがあるおかげで、口とマイクはぴったりと密着します。防音効果は高め。
実際に騒音計を身体の正面1メートルに設置して測ってみると、Privacy Talkなしで音声入力したときは60デシベル程度だったのがPrivacy Talkを装着すると40台後半まで測定値が下がりました。同時に録音したデータを聞いてみても「明らかに」静かになっています。
マウスピースで口が少し開けにくいかも
こんな感じで、なんとなく気恥ずかしい「口述筆記の一人語り」を周囲に聞き取りにくくしてくれるPrivacy Talkですが、ラバー製のマウスピースが口をしっかり覆ってくれるおかげで、いろいろと制約が発生します。
その1つが発生時における口を開ける大きさです。口を開く大きさに影響するのはマウスピースの内径ですが、そのサイズは実測で縦方向が39.2mm、横方向で66.6mm。
「うーん、イメージがイマイチわかないわ」ということでしたら、片方の手の親指と人差し指で“輪っか”を作り、輪っかを作った親指と人差し指の間に反対の手の指を2本挟んで改めて輪っかを作ると、ちょうどマウスピースと同じサイズの輪っかができます。その輪っかを口にくっつけてもごもご話すと、Privacy Talkを装着して発生する感覚に近くなるのでお試しのほど。
その状態で何かテキストを用意して朗読するとわかりますが、なにも装着していない状態と比べて口を大きく開くことができないので、明瞭に発音することが“やや”難しいと感じるでしょう。
それから、減音に貢献している“密着具合”のおかげで、時期的に鼻が詰まりやすかった評価作業中、なかなか息苦しかったのは、たぶんついに目覚めた花粉アレルギーのせいでしょう(マウスピースそのものは鼻を覆うだけのサイズはありませんが、鼻が詰まってしまったら口呼吸に頼るしかありません)。
口元にファンを装備。ファン音を消すための工夫も
私のような鼻づまりユーザーを窒息させないため、というわけではなく、ヘッドセットユニット内側を換気して湿気がこもらないよう、換気用のファンが内蔵されています。このファンによって内部に空気が送り込まれることで、発話時にわずかに発生する、息を吸う動作が楽にできるようになります。
ここを読んで、「ん? ユニットにファンを内蔵しているの? そんなことをしたらマイクにファンのノイズが載っちゃうじゃん」と思った人も少なくないのでは。
Privacy Talkでは、2基のマイクを組み込んでいますが、そのうちの1基をファンが発するノイズを消すために使用しています。ファンを回すと小口径だけにそれなりに高い音を発しますが、ノイズリダクションのおかげでマイクに載るファンの音は確かに抑えられます。
しかし、完全にというわけにはいかず、マイクに載った音を録音して再生してみるとファンの音はかすかながら認識されますし、リダクションのかかり具合によっては時折“ムワッ”と聞こえてきます。
ただ、ファンは換気の他にも、密閉されたマイクユニット内部へ給気する役割もあって、評価作業中にもファンの音を消すべく、ファンを止めた状態で使ってみましたが、確かにマイクに載るファンの音はなくなって音声がクリアになったものの、しばらく使っていると息苦しさを感じたのは否めないところです。
音声入力もじゅうぶん実用的。静かな場所では注意
なお、ファンが回っているときと回っていないときで音声入力精度に違いはあるかと、同じテキストを朗読してみましたが、ほとんど変わりませんでした。「え、本当に変わらないの? っていうか、口述筆記って本当に使い物になるの?」と思っているだろう、そこのあなた!(そして数日前の私!)
実際にこの原稿をPrivacy Talkを使って口述筆記したワンテイクテキストが次の画像です。
Privacy TalkをThinkPad T14s(AMD)にBluetoothで接続し、ファンを回した状態で、Wordのディクテーション機能から口述筆記をしています。
海外映画のシーンでよく見かけるような、レコーダーにフリートークのように話し続けてそれを切り取るという方法ではなく、文章を頭の中で一度書いてみてそれを発話するという、口述筆記に慣れた人からすると“まどろっこしい”方法でやっていますが、その分、漢字変換を含めで誤認識で手直ししなければならない場所はだいぶ減ってきているなあ、と。
これなら、Praivacy Talkを着用した口述筆記も意外と使い物になるんじゃないのー、と、いえるのではないでしょうか。
というわけで、ちょっとした息苦しさと犬っぽくなる風貌が許容できるなら、Privacy Talkは、自分の声を聞かれたくない恥ずかしがり屋さんでも、音声入力を利用できるようにしてくれるアイテムです。
ざめいているカフェならば隣に人にも迷惑はかからないでしょう。でも、静かな図書館やカフェだとやっぱり漏れてしまうかな。そのあたりはご注意を。
あ、それからマスクといったら「内にこもる匂い」は気になる人も多いでしょう(わしもこれが苦手で苦手で)。そういう人は、使用時はできるだけファンを作動させて、使い終わったらマメに内部を拭いておきましょうね。