ワイモバイルから2月末に発売された「Libero Flip」は、通常価格でも63,000円、他社からの乗り換え(MNP)なら39,800円という折りたたみスマートフォンとしては驚異的な低価格が話題を呼びました。有名ブランドの製品でもなければワイモバイル専売という販路も限られた製品でありながら、ここまで注目を集めた機種は近年ではなかなか見当たりません。
今回は、そんな注目のLibero Flipをしばらくお借りして使ってみました。結論から言えば決して安かろう悪かろうではない、なぜここまで安いのか不思議なほどしっかり使える折りたたみスマートフォンでした。
フリップ系としてはちょっと大きめのサイズが長所
縦折りタイプ、いわゆるフリップ系の折りたたみスマートフォンの画面サイズは、たとえば「Galaxy Z Flip5」で6.7インチなど、対角線の長さで表されるインチ数だけで言えば一見大きそうに見えるものが多いです。しかし、形状の都合で一般的なスマートフォンよりも細長いアスペクト比(縦横比)を採用しているので、手に取ってみると意外と画面が小さい、特に横幅が狭く感じるものが多いです。
Libero Flipは画面解像度2,790×1,188、約21:9の6.9インチディスプレイを採用しており、本体サイズから見ても約170×76×7.3mm/約214gとフリップ系としては大柄です。
「折りたたんでコンパクトに持ち運べる」「胸ポケットにも入る」といったイメージからすると若干大きすぎるようにも感じますが、昨今の一般的なAndroidスマートフォンと同等の画面幅が確保されているので、動画視聴やSNSの閲覧などコンテンツを問わず、表示スタイルに合わず狭苦しく感じる場面はありません。目新しい折りたたみギミックに飽きても不満が出にくい、長く付き合える折りたたみスマートフォンといえます。
メタルフレームを採用したボディの質感も十分高く、ヒンジも折りたたんだ際にすき間がほとんどできない最新世代の折りたたみスマートフォンに近いもので、全体として期待以上に安さを感じさせない作りに仕上がっています。
外観での注目ポイントは、閉じた状態での時刻や通知などの確認に使うサブディスプレイ。円形ディスプレイを採用しているのが珍しいですね。丸型で1.43インチ、幅466ドットというとちょうどスマートウォッチに使われるようなパネルのスペックと一致しており、おそらくそういった部品をうまく使ってコストダウンした結果なのだろうと推察できますが、同じような見た目になりがちな縦折りスマートフォンにおいて個性的なデザインとしても成立しているのがお見事です。
このお値段ならスペックは控えめかと思いきや……
「折りたたみで6万円、MNPなら4万円」という驚きの安さを見れば、きっと性能はそれなりなのだろうと思ってしまうのも無理はありません。
しかし、意外にもミドルハイSoCの「Qualcomm Snapdragon 7 Gen 1」を搭載しており、メモリは6GB、ストレージは128GB。バッテリー容量も縦折りの機種ではトップクラスに多い4,310mAhと、不満なく使えるスペックを持っています。
SoCだけで言えば10万円クラスの「motorola razr 40」と同格で、CPU/GPU性能は十分。初期状態では画面のリフレッシュレートがなぜか60Hzですが、実は最大120Hzまで対応しており、設定を変えればより滑らかに動作します。
おサイフケータイにも対応していますが、防水/防塵等級はIPX2/IP4Xと低めなので過信は禁物。性能面での数少ない弱点はストレージで、microSD非対応かつ内蔵ストレージも128GBと多くはないので、大容量のゲームを複数プレイする人や動画を撮る人には厳しいと思います。
カメラは約5,000万画素+200万画素のデュアルカメラですが、200万画素のほうは深度測定用なので実質1つに近いです。写りは悪くなく、デジタルズームも2倍程度までは実用範囲でしょう。
総評としてはバランス良くまとめられた機種で、「とにかく安く折りたたみスマートフォンを触ってみたい」という方なら飛びついても後悔はないでしょう。
同じZTE製の「Libero 5G IV」などと同様に、UIや機能についてはメーカー独自のカスタマイズが少なく、これは美点でもある一方、「折りたためることの意味」を求めてしまうと魅力に欠けるようにも感じました。
最後に、購入特典について少し触れておきましょう。Libero Flipを購入すると、同封されている応募用紙からcaseplay製の「リング付き専用ケース」がもれなく無料でもらえます。
ただケースがもらえるというだけではなく、2,000種類以上のデザインから自分で選べるというのがポイント。なかにはブランドやキャラクターとコラボした絵柄もあります。
折りたたみスマートフォン、特に縦折りのものに関してはギーク向けというよりはファッションの文脈で広まってきた背景もあり、Libero Flipのように安価で十分な性能を持った機種を作ることはできても、肝心の「アクセサリーを組み合わせてオシャレに使う、誰かに見せる」という部分ではGalaxy Z Flipシリーズのようなメジャー機種とは埋められない差があるわけです。そこも抜かりなくフォローしてきたあたりは、戦略的によく考えられた商品だと感じます。